花の構造色について解明し、フォトニクス農業へ
花の構造色が昆虫を誘う?
私がこのテーマにて研究を始めようと思ったきっかけは、大学院生の時にある論文(1)を読んだことです。植物の花弁に存在する構造色が、昆虫を誘引するための進化ではないか、という可能性を示した論文です。
構造色とは、色素の色とは異なり、物質表面の微細な構造に由来する色のことで、生物ではタマムシやモルフォチョウの翅、クジャクの羽などが例になります。
微細な凹凸構造が発色のひみつ
私はこの論文を読んで初めて花にも構造色があること、そして花弁の細胞表面には1マイクロメートル以下の微細な凹凸構造が存在し、それが等間隔に配置されることで構造色を発色することを知りました。
この時私は、植物がこのような微細な構造をどのように形成するのか、どのように等間隔に配置するのかということにとても興味を持ちました。ですが、調べてもそのメカニズムは何もわかっていなかったのです。では、自分で調べてしまえ!と思ったのが、研究の始まりでした。
昆虫による受粉が可能に
またこの研究は、花の構造色が昆虫を誘引することを利用して、農業への応用も可能だと考えました。
人の手による授粉作業や、着果剤を必要とする農作物に構造色を付与することができれば、昆虫による受粉が可能になり、労力や農薬を削減することにつながります。
現在、微細構造の形成に関わる遺伝子がわかりつつあります。構造色を応用したフォトニクス農業が実現すれば、人も環境もみなハッピーになります。そんな世界が現実化できたらという夢を目指し、研究を推進しています。
引用文献
(1) Moyroud, E., Wenzel, T., Middleton, R. et al. Disorder in convergent floral nanostructures enhances signalling to bees. Nature 550, 469–474 (2017).
私は小さい頃から植物、特に花が好きで、小学生時代にはメディアで「バイオテクノロジー」といった言葉をよく聞くようになっており、植物を改変してこれまでにない色の花を作れないか、と漠然と考えていたりもしました。
そういった経緯があり、大学では農学部に進学し、遺伝子組換えによる花色改変を行っている研究室に入室しました。その後はこういった応用研究よりも基礎研究の面白さに目覚め、他の大学院に移って学位を取得し現在に至ります。
強く意図したことではなかったのですが、小さい頃に思い描いていた「これまでにない色の花を作る」という夢を、今このような形で目指しています。
私が所属する国立遺伝学研究所(遺伝研)は、総合研究大学院大学(総研大)の遺伝学コースでもあり、総研大で遺伝学コースを選んだ学生さんはみな遺伝研で学ぶことになります。
まず、遺伝研は大学共同利用研究機関の1つで、全国から研究者が集って大規模な研究設備等を共同で利用しています。そのため、大学にもないような様々な機器が揃っています。
また、総研大は少人数制であり、そして研究所には多くの研究者がおりますので、大学よりも学生さん1人あたりの指導者数が多くなり、様々な人々からたくさんのことを学ぶことができます。
なんだろう、なぜだろう、と思ったことをどんな方法でも良いので探求してみてください。小中学生の自由研究のような内容でも、むしろとても良いと思います。
私は現在もそいういった気持ちを原動力にして研究をしています。是非、興味のあることについて掘り下げること、研究することの楽しさを知ってもらいたいです。
Q1.学生時代に/最近、熱中したゲームは? モンスターハンター |
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Q2.大学時代の部活・サークルは? 弓道 |
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Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 神社の巫女 |