栽培イネより大きな穂も。野生イネの穂の多様性に迫る
野生イネから栽培化された現在のイネ
イネは世界的な主要作物であり、私たちの暮らしに欠かすことのできない作物です。皆さんが日々食卓で口にしているコシヒカリなどは、いずれも育種によって改良された栽培イネ品種です。
栽培イネは野生イネから栽培化されました。栽培化と近代育種によって、種子が大きい・種子が地面に落ちずに収穫しやすいなど農業的に有用な形質が付与された一方で、栽培化というボトルネックにより栽培イネの遺伝的多様性は大幅に減少してきました。そのため、昨今では、野生イネが示す遺伝的多様性を育種に利用することが期待されています。
野生種はたくさん収穫できない?
私たちは、イネの収量性を左右する重要な形質の一つである穂の形を研究しています。栽培化と育種の過程で収量性の向上が起こったと考えられ、野生祖先種の収量性は低いという先入観があったため、これまで野生イネの収量関連形質はほとんど研究されていませんでした。
そこで、 国立遺伝学研究所・総合研究大学院大学との共同研究で、多数の野生イネをフィールドに展開しその穂の形を観察しました。すると驚くべきことに実際には、野生イネの穂はいつも小さいとは限らず、野生種にもかかわらず栽培種に引けを取らないばかりか、より大きな穂をつけるものも存在することが明らかになりました。
未利用有用遺伝子を栽培イネの改良に
現在は、この野生イネが独自に示す穂の形の多様性に着目し、多様性を生み出す遺伝的メカニズムの解明を進めています。将来的には、野生イネが持つ未利用有用遺伝子を単離し、環境変動に適応しかつ多収性を示す栽培イネ品種の作出に貢献することを目指しています。
◆主な業種
(1) 食品・食料品・飲料品
(2) 農業、林業、水産業
(3) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等
名古屋大学 農学部 資源生物科学科のホームページから、学科の特色について詳しく知ることができます。
こちらから→https://shigen.agr.nagoya-u.ac.jp/outline/