シャーレ上でヒト臓器モデルを作る
人工的にヒト臓器を作るのは難しい
iPS細胞(人工多能性幹細胞)は、ほぼ無限に増えることができ、さらに体を作るさまざまな種類の細胞に変化する性質を持っています。この画期的な細胞が誕生したことで、将来はヒトの臓器を人工的に作り出せるのではないかと期待されています。もしそれが実現すれば、けがや病気で失われた臓器を再生する「再生医療」や、新しい薬の効果や安全性を調べる「創薬(そうやく)」の方法が、これまでとは大きく変わる可能性があります。
しかし、iPS細胞は確かに多くの体細胞に変化する力を持っているものの、実際にそこからヒトの臓器を作ることは、とても難しい課題です。臓器は多くの種類の細胞が正しい位置と形で集まり、複雑に連携して働くことで成り立っています。そのため、単に細胞を作るだけではなく、その細胞たちを正しく組み立て、機能させる技術が必要なのです。
オルガノイドと生体模倣システム
そこで私たちは、iPS細胞からヒトの臓器を作るための方法として、「オルガノイド」と「生体模倣システム」という二つの技術を用いました。オルガノイドとは、細胞を立体的(三次元的)に育てて、小さな臓器のような構造を作る技術のことです。これはミニチュアの臓器を試験管の中で再現するようなもので、臓器の一部の働きを再現できます。一方、生体模倣システムは「マイクロ流体デバイス」という小さな機械の上に細胞を並べ、立体的な形に組み上げる技術です。このデバイスでは、血液の流れのような液体の動きや、呼吸や心臓の鼓動に似た力の刺激を細胞に与えることができます。その結果、実際の臓器に近い動きをするモデルを作ることができます。
私たちはこれまでに、このオルガノイドと生体模倣システムを組み合わせ、ヒトの肺や腸、肝臓のモデルを開発してきました。そして、これらを使って、ウイルス感染症や炎症(体の防御反応)、線維化(組織が硬くなってしまう病気の進行)の研究を行い、新しい薬を見つけるための手がかりを得られることを示してきました。
私たちの研究がさらに発展することで、ウイルス感染症や炎症、線維化に対する新たな薬を効率的に開発できる時代が到来すると信じて、いまも日々研究に邁進しています。
◆大学時代
学生のころ、授業で扱う難しい専門書の要約を作る作業に取り組んでいました。専門書の内容は、ときに複雑で理解しづらいものです。そこで私は、専門書を読み込み、理解し、自分なりにかみくだいて整理し、多くの人がわかるように短くまとめる作業をしていました。このとき身につけた「内容を深く理解してから、わかりやすく伝える力」は、研究者になった今でもとても大切なスキルです。
◆出身高校は?
兵庫県立兵庫高校
「生体医工学・生体材料学」が 学べる大学・研究者はこちら (※みらいぶっくへ)
「11.バイオ工学」の「39.バイオマテリアル、ドラッグデリバリー」
Matthias Lutolf
スイス連邦工科大学ローザンヌ校
様々な生体模倣システムを開発し、生命科学研究へ応用しています。独創的なアイデアとそれを実現する力があります。
私は、東京科学大学・総合研究院の「難治疾患(なんちしっかん)研究所」に所属しています。「難治疾患」とは、原因がよくわからなかったり、効果的な治療法がまだ見つかっていなかったりする病気のことです。私たちの研究所では、そうした病気の仕組みを明らかにする「病態解明(びょうたいかいめい)」や、新しい薬を見つけるための研究(これを「創薬研究」といいます)を行っています。近年、科学技術は大きく進歩しています。それでも、原因がわからない病気や、治す方法がない病気はまだ数多く存在します。難治疾患研究所は、そのような病気を少しずつでも克服できるよう、日々地道な研究を積み重ねています。私たちの研究成果が、未来で多くの人の命や生活を救うことにつながると信じて、歩みを進めております。
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Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 東アジアの国。国が違っても食文化が似ているから。 |
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Q2.一番聴いている音楽アーティストは? ONE OK ROCK |
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Q3.感動した映画は?印象に残っている映画は? ゴースト/ニューヨークの幻 |
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Q4.熱中したゲームは? ファイナルファンタジーIV |
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Q5.会ってみたい有名人は? Ross Granville Harrison博士 |






