強くてリサイクル性の高いゴム材料の合成
社会的課題の廃棄ゴムのリサイクル
ゴム材料は、タイヤ、運動靴などの靴底、工場などのベルトコンベアー、ホースなど、我々の身の回りの様々な場所で使われており、その生産量は国内だけでも年間100万トン以上と言われています。したがって、近年プラスチックのゴミ問題が盛んに取り上げられていますが、廃棄ゴムのリサイクルも極めて重要な課題です。
リサイクルしやすい分子構造をデザイン
プラスチックとゴムの主成分は、両方とも炭素と水素からなる高分子化合物ですが、ゴムは機械的強度を得るために高分子同士を架橋したり、カーボンブラックなどの充填剤を混ぜたりする工程を経て作られます。架橋を元に戻したり、高分子と充填剤を分けたり、場合によっては高分子を原料まで戻したりする必要があるため、ゴムのリサイクルは難しいです。
私は元々有機化学を専攻していたので、分子の構造やその反応を設計することが得意です。ゴムとなる高分子の架橋部分の構造をデザインすることによって、簡単に元に戻せて、なおかつ少量で十分な機械的強度が得られるような架橋方法を開発しています。
原料まで分解される反応を開発
方法自体はほとんど完成しており、今は何故この方法で高強度になるのか、もっと効率化できないのか、などを調べているところです。さらに、架橋部分と特定の触媒の反応から始まって、高分子が原料まで分解される反応も開発しています。
本当に使われるリサイクル性材料を開発するためには、1つのゴム材料に対して色々なリサイクル方法を提案できることと、リサイクル性以外の部分は今までの材料と大きく変わらないことが大事です。今開発している材料はそのどちらも満たす可能性があるので、期待しています。
◆主な業種
(1) 化学/化粧品・繊維・衣料/化学工業製品・石油製品
◆主な職種
(1) 基礎・応用研究、先行開発
(2) 生産技術(プラント系以外)
◆学んだことはどう生きる?
一般的には、大学での研究内容をそのまま就職先でも続けることはほぼありません。しかし当研究室の卒業生に限っては、かなり近い内容に従事している卒業生が一定数います。工業品に近い素材を研究しているのと、卒業生に対する即戦力としての期待があるのだと思います。
同窓会やOB訪問などでこのような卒業生に会うと「もっと学生時代に勉強しておけば良かった」などと言っていますが、大事な仕事を任されていることへの自慢と受け取っています。