「光子」を使い、室温で動く量子コンピューターの実現に挑む!
絶対零度への冷却が実用化の壁
みなさんの中には量子コンピューターという言葉を聞いたことがある人がいるかもしれません。これは、これまでのコンピューターとは違った原理を使って、今のコンピューターでは解けない問題を非常に速く解くことができる新しいコンピューターです。
現在、世界各地の大学や研究機関、企業において、この実現に向けた研究が盛んに行われています。ただ、現在開発されている量子コンピューターの多くは、計算に必要となる部分をほとんど絶対零度まで冷却しないと動きません。
光子の間での「量子もつれ」が難題
わたしは、普段生活している「室温」とよばれる温度で動く量子コンピューターを作りたいと思っています。そのために、「光子」という光のもっとも小さい単位に注目しました。光子は室温でも量子的な特性を保持することできます。また、一個の光子を制御したり、測定したりする技術はすでに確立されています。
ただ、光子を使った量子コンピューターを実現するには、複数の光子の間で「量子もつれ」とよばれる量子力学的な関係を作り出す必要があります。しかし、この実現はとても難しい課題となっていました。
そこで、私はこれまでとは異なるアプローチを使ってこの難しい課題に挑戦しています。そして、将来、現在のコンピューターのように室温で動く量子コンピューターを実現していきたいと思っています。
大学生の量子光学の講義で、超伝導とよばれる特殊な状況をうまく利用すると、量子もつれ状態の光子対を生成できるという理論提案の話を聞いたときに物理学が凄いと思いました。その後、物理の凄さにとりつかれ大学院に進学、現在でも研究を続けています。
大学・特に大学院に進むとわかりますが、教科書に書かれていることは一部だけで、世の中にはわからないことがまだまだたくさんあります。もし時間があれば、高校生の皆さんも教科書以外の読み物を読んで、いろんなものに興味を持っていくことが大切だと思います。
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「IBM Q」を使うと、本物の超伝導量子コンピューターを利用することが可能です。量子ビット数が増えると有料になりますが、少ないビット数なら無料で試せます。
高校の授業では量子コンピューターについて学ばないかもしれませんが、入門書に書いてある基本的な量子回路なら、それなりの計算ができます。さらに、自分で作った量子回路で計算を試すこともできますので、量子コンピューターをより深く理解することに役立つと思います。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 物理学 |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? ドイツ。食事がおいしく気候が過ごしやすい。また、地域にもよりますが比較的治安も良いので、日本人でも過ごしやすいと思います。 |
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Q3.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? スキー。自然の中でスキーをすると、人間がいかに小さな存在かということがよくわかります。 |