植物分子・生理科学

植物細胞

植物科学の常識をぶっ壊す「植物の細胞融合」の謎


大津美奈先生

奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 バイオサイエンス領域

出会いの一冊

線虫 1ミリの生命ドラマ

長谷川浩一(dZERO)

わたしの研究では、シストセンチュウという線虫の一種を扱っています。ただ、「線虫」と一口にいっても、数メートルを超える大きいものから肉眼では観察できない小さいもの、そして、植物や動物に寄生するもの、寄生しないでのんびり暮らすものなど、本当に多種多様です。こちらの本は、線虫にまつわるディープ世界に浸りたい人におすすめです。

こんな研究で世界を変えよう!

植物科学の常識をぶっ壊す「植物の細胞融合」の謎

細胞と細胞がくっつく、細胞融合現象

「植物細胞は、細胞膜の外側に細胞壁という植物細胞に特異的な構造を持っている」―細胞について勉強している学生さんなら聞いたことがあると思います。

細胞融合は、隣り合う細胞の細胞膜同士がくっつくことで起こる現象です。そのため、通常、植物細胞は融合しない(するはずがない)と思われています。

細胞融合を起こさせる微生物がいる

しかし、植物に寄生する線虫の一種であるシストセンチュウは、植物に細胞融合を起こすことができます。シストセンチュウは、植物よりも圧倒的に小さく肉眼では観察できないような生物です。

こんな非力そうな生物が、植物科学の常識をぶっ壊すような現象を起こせる…なんで? どうやって? そんな目に見えない微生物が起こす知られざるGiant killing(番狂せ)に魅了されて研究を始めました。

隠された細胞融合現象の発見を目指して

動物と植物で共通している唯一の細胞融合は、卵子と精子が融合する「受精」です。動物では、受精の他に骨格筋や胎盤の形成において細胞融合が起こることが知られています。

一方、植物において自然に起こる細胞融合は、受精を含む生殖過程で起こるものしか知られていません。しかし、動物では様々な組織の発達に必須な細胞融合現象は、本当に植物の生育には必要ないのでしょうか? 

シストセンチュウが起こす細胞融合をきっかけに、これまで見逃されていた植物の細胞融合現象を発見することで、「細胞融合は起こらない」を覆せたら面白いなと思って研究を進めています。

ラボの学生さんたちが培地上に植えてある植物を使った実験をしている様子です。
ラボの学生さんたちが培地上に植えてある植物を使った実験をしている様子です。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

正直にいうと”なんとなく”です(笑)。高校の時に生物の授業が好きで、農学部への進学を決めました。

その後、研究室選びの際に「植物と微生物とのやりとりを研究するって複雑で面白いな!」と思い、研究にはまっていきました。ですので、特に強いこだわりがなくても、”なんとなく(好き)”という直感を大事にするのもいいのかなと思います。

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「植物寄生性線虫の感染をモデルとして植物の細胞融合の謎に迫る」

詳しくはこちら

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もっと先生の研究・研究室を見てみよう
節目にはラボ行事もあります。これは2023年の春に新入生が来た時のBBQの様子です。
節目にはラボ行事もあります。これは2023年の春に新入生が来た時のBBQの様子です。
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

◆主な職種

◆学んだことはどう生きる?

先生の学部・学科は?

奈良先端大は4校しかない国立の大学院大学です。研究分野だけでなく、国籍さえも様々な学生が集まる非常に多様性に富んだ大学院だと思います。

そして、研究に非常に力を注いでいるところが最大の強みで、研究設備も整っていて(奈良の片田舎であるにも関わらず)独創性の高い最先端の研究をしています。思いっきり研究をしたい人にはとてもおすすめです。

私が現在所属している奈良先端大、植物共生学の2023度のラボ写真です。留学生を含めて総勢20人を超える大所帯になっています。
私が現在所属している奈良先端大、植物共生学の2023度のラボ写真です。留学生を含めて総勢20人を超える大所帯になっています。
先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

植物病理学は明日の君を願う

竹良実(ビッグコミックス)

シストセンチュウが起こす細胞融合だけでなく、植物に寄生/共生する微生物は、植物に驚くような変化を起こすものがたくさんいます。

微生物が植物に起こす様々な変化(=病徴)や、植物の病原微生物に抵抗する姿など、植物と微生物の攻防を研究する「植物病理学」について雰囲気を掴むのにと ても良いと思います。漫画なので気軽に読めるところもとても良いです。


すべてがFになる

森博嗣(講談社文庫)

学部は違いますが国立N大学の大先輩で、卒業後もN大で教鞭をとりながら作家をされていた森先生のミステリシリーズ第一作です。内容はもちろん、当時の研究室生活を知ることができるのも面白いです。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

考古学

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

研究員をしていたイギリス。4年間本当に楽しく暮らせたので。

Q3.学生時代に/最近、熱中したゲームは?

モンスターハンターシリーズ。プレイステーション5の新作を待ってます。

Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

ラテの美味しいカフェを探すこと。猫と遊ぶこと。


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