デバイス関連化学

光とエネルギー

世界最小の電圧で光る有機ELを開発! ~光とエネルギーの有機材料研究


伊澤誠一郎先生

東京工業大学 物質理工学院 材料系

出会いの一冊

生物と無生物のあいだ

福岡伸一(講談社現代新書)

持続可能な社会を目指す上で、自己修復が可能な生物から学ぶことは多いと思います。その上で人工物を使って、どのようにすれば持続可能なシステムを組み上げられるのか考えるきっかけになると思います。

こんな研究で世界を変えよう!

世界最小の電圧で光る有機ELを開発! ~光とエネルギーの有機材料研究

フィルム上で発電する有機太陽電池

光エネルギーは現在、人類が利用しているほとんどのエネルギーの元となっています。石油などの化石燃料も元をたどれば太古の植物が固定した太陽光の光エネルギーです。今後も持続的に人類が発展していくためには、太陽の光を自在に取り扱えるようになる必要があります。

私は有機分子を使って光とエネルギーを自在に変換することを目指して研究を行っています。研究テーマの一つである有機太陽電池は、薄くて曲がるフィルム上で発電できるので、実用化されれば窓など様々な場所で太陽光から発電できるようになります。

低エネルギーの光を高エネルギーに

また光変換の研究では、人間の目には見えない赤外線を黄色の光に変換する技術の開発も行っています。この不思議な光技術は、太陽電池が通常では利用できないエネルギーの低い太陽光を変換してその効率を向上させることや、体内まで光を届けてそこで光変換をする新たな治療法につながるなど、生体応用も期待されています。

新しい発光メカニズムを発見

またテレビやスマートフォン、ゲーム機の画面として実用化されている有機ELの研究も行っています。有機EL研究では、太陽電池研究で得た知見を活かした新しい発光メカニズムを発見したことで、乾電池1本という超低電圧で有機ELを光らせました。これは世界最小の電圧で光る発光素子で、テレビやスマートフォンなどの省エネルギー化につながる重要な技術です。

これらの研究成果は最初から予想していない発見がほとんどで、試行錯誤しながら様々な新しい現象に出会う楽しさを日々感じながら学生さんと共に研究活動に打ち込んできます。

目に見えない近赤外光を当てているにも関わらず、フィルムが黄色に明るく光っている写真。低エネルギーの光を高エネルギーの光に変換する光アップコンバージョンという現象が、従来は難しかった有機膜の上で起こっています。
目に見えない近赤外光を当てているにも関わらず、フィルムが黄色に明るく光っている写真。低エネルギーの光を高エネルギーの光に変換する光アップコンバージョンという現象が、従来は難しかった有機膜の上で起こっています。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

高校では数学、物理、化学が得意で論理的に考えて問題を解くことが好きだったので理系に進みました。研究を始める際には人の役に立つことがしたかったので、エネルギー問題の解決につながる太陽電池の研究室を選びました。

研究を進めるうちに、分子の構造を少し変えるとその機能が大きく変わる有機材料の面白さに取りつかれ、太陽電池だけでなく有機ELや光変換など様々な光機能の開発を行っています。

大学で博士号を取得した後で、アメリカで博士研究員をしていた時の一枚。文化や研究スタイルの違いなど多くのことを学びました。
大学で博士号を取得した後で、アメリカで博士研究員をしていた時の一枚。文化や研究スタイルの違いなど多くのことを学びました。
先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「界面アップコンバージョンが可能とする革新的光変換」

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有機太陽電池や有機ELなどの有機光デバイスを作るグローブボックスという装置です。この中は窒素で満たされていて、水分や酸素を限りなく少なくしています。グローブボックス中でデバイスを作製することで、不純物の影響を抑えて再現性のよい実験結果を得ることができます。
有機太陽電池や有機ELなどの有機光デバイスを作るグローブボックスという装置です。この中は窒素で満たされていて、水分や酸素を限りなく少なくしています。グローブボックス中でデバイスを作製することで、不純物の影響を抑えて再現性のよい実験結果を得ることができます。
学生たちはどんなところに就職?

◆主な業種

(1) 化学/化粧品・繊維・衣料/化学工業製品・石油製品

(2) 半導体・電子部品・デバイス

(3) コンサルタント・学術系研究所

◆主な職種

(1) 基礎・応用研究、先行開発

(2) 設計・開発

(3) 技術系企画・調査、コンサルタント

◆学んだことはどう生きる?

卒業生は化学や電機メーカーなどで、研究開発に携わっている人が多いです。研究で培われる「課題設定-実験計画-実行-考察」の一連のサイクルを回す問題解決力は、すべての職業で重要です。この能力を生かしてコンサルティングファームなどで活躍する人もいます。

研究をすると、わかりやすく自分の研究を伝えるプレゼンテーション能力や、論文を読み書きする英語力、他人と協力してプロジェクトを進めるコミュニケーション能力など仕事で必要なほとんどの能力が鍛えられます。

先生の学部・学科は?

材料開発はものづくりの根幹です。例えば、2000年にノーベル化学賞を受賞された白川英樹先生らの導電性高分子の発見や、2014年にノーベル物理学賞を受賞された赤﨑勇先生、天野浩先生、中村修二先生らの青色発光ダイオードの開発により、驚くべき機能が実現され、人類の生活が豊かになりました。

材料開発の研究は試行錯誤しながら世界で初めての機能を生み出していきます。自分のアイディアが新しい発見につながる喜びは何にも代えがたいものです。

先生の研究に挑戦しよう!

光の色(波長)とエネルギーの関係を調べてみましょう。例えば身の回りにあるライトを光らせるためには乾電池が何本入っているかや、説明書に書かれている素子の電圧を見てみたら、光の色とエネルギーの関係がわかります。ライトの色ごとに光らせるために必要な電圧がどのように違うかを調べると、光とエネルギーのつながりの理解が深まると思います。

中高生におすすめ

SLAM DUNK(スラムダンク)

井上雄彦(ジャンプコミックス)

最後まで諦めない気持ち、好きなことを頑張る大切さを学ぶことができます。

一問一答
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は?

京都の大学で日本史を勉強したいです。

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ?

海が好きなので南の島で暮らしたいです。

Q3.大学時代の部活・サークルは?

中高大とソフトテニスを毎日してました。

Q4.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは?

研究が好きなので、常に研究のことを考えています。


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