量子コンピュータの実用化へ。心臓部を制御する半導体回路を研究
量子ビットには冷却が必要
量子コンピュータは量子力学の原理を応用して超高速計算を実現する次世代のコンピュータです。量子コンピュータの計算を担う心臓部である、量子ビットというチップは、極低温と呼ばれる絶対零度近く(1ケルビン以下)の温度に冷却する必要があるため、特殊な冷凍機を用いて動作します。
しかし、量子ビットを制御するための装置は冷凍機の外部にあるため、熱の流入や信号品質の低下により、量子ビットを正確に制御できないという課題が存在していました。
極低温環境に配置できる制御回路
そこで、私は極低温で動作可能な量子ビット制御用半導体電子回路の研究を行っています。これにより、制御回路を極低温環境、つまり、量子ビット近傍に配置することができるため、量子ビットの制御精度向上が期待できます。さらに、極低温半導体電子回路を活用して、量子ビット周辺環境を検知し、その情報を基に誤差補正を行うことで、さらなる精度改善を目指しています。
低消費電力も乗り越える課題
しかし、極低温における半導体電子回路の特性は我々が生活する温度における特性と全く異なります。また、極低温での回路動作は発熱を招き、冷凍機内の温度が上昇することから、低消費電力動作も極めて重要な課題です。私は極低温冷凍機を用いて電子回路の特性を実測し、極低温状態でも高性能・低消費電力を実現する回路技術を探索しています。
量子コンピュータの普及には、まだまだ難しい課題が存在しますが、本研究がそれらの解決に寄与し、夢の量子コンピュータの早期実現に貢献することを信じて、日々、半導体電子回路の試作と極低温実験に励んでいます。
私が高校生ぐらいのときに、当時ある会社のCMで流れていた「The future is on LSIs」というフレーズがとても印象に残ったことを覚えています。当時はLSI(大規模集積回路)のことは何も知らなかったのですが、何かすごいことがあの小さなチップの中で起きているんだと思い、興味を持ちました。
大学で電子回路を学んでからはナノスケールの微細回路が産み出す可能性や、回路設計の奥深さと美しさに惹かれるようになり、集積回路を自分の専門分野にすることを決めました。
◆主な業種
(1) 半導体・電子部品・デバイス
(2) コンピュータ、情報通信機器
(3) 自動車・機器
◆主な職種
(1) 基礎・応用研究、先行開発
(2) 設計・開発
(3) 技術系企画・調査、コンサルタント
私が所属している神戸大学大学院科学技術イノベーション研究科では、最先端の研究分野に加え、アントレプレナーシップ(起業家精神)分野も学ぶことができます。すでにいくつかのスタートアップ企業が本研究科在学中の学生によって設立されています。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 理論物理学。頭が柔軟な頃にしっかり学んでおきたかったと思います。 |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? アメリカ。チャレンジ精神を尊重する風土があり、刺激を受けることができます。 |
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Q3.大学時代の部活・サークルは? サッカーをしていました。今も時々フットサルで汗を流しています。 |
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Q4.好きな言葉は? 臨機応変 |