ナノスケールの磁石の動きを応用し、省電力脳型計算機の実現へ
方程式で自然現象を理解する
自然は不思議で説明できない現象ばかりだ。このように思うこともあるかもしれない。しかしながら先人たちの知恵によってある程度のことは考えることができる。例えば先人たちが築き上げてきた方程式がある。
リンゴが木から落ちるのはニュートンの運動方程式によって記述できるように、電気回路中の電気信号は回路方程式で理解できるように、電磁波の動きはマクスウェル方程式に従うように。この蓄積によって人類は自然を理解し、またその自然現象を応用することによって人工的に優れた「もの」を作ることができた。
人間の脳はいろいろできて、低消費電力
近年、人工知能が発達し世間をにぎわせている。人類が作ってきたコンピュータにデータを与えてトレーニングさせる計算をすることによって、トレーニングさせたコンピュータの能力は人間の能力を凌駕する。
しかしながら、この計算に膨大な消費電力がかかることが知られている、一方で人間は低消費電力であらゆることができる。そのため、人間の脳を模倣した計算を実行できる「もの」を作ることが近年盛んに研究されている。
スピンの性質を使う
私がJSTさきがけで採択されたテーマに関して研究していることは、ものすごく小さいナノメートルスケールの磁石の動きを応用することによって、人間の脳がやっている計算を模倣できる「もの」を作ることだ。
既存のコンピュータが大きな消費電力を使ってやっている計算を、自然の物理現象にやってもらえば究極的な低消費電力につながると期待できる。このような計算を「物理リザバー計算」という。
磁石の性質は電子がスピン回転していることに由来し、次世代省電力電子デバイスに向けてそのスピンの性質を応用しようと世界中で研究が行われている。磁石の薄膜に電気または光信号を入れるとスピンの波が発生する。池に石を投げたときに水の波が生じるように。私の夢はそのスピンの波を使うことでナノメートルスケールの物理現象を応用した省電力脳型計算機を実現することである。
高校数学+α
高校の時は数学が好きで夢中で問題を解いていました。高校で習う数学は基礎として今後必ず役に立つと思いますし、大学の講義での基本になると思います。
私は高校の時に物理が好きになりました。その理由は物理というものは数学という論理的な言語で記述できるという美しさに惹かれたからです。数学は世界共通でかつ最も論理的な言語といえます。ですので皆さんにはぜひ数学を楽しんでもらいたいです。
Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 物理 |
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Q2.好きな言葉は? 行雲流水 |