1mmで1000℃の温度差で生じる流体の「すべり」の解明
水も空気も粘っこさを持つ
流体は空気や水に代表されるように非常に身近な存在です。
不思議に感じるかもしれませんが、一般に流体は静止した壁の上では止まっていると考えます。流体が粘っこさ(=粘性)を持ち壁にくっついているというイメージです。空気はサラサラしているように感じるかもしれませんが、ちゃんと粘性があります。粘性が無いと、野球のカーブボールも曲がりません。
微小スケールなら、流体は壁の上をすべる
流体は、実際には目に見えないくらい小さな分子の集団です。流体の分子性が重要になるくらい微小スケールに注目すると、流体は壁の上を「すべり」ます。すべれば流体を流す際の抵抗が減るので、効率の高い新しい輸送方法の開発に繋がります。
わたしの研究では特に、熱によって発生する「すべり」を実験により調べ、その数理モデルの構築を目指しています。熱は太陽光や廃熱など有効利用可能な資源が多く、エネルギー問題を考えるうえで重要です。
レーザーで強い温度差を作り、「すべり」を観察
壁の一部が熱くなると壁面に温度の勾配が生まれます。すると、冷たい部分から熱い部分に向かって(あるいは逆方向に)壁面を這うようなすべり流れが生じます。
しかし、水に対して実験的にこの流れを観察するためには、非常に強い温度差(1 mmの間で1000℃)が必要です。わたしの研究では光が物質に吸収され熱が発生する光熱効果に注目しました。
レーザーを対物レンズで集光して狭い領域の水を加熱することで、1 µmの間に1 ℃ (1 mm=1000 µmの差で1000℃と同等)の温度差を作り、それによって生じる流体現象を調べています。
よく言われるように、すぐに役に立つものはすぐに役に立たなくなります。目先の興味は燃料になるので大切ですが、どちらかと言えば、中高生~大学・大学院を通して多くのものに触れ長い目で自分の専門をじっくり作っていく方が良いと思います。
わたしは、高校生のときは宇宙のことを研究したい(カッコイイから)と思っていましたが、気づけば小さい世界の流体力学の研究者になっていました。いまはこっちの方が面白いです。
Gallery of Fluid Motion
アメリカ物理学会・流体力学部門
アメリカ物理学会・流体力学部門が毎年紹介している「芸術的にも科学的にも魅力的な流体関連の動画・静止画」のサイトです。世界中の流体科学研究者による最先端の研究(実験・計算が主)によるものですが、一般の方も楽しめるような作りになっています。
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Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? 虫関係でしょうか。ミツバチがスズメバチをやっつけるために集団で振動して発熱する話が印象的で、虫の集団行動に興味が湧きました。 |
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