◆研究分野である「高性能計算」について説明してください。
単純に言ってしまえば、コンピュータプログラムやソフトウェアをどのように高速化するのかに関する研究です。特に、スーパーコンピュータなどの数百台から数万台以上のコンピュータからなるとても大規模でとても強力なシステムの上で、どのように計算を高速に行うのか、どのようにそのような大規模なシステムを設計するのかについて研究をしています。
身近な具体例では、天気予報や気象予測では、観測したデータを物理法則を表す方程式に入れて計算することで将来を予測します。ただ、その計算はとても重く、一般的なコンピュータでは計算が間に合わないため、この分野で研究されている手法を使いスーパーコンピュータを使って計算を行っています。
◆その研究はどのような社会的な意味や成果になっていくのでしょうか。
‘もの’と‘もの’の関係性に注目した‘グラフ’という理論(棒グラフや線グラフなどでいうグラフとは別のものです)を用いることで、この世界の非常に様々な現象や状態を表すことができます。近年ますます世界のデータ量は増加しており、とても規模の大きいグラフ問題をどのように高速計算するのかが問題となっています。具体的には、SNS上でのユーザー同士の関係性の解析や、都市での災害時の避難経路シミュレーション、さらにはサイバーセキュリティに関することなど様々な分野から需要があり、とても規模の大きいグラフを高速計算できれば、より安心・安全で、効率的な社会を築くことができます。
◆どのように研究テーマを見つけたのかを教えてください。
研究テーマを見つけるという作業は、実は研究活動の中でも最も経験と知識を必要とする作業です。そのため、今どのような研究が行われているのかを知るために学会などに積極的に参加したり、また、その分野で著名な研究者と積極的にコラボレーションしたりすることで研究テーマを見つけています。
◆この分野に関心を持った高校生に具体的なアドバイスをいただけますか。
SuperConという、高校生向けのスーパーコンピュータを使ったプログラミングコンテストがあります。技術については、事前の資料や講習会で学べ、また、コンテスト中にもチューターの大学院生がアドバイスしてくれるようです。ぜひ挑戦してみてください。
詳しくはこちら→SupercomputingContest
◆高校時代、何に熱中していましたか。
高校生の頃からコンピュータに関わっていたので、プログラミングコンテスト(情報オリンピック、パソコン甲子園)やロボット競技(相撲ロボット大会)に取り組んでいました。
また、その一方で、生徒会で校内のイベントの企画・運営などに力を注いでいました。専門分野に関する勉強ももちろん大切ですが、様々な人と関わりながら活動をし、時には大勢の前に立つ経験などから学んだことは、研究活動を行うにあたってとても大切な要素だと思っています。
絵でわかるスーパーコンピュータ
姫野龍太郎(講談社)
スーパーコンピュータって何なのか、どのように使われているのかについて、この分野の権威である姫野先生が解説。スーパーコンピュータとは何かについて知りたい人にオススメです。