ゲノム生物学

DNA複製

多様なDNA複製酵素たちが、協調してミッション遂行


大学保一先生

東北大学 学際科学フロンティア研究所/生命科学研究科 分子化学生物学専攻
(現在は、公益財団法人がん研究会 がん研究所)

先生のフィールドはこの作品から

ガタカ(映画)

アンドリュー・ニコル(監督)

遺伝子操作によりヒトの運命を自由自在に変えられる世界を想定したSF。遺伝子操作で変えられるものと変えられないものがあるということが、1つのテーマです。タイトルは何気にDNA配列になっています。

世界を変える研究はこれ!

多様なDNA複製酵素たちが、協調してミッション遂行

DNA複製の仕組みは柔軟

細胞が分裂するには、親から受け継いだ遺伝情報を載せた非常に長いDNA(ゲノムDNA)が間違いなくコピー(複製)される必要があります。

DNA複製に関する研究は、ワトソンとクリックによってDNAの分子構造が解かれて以来盛んに行われ、DNA複製装置を構成するタンパク質やその機能が明らかになってきました。

一方で、長大なゲノムDNAは小さな核内で複雑に折り畳まれ、様々な構造をとっているので、それらを伸ばしてDNA複製を行わなければなりません。細胞がDNAを複製するには想像以上に柔軟な仕組みが必要です。

DNAをコピーする酵素は多種に及ぶ

私は、その柔軟な仕組みを明らかにするため、DNAをコピーする酵素(DNAポリメラーゼ)に着目して研究を行っています。

単純に考えれば、DNA複製を滞りなく行うためには精巧なDNAポリメラーゼが1種類あれば事足りるように考えられますが、実際のところ、細胞内にはコピーの効率も正確さも異なるDNAポリメラーゼが数多く存在します(ヒトの場合、15種類)。

これらの多種類のDNAポリメラーゼが分業・協調し複製を遂行する様は、まるで性格の違う人間がチームを組んでプロジェクトに取り組む様子に似ています。

DNA複製時の突然変異も明らかになるかも

この仕組みを解明し、多様な構造を伴うゲノムDNAを複製する上で必要な仕組みの全容を明らかにすることができれば、複製の時に起きる突然変異の生成過程も明らかになるのではないかと期待しています。

正常細胞とガンなどの異常細胞とでは使われるDNAポリメラーゼが違うことなどが見つけられれば、新たな治療方法の発見につながるかもしれません。

大半のゲノム複製を担うDNAポリメラーゼδ(デルタ)とDNAポリメラーゼε(イプシロン)の合成領域の解析

先生のフィールド[ゲノム合成] 平成30年度採択課題ではこんな研究テーマも動いている!
きっかけ&学生時代

◆テーマとこう出会った

高校時代、生物の授業や書籍をきっかけに、DNA上の些細な変化が病気などの原因になることや生体の成り立ちに大きな影響を持つことに驚きを感じて、DNAの周りで起きる現象に興味を持ち始めました。その頃、講談社のブルーバックスなどを読み始めたのを覚えています。

その後、東北大学理学部生物学科に進学し、分子遺伝学の授業を通じて、遺伝情報の維持・継承には多様な仕組み(DNA複製、修復、組換え)が必要であることを学び、その分野への興味がさらに深まり、現在の研究に至ります。

◆大学時代

生物学の研究者を目指していましたが、物理、化学、情報科学などのいろいろな分野を学ぶことを心掛けていました。現在、その時に学んだことが毎日の研究活動に生かされています(特に情報科学)。国立大学の授業の単位は、いくら取っても授業料は変わりません!

◆出身高校は?

宮城県仙台第一高校

先生の分野を学ぶには
大学保一先生 の研究・研究室を見てみよう
実験の様子。分子生物学的な実験と情報科学的な解析を組み合わせ、長大なゲノムを複製する仕組みを探索しています
先生に一問一答
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?

数学

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

イギリス。暮らしの中でいろいろな人々とコミュニケーションする機会がたくさんあるのがいいですね。

Q3.一番聴いている音楽アーティストは?

Dido

Q4.研究以外で楽しいことは?

魚釣りの穴場を探すこと(研究テーマ探しと似てる!?)


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