世界が注目する「層状物質」にスパコンで迫る
原子や電子の動きから物質の特性を知る
私の専門は物性物理学という分野です。身の回りの様々な材料の特性、電気をよく流すとか磁石になるのはなぜか、そうした特性をもっと伸ばすにはどうしたらいいかを研究する分野です。
実験と理論の2通りの研究方法がありますが、私はスパコンなどを使ってシミュレーションを行い、量子力学に基づいた原子や電子の振る舞いを調べるアプローチをとっています。
シートのような「層状物質」
物性物理学の対象は非常に広いですが、最近私が興味を持っている対象の一つが層状物質です。
化学の授業でお馴染みの面心立方格子や六方最密構造などは3次元的な構造をしています。層状物質はこれらとは異なり、2次元のシート状の構造を持っています。
代表例がグラフェンと呼ばれる、炭素原子が6角形の二次元格子を組んだ物質で、黒鉛からスコッチテープで剥離することで作れます。
世界中で層状物質の新物質、続々と
原子1つ分の厚さしかない物質が安定に存在すること自体も興味深いですが、さらにグラフェンの中の電子がニュートリノと同じようなエネルギーと運動量の比例関係を持つなどの、驚くような性質を持っています。
グラフェンの発見後、こうしたユニークな特性を持つ層状物質が他にもないかという研究が世界的に行われ、毎週・毎月のように新物質が報告されています。
私はこれらの層状物質内での電子と原子の振動のあいだの量子的な相互作用を調べることで、すごく高効率な電子デバイス材料を見つけたいと思い、研究を進めています。
→先生のフィールド[熱制御] 平成29年度採択課題ではこんな研究テーマも動いている!
◆テーマとこう出会った
層状物質の研究を始めたきっかけは、研究者間のネットワークです。走査トンネル顕微鏡という量子力学的効果を使ってモノの表面を原子スケールで観る実験技術があります。ある時その実験グループに「シリコン原子版のグラフェンのようなものを作れた」と綺麗な6角形様のパターンが現れた像を見せてもらい、印象深かったので、物性をもっと調べてみようと実験・理論の共同研究を始めたのがきっかけです。ですから、いろいろな研究者とコミュニケーションを持つことがテーマを見つけるときには重要だと感じています。
Thomas Frederiksen
Donostia International Physics Center(ドノスティア国際物理学センター)
【分子デバイス・ナノ架橋系における電気伝導の理論研究、シミュレーションコード開発】研究に対するオープンマインドな姿勢、国際共同研究活動の活発さについて学ぶところが多いです。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? コンピュータサイエンス。系統的に勉強していないですが、仕事で必要な場面が多いので。 |
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Q2.一番聴いている音楽アーティストは? Children of Bodom。修論・博論のストレス解消で聞き始めましたが、解散してしまうようで残念です。 |
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Q3.感動した映画は?印象に残っている映画は? 『マッドマックス 怒りのデス・ロード』 |
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Q4.熱中したゲームは? 『Sid Meier's Civilization V』。時間があっというまに溶けます。 |
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Q5.大学時代の部活・サークルは? 奇術研究会。今は何一つ奇術できません。 |