眠れる遺伝子を呼び起こす人工核酸で、遺伝子発現を自由に制御
同じDNAから異なる細胞が生まれる謎
私たちの身体には腎臓や肝臓などの様々な臓器が存在し、それらの臓器は、形状や機能の全く異なる細胞から構成されています。しかし、生殖細胞などの特殊な細胞を除き、身体に存在する細胞の遺伝子(DNA)配列は同一です。
では、なぜDNAの配列は同じなのに、全く異なる細胞ができるのでしょう。
その答えは、DNAに施される「小さな印」にあります。DNAの一部に、「メチル化」と呼ばれる化学修飾が施されることで、その遺伝子機能は発現しなくなり、個々の細胞で「起きて働いている遺伝子」と「眠っている遺伝子」が区別されているのです。
遺伝子を眠らせる「メチル化」を取り去る
私は、このDNAに施される「小さな化学修飾(メチル化)」を、光を用いて取り去る分子を創ろうとしています。この分子が完成すれば、これまで眠っていた遺伝子の機能を呼び起こすことが可能となり、これまでと全く違った手法で万能細胞(iPS細胞など)を作ることも夢ではないかもしれません。
光という外部刺激をトリガーとしますので、遺伝子発現の時空間制御も可能になります。
副作用のない医薬品を作れる可能性も
また、私の創ろうとしている分子は、DNAやRNAに代表される遺伝子の分子骨格である「核酸」からできています。
核酸は、DNAやRNAと非常に特異的に結合する性質を持っていますので、副作用のない新たな医薬品への展開も期待されます。光を用いて細胞内の遺伝子発現を操り、様々な可能性を夢見ています!
→先生のフィールド[光操作] 平成29年度採択課題ではこんな研究テーマも動いている!自分の研究においては、自分の創る化合物に、生涯、責任を持ち続けていきたいと思っています。また、開発途中も、再利用可能なものはできる限り再活用したいと思います。
◆先生が心がけていることは?
省エネルギー、リサイクル
◆テーマとこう出会った
「副作用のない抗がん剤を創りたい!」と思ったことが、研究者になるキッカケでした。大学時代に研究室で核酸医薬に出会い、遺伝子の機能を核酸自身が制御するというストラテジーの美しさに魅了されました。そして今、新しい核酸医薬の創製を目指して研究しています。
一方で、核酸の標的遺伝子に対する「特異的結合能」に、強く惹かれています。特定の分子に対してのみ「特異的な結合親和性をもたらす相互作用」とは何かをもっと知りたいと思っています。その知的好奇心こそが、私の研究に対する一番の driving forceです。
◆中学時代
私の両親はともに研究者で共働きでしたので、伯母や祖母が母代わりとなって私を育ててくれた時代がありました。その第二の母とも言える伯母が、私が中学生の時にがんで亡くなりました。人間の死に直面した初めての出来事で、大きくショックを受け、また同時に、抗がん剤の副作用を目の当たりにしたことがきっかけで、「副作用のない薬を創る」をずっとライフワークとしています。
DNAやRNAを分子骨格とした核酸医薬にこだわるのは、その標的遺伝子に対する特異的認識能と、核酸の分子構造の美しさゆえです。DNAは世界で一番美しい分子だと本気で思っています。
◆出身高校は?
大阪府立豊中高校
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「7.生物・バイオ」の「21.分子生物学・細胞生物学・発生生物学、生化学(生理・行動・構造等 基礎生物学も含む)」
榎戸輝揚
理化学研究所/京都大学 白眉センター
【宇宙物理学、中性子星や雷雲から発生するγ線の研究】私の専門領域とは異なる研究をしていますが、前職場である京都大学白眉センターで同期でした。次々にアイデアを出し実現していく様を間近で見て、天才とはこのような人のことを言うのかと感じました。また、白眉センターの運営など研究以外のことにも協力的で、お人柄も素晴らしかったです。
泊幸秀
東京大学 定量生命科学研究所
【タンパク質をコードしないnon-coding RNAの機能解明】small non-coding RNA の研究で世界的にも有名な若手研究者です。学会で講演を聴いて感動し、そこでヒントを得て泊先生のラボに実験を習いに行ったこともあります。学生共々3日間もお世話になりました。研究内容だけでなく、お人柄も素晴らしいと感じました。
◆京大山吉氏、エクソソーム上の分子利用しanti-miRNA核酸を送達(日経バイオテク)
◆エクソソーム含有miRNAを標的とした抗体結合型核酸を開発 ~エクソソームと一緒に標的細胞内に取り込まれる核酸医薬の開発に期待~(長崎大学)
長崎大学薬学部はノーベル賞受賞者の下村脩先生を輩出した、日本最古の歴史を誇る薬学部の一つです。また、大学院医歯薬学総合研究科として医学部や歯学部と授業・研究面で連携した独自教育を進めています。さらに、先端創薬イノベーションセンターの指導の下、長崎独自の海産物や天然物から抽出した独自化合物ライブラリの創製も進められています。
みをつくし料理帖
高田郁(ハルキ文庫)
大坂の大水害で両親を失い天涯孤独となった少女、澪(みお)が、奉公先の主人とともに江戸に上り、小料理屋で試行錯誤しながらも、人生をかけて大奮闘するお話です。どんな困難にも諦めず立ち向かう澪に、人生とは何かを考えさせられます。物語に登場するお料理も美味しそうで、ある意味、飯テロ本です。レシピ本も出ています。
赤毛のアン
ルーシー・モード・モンゴメリ(新潮文庫)
まず翻訳者のご確認を! 「村岡花子訳」の赤毛のアンを強くお勧めします。赤毛の少女、アン・シャーリーが巻き起こす愉快な事件と、温かい周囲の人々が織りなす物語です。SFのようなドラマチックな展開はありませんが、当たり前だと思われがちな何気ない日常こそが幸せであると感じさせてくれる作品です。
Q1 .日本以外の国で暮らすとしたらどこ? ニューヨーク。世界中から「何かやってやろう」という人たちが集まっています。世界中のエネルギーが濃縮された街です。 |
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Q2.一番聴いている音楽アーティストは? Red Hot Chili Peppers。特に『Midnight』 |
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Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 春の甲子園で、外野本部の事務員。ホームランボールを取りに行ったりしました。 |
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Q4.研究以外で楽しいことは? 携帯でマンガを読むこと |
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Q5.会ってみたい有名人は? 織田信長 |