金融機関や放牧牛…。様々なコミュニティを数学で解析
老年心理学や経済学の研究者と共同研究
私の研究は、心理学や経済学、農学などといった、様々な分野に現れる「つながり」の解析を目指したものです。
例えば、心理学の分野では、老年心理学の研究者の方と共同で、高齢化が進んだ地区における助け合いの構造をどのように解析すればよいのか、といったことを考えました。
経済学の方では、金融機関同士の取引状況などから、どこかの金融機関が破綻してしまった時に、それが他の機関に影響を及ぼさないようにするにはどうすればよいか、といった課題に取り組みました。
関係なさそうな分野で数学が活躍
また、農学の方では、放牧牛を対象としていました。牛は社会的な動物なのだそうで、コミュニティを作って生活しています。そのようなコミュニティにおける変化を取り出せないか、といったことを研究しました。
面白いのは、一見あまり数学が出てこなさそうなこれらの分野で、数学が活躍し、しかも、それが強く求められていることです。
アンケート回答の曖昧さも数学で解決できる
例えば、他の人との交流の様子を調べたい時には、仲の良い人が何人くらいいるかをアンケートで質問したりしますが、その回答は5や10などのきりの良い数字に偏ります。
これは、おそらく正しくない回答ですので、修正が必要なのだと思いますが、「仲の良い人」というのは曖昧ですので、本当の答えは、もしかしたら回答者自身にもわからないかもしれません。
そのため、この問題に答えはないかもしれないですが、数学で解決しなければならない、面白い問題になっています。
→先生のフィールド[数学協働]ではこんな研究テーマも動いている!◆先生が心がけていることは?
単純な男女だけでなく、もう少し広い意味でのジェンダーの平等に興味があります。特に、研究は好奇心やアイデアがあることが一番重要ですので、広くいろいろな人が活躍できると良いと思います。
◆テーマとこう出会った
大学内の会議で、心理学や経済学、農学など他分野の先生方と話をする中で、数学が利用できそうな場面があり、共同研究を始めました。社会科学も含め、どの分野の先生方も、現在では数学を使った研究をしていますので、目標とすることは明確に教えていただけることが多く、共同研究を進めやすかったです。
◆高校・大学時代は
高校3年の夏頃まで文系のコースで学んでおり、秋頃に理系に変更したのですが、このことは、その後の研究や、その進め方にも影響があったように思います。大学は、どうにか合格することができましたが、合格後の勉強はわからないこと、できないことばかりでした。それでも、頑張っていればそのうちできるようになるという経験から、「できなくても大丈夫」という自信がつきました。
◆出身高校は?
日出学園高校
室田一雄
東京都立大学 経済経営学部 経済経営学科/経営学研究科 経営学専攻
【数理工学全般】幅広い分野で活躍している先生で、分野横断的なアプローチによって新しい数学を作っていくという研究スタイルに、影響を受けました。
増本康平
神戸大学 発達科学部 人間行動学科/人間発達環境学研究科 人間行動専攻
【老年心理学】さきがけ研究を共同で進めていただいた先生の一人で、議論をしていく中で、新しい数学の役割がたくさん見えてきました。
杉原正顯(故人)
東京大学名誉教授/名古屋大学名誉教授
【数値解析学】博士論文を執筆する際に指導していただきました。様々なことを広く、深く理解している先生で、そのような知識や理解があると、非常に大きな意義のある研究ができることを感じました。
情報系の学部ですが、制御理論や最適化など、かなり基礎的な学問も扱うことが特徴かと思います。そのため、基礎をしっかりと固めた上で、計算機などを利用して応用につなげていくような人が育っています。特に研究室の学生は、実学指向でスーパーコンピューターも使える数理科学者という特徴的な人たちが多いです。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? 基礎がしっかりしていればどのような学問でも良いと思いますが、語学はしっかり勉強したいです。 |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? どちらかというと、発展途上の国に興味があります。失敗を恐れずに新しい技術を作っていこうという活気を感じます。 |
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Q3.研究以外で楽しいことは? ピアノとインド料理。ピアノは研究テーマとしても扱っています。 |