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リアルタイムAI

AIでリアルタイムに未来予測。多くの企業も注目!


松原靖子先生

大阪大学 産業科学研究所/情報科学研究科

出会いの一冊

キュリー夫人伝

エーヴ・キュリー(白水社)

世界中の誰もが知る女性研究者「キュリー夫人」の生涯を実の娘の視点から綴った名著です。祖国ポーランドでの苦悩、科学への深い愛情、夫との死別、ラジウム研究所の設立、様々な出来事を通じて、彼女の痛ましいまでに純粋で美しい精神を感じることができます。

キュリー夫妻(マリー、ピエール)は、基礎研究のみならず、ラジウム放射線による癌治療、そしてそれらに伴う新たな産業の創出など、社会的にも非常に多くの貢献をしており、科学者の目指すべき姿を示してくれます。

世界を変える研究はこれ!

AIでリアルタイムに未来予測。多くの企業も注目!

生成され続けるビッグデータを瞬時に解析

産業、交通、環境、医療など、様々な分野で、大量のデータ、いわゆる「ビッグデータ」が生成され続け、世の中はデータで溢れかえっています。これらのデータは、あまりにも膨大で管理しきれず、これまで有効に活用されていませんでした。

そこで私の研究では、刻々と生成されるビッグデータを瞬時に解析し、要因分析を行うことで、その後の動向を予測する「リアルタイムAI (人工知能)技術」を開発しています。

ビッグデータに基づくリアルタイムの未来予測を行い、データの中から有用な知見を取り出し、社会活動を最適化することで、ビジネスや環境、医療など社会を豊かにするための様々なサービスに役立てることができます。

予測技術でスマート工場や自動運転も可能に

基礎研究と同時に社会実装への取り組みも非常に重要です。私の開発しているリアルタイムAI技術は、多くの企業から注目されており、産学共同研究も積極的に行っています。

例えば、製造業における工場の高度化・自動化を目指す、いわゆる「スマート工場」では、リアルタイムAI技術の予測機能を用いることで、装置を監視し、設備故障の原因を未然に察知してロスを防ぐことができます。事故や不良品の発生を防ぐなど安全性や収益性を高め、様々な付加価値を与えることもできます。

また、自動車産業においては、車載センサから刻々と計測される走行データを解析することで、安全かつ省エネルギーで走行可能な、人と環境に優しい自動運転技術を実現することができます。

アメリカ発ではない日本独自の技術を

Google、Amazon、Windowsなど、身の回りにあるソフトウェアやサービスはほとんどがアメリカ製ですが、その一方で日本国内にも、優れた技術や企業が沢山存在します。日本の産業を支える技術者の方々は、ものづくりに対する強い思いと熱意を持っています。彼らと力を合わせることで、アメリカの後追いではない、未来の産業発展に貢献する、日本独自の新たなソフトウェア技術を開発したいと考えています。

データマイニング分野のトップ国際会議 (ACM SIGKDD2014)でのポスター発表の様子。左は共著者の櫻井先生。

先生のフィールド[社会デザイン] 平成28年度採択課題ではこんな研究テーマも動いている!
SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

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産業界において、環境問題やCO2ゼロ社会の実現に向けた取り組みや課題は非常に重要です。また、人に優しい安全なモノづくりに向けた取り組みも大切です。

私の開発する「リアルタイムAI技術」は、様々な産業分野において、クリーンかつ安全なモノづくりを支えることができます。

例えば、スマート工場設備でリアルタイムに装置の監視と予測を行うことで、故障を未然に察知し、工場設備内のエネルギー効率を最適化し、安全性と収益性を同時に高めることができます。また、車載センサーをリアルタイムに解析・予測することにより、省エネルギーで走行可能な自動運転技術を実現することもできます。

リアルタイムの未来予測があれば、様々な場面において、社会をより豊かで安全なものにすることができます。

きっかけ&学生時代

◆テーマとこう出会った

33歳の時に、IPSJ (情報処理学会), ACM (Association for Computing Machinery)の両学会から推薦・表彰を受け、チューリング賞の授賞式に参加しました。

チューリング賞とは、情報分野におけるノーベル賞にあたる世界最高の権威を持つ賞です。例えば過去には、データベースやプログラミング言語の開発など、「世界を変えた技術」を生み出した研究者が受賞しています。これまで日本人の受賞者は一人もいません。

私はこの授賞式に参加したことをきっかけに、「世の中を変えるような役立つ新技術を作りたい」と強く考えるようになりました。闇雲に論文発表をしたり、既存技術を改良したりするだけでは、到底達成できない遠い目標のように思いました。

そのような中で「未来予測」こそは、社会を変革する力を持つ研究テーマであると強く確信するようになり、私の人生の目標となりました。

◆大学院博士課程では

アメリカ合衆国カーネギーメロン大学に留学し、データ解析の基礎研究をしました。大学には世界中から夢と希望と覚悟を持った熱い若者が集まっていて、とても良い刺激を受けました。

また、日本を離れ、多国籍な友人と深く関わっていくうちに、日本人であるという自覚を持ち、自分の中にある母国への愛情に気付きました。そして、帰国後は日本の科学技術発展のために貢献したいという新たな気持ちが芽生えました。

◆出身高校は?

栃木県立栃木女子高校

先生の分野を学ぶには
注目の研究者や研究の大学へ行こう!



松原靖子先生 の研究・研究室を見てみよう
JSTフェアでのポスター発表の様子。左2名は研究室メンバーの本田先生と川畑先生、右は櫻井先生。
33歳の時に、IPSJ (情報処理学会), ACM (Association for Computing Machinery)の両学会から推薦・表彰を受け、チューリング賞の授賞式に参加させていただく機会を得ました。
先生の学部・学科で学ぼう

大阪大学産業科学研究所は、80年の歴史を持つ日本を代表する総合理工型研究所です。最先端の科学技術を手掛けるとともに、産学連携も重視した非常に質の高い研究機関です。

現在は情報・量子科学系、材料・ビーム系、生体・分子科学系の3研究分野と産業ナノテクノロジーセンターのほか、新たに産業科学AIセンターも発足し、世界的な科学技術を数多く生み出しています。

先生に一問一答
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?

情報科学と数学。特に、数学は非常に大事です。研究者になった今でもまだまだ勉強中です。

Q2.熱中したゲームは?

『クロノ・トリガー』と『ゼノブレイド』。「未来を知り、自分の力でその未来を変えていく」というテーマが気に入っていました。

Q3.研究以外で楽しいことは?

子育てです。2歳の男の子と0歳の女の子がいます。子育てと研究(技術開発)は似ています。時間をかけて愛情を注ぐと、スクスク育っていきます。


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