自分の好みに歌ってくれるソフトウェアを作ろう
VOCALOIDが変えた創作活動
世の中にVOCALOID(主に初音ミク)が登場してきてから、創作活動の世界は大きく変わりました。これまでは実際に歌うボーカリストがいなければ歌作りは難しかったのが、いつでも歌ってくれる専属のボーカリストが手に入ったのです。多くの人が初音ミクに様々な歌い方をさせて、たくさんのコンテンツが世に送り出されました。
上手に歌えても、「個性がない!」
VOCALOIDは誰でも歌の入ったコンテンツを作ることができるという世界を生み出しましたが、次の時代にはどのようなソフトウェアが求められるでしょうか。
初音ミクは創作活動の幅を大きく広げましたが、しばらくするとそのソフトウェアを使いこなせるかが問題になり、誰でも上手に歌わせたいという需要が出てきます。
その後、歌詞と譜面を読み込ませて全自動で人間の歌声を作るためのソフトウェアが出てきました。すると、今度は「全自動では個性が出ない」というコメントが出てきたのです。
「自分好み」を追求し、新たな創作の世界へ
私は、この問題の次にどういう世界を創りたいかを考えて研究を進めています。全自動で人間らしい歌声を作り、それを「楽しく」作り替えるための技術です。イメージは、プロの歌手に歌い方を指示するだけで、自分好みに歌ってくれるソフトウェアの実現です。
「自分好み」な歌い方を知るために、心理学の分野など人間そのものを調べる学問を横断し、誰でも好みの歌声を簡単に作るためのソフトウェアを生み出し、歌声合成の次の世界を創りたいと思っています。
→先生のフィールド[人とインタラクション] 平成30年度採択課題ではこんな研究テーマも動いている!◆テーマとこう出会った
昔から音楽が好きでしたが、作曲の才能があったわけではなく、聴く専門でした。研究は、元々は音響機器の計測から音声の分析や合成に関するテーマで進めていましたが、VOCALOIDの爆発的なヒットをきっかけに、歌声情報処理という研究分野でも活動できることに気がつきました。
音楽を楽しみながら研究ができる!というやや不純な動機で研究者を志しました。今でも新たな音楽を探しては聴き、研究に役立つ「何か」がないか、日々楽しみながら探しています。
◆大学時代は
学業よりもゲームやプログラミングに没頭している不真面目な学生でした。研究者を目指したのも、趣味を兼ねた研究テーマであれば、楽しく仕事ができるという下心に満ちた動機からです。そのため、それまでの趣味を研究視点で考えなおし、研究にできそうなことを考えるというスタンスで、いろいろなテーマを考えてきました。歌声のテーマに繋がったのもたまたまで、もしかしたらゲームをテーマにした研究をしていたかもしれません。
◆出身高校は
釧路工業高等専門学校
古屋晋一
ソニーコンピュータサイエンス研究所/上智大学
脳と身体が連動する動作の原理を明らかにするため、医学・工学に加えて芸術の観点を融合させたアプローチに取り組んでいる。様々な分野に精通していることに加え、ご自身もプロのピアニストとして活躍し、ピアニストの視点からも研究を捉えている。
◆面接でよい印象を持たれる「声」とは?
「人間を超える声」で変わる現在と未来(東洋経済)
◆AIきりたんの仕掛け人、森勢将雅准教授に聞く、AI歌声合成の世界で今起こっていること(インタビュー)
◆Twitter: https://twitter.com/m_morise
「動画・学問さがしの旅に出よう! 気鋭若手研究者のスーパープレゼン」も観よう
先端メディアサイエンス学科では、コンピュータを用いて様々な未来を作るための研究を進めています。本学科の一番の特徴は、1年生のうちから研究室を見て回り、各研究室のテーマの概要を知ることができる点、また2年生から研究室への配属があり、意欲がある学生は研究活動をスタートさせるのが可能な点です。研究室どうしのつながりも強いため、いろいろな教員から気軽にアドバイスをもらえる環境は、大きな魅力です。
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 台湾:料理がおいしいから。 |
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Q2.一番聴いている音楽アーティストは? bohemianvoodoo。特に、『石の教会』 |
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Q3.印象に残っている映画は? 『けものがれ、俺らの猿と』 |
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Q4.熱中したゲームは? 学生時代は「ロマンシング・サガ」2と3。最近はツムツム。 |
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Q5.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 研究室でプログラム実装(音の鳴った方向にカメラを向ける制御)のアルバイト |