モデルは脳、思考する超高速コンピューターを目指して
人間のような柔軟な思考は困難
我々の身の回りに目を向けると、スマートフォン、家電製品などの電子機器があり、いまや快適な日常生活を送る上でなくてはならない物ばかりです。それら電子機器の内部にはコンピューターが搭載されています。
コンピューターは今後ますます発展していきますが、最終的には我々人間のような知性を持った賢い機械となるでしょうか。残念ながら、現在のコンピューターで人間のような柔軟な思考をさせるのは、人工知能(AI)が発達した現在でも非常に困難です。
人の神経回路網をモデルに複雑な知能を
我々はコンピューターと異なり、脳神経系の回路を利用して高度で柔軟な思考を行っています。脳の神経回路網に見られるように、1つ1つが単純な働きであっても、それらが互いに作用すると複雑な知能が発現するという、「複雑系科学」という学問分野の視点で新しいAIコンピューターの形を探索しています。
情報の媒体を電子から光へ
また、情報の担い手を電子から光に変えることで、光の「脳型」コンピューターができないかと考えています。これにより、超高速なAIができると考えています。例えば、自動運転の車に搭載して、急な飛び出しも即座に認識したり、これまで捉えることができなかった現象を可視化したりできるようになるかもしれません。
さらに、光のような自然現象を利用してAIコンピューターを作ることで、知能とは何かという哲学的な問いに挑みたいと思っています。
→先生のフィールド[革新的コンピューティング] 平成 30 年度採択課題ではこんな研究テーマも動いている!◆テーマとこう出会った
大学時代は物理学科で力学システム(力が作用して動く系)に共通する数理を学習していました。10年ほど前、当時の同僚と脳の神経回路網のモデルについて議論する機会があり、それを解析するのに大学時代の研究が活かせることに気づきました。また、これまで研究してきた光の研究を活かすことで、新しいコンピューターへの発展に寄与できないかと考え、現在に至っています。
たまたま 日常に潜む「偶然」を科学する
レナード・ムロディナウ(ダイヤモンド社)
人は結果に対して原因を求めてしまいますが、それは「偶然(たまたま)」の結果かもしれません。確率、統計などの高度な内容を含みますが、これを読むといろいろなモノの見方が変わるかもしれません。
生物と無生物のあいだ
福岡伸一(講談社現代新書)
生命とは何かという基本的な問いに、分子生物学者の福岡先生が非常に平易に解説されています。細胞が日々変化することで変化しない体を維持する動的平衡という概念は非常に興味深いものでした。