羽ばたく分子をもとに、ユニークな材料を開発
分子を設計し、動きをつける
人が立ったり座ったりするのと同じように、目に見えないサイズの分子でも、うまく設計図を描けば面白い動きをするものが創れます。
例えば、らせん型やおわん型の分子が柔軟に反転を繰り返す例は、数多く知られています。しかし、そういったナノメートルの世界における柔軟な分子骨格の動きを、日常生活において役立てるには工夫が必要です。
光で剥がせる分子接着剤
私たちは、剛直な2つの翼を柔軟な関節でつなぎ合わせた「羽ばたく蛍光分子」を独自に創り、その羽ばたき運動を利用して「光で剥がせる接着剤」や「指で分子を引っ張れる蛍光フィルム」といった、人の感覚に訴える材料を研究しています。
粘度のわずかな違いも測定できる
またこの分子は、液体の「サラサラ度(粘度)」を感じ取ることができます。外から光が当たった際に分子構造をすばやく平面化させる性質を持つことから、サラサラな液体のわずかな粘度の違いを局所的に感じ取ることができるのです。
そうすると、通常の粘度測定装置では測ることが難しい、「不均一なものの粘度の分布」がわかります。従来はくるくると回転するモーター型分子が使われてきましたが、ぱたぱたと羽ばたく分子を創ることで、とても低い粘度範囲においても、蛍光で粘度の違いを判別できるようになりました。
分子化学と機械工学を橋かけして新学理・新技術へ
「機能」というとき、ほとんどの場合、人間にとって嬉しいことを指します。機能分子というのは、ナノサイズの分子でありながら、メートルサイズの世界を生きている人間にとって嬉しい何かを生み出していることを暗に意味しています。しかし、人間にとって嬉しいことを実現する分子を狙って創造するには、ナノの分子化学とマクロな機械工学を橋かけし、スケールをまたいで理解・研究する必要があります。
私の場合、独自の機能分子をマクロなスケールへ展開することで、高分子物理(レオロジー)や機械工学(特に材料力学・流体力学・ソフトロボット)の分野で新しい学理や応用が拓ける可能性を見出しました。将来的には、スケールをまたいだ物質(モノ)に伝わる「力(ちから)の完全解明」や、光を使ってモノの形をいつでもどこでも変えられる「可逆3Dプリンティング」技術の創出を夢見て、基礎と応用の両面から研究を進めていきます。
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JST創発的研究支援事業(福島パネル)
◆テーマとこう出会った
「π共役系を研究しています」と言っても、やりたいことを理解してくれる一般の人はいません。太陽電池・半導体・LEDと言えば少しは伝わりますが、すでに研究人口が多く企業も取り組んでいる研究に、後から参入する気は起こりませんでした。
ただ、どんな構造の分子を作ればどういう性質を示すのか、長く研究していると少しずつわかってきます。それであれば、分子研究の専門家だからこそ発想できる、誰も想像したことのない分子の使い方をして、人の心を動かし、社会を驚かせるような研究をしたい。そう思ったのが独自の研究を始めることになったきっかけです。
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「15.エレクトロニクス・ナノ」の「60.物性物理・量子物理、半導体、電子関連材料」および「61.ナノテクノロジー」
大阪大学理学研究科は、基礎から応用まで幅広く学ぶことができ、新しい科学技術の創出のために没頭するための素晴らしい研究・教育環境が準備されています。教員は、常に新しいことや凄いことを考えているのが仕事です。科学にあそび、技術にはしゃぐ。そういった活気が周囲にも伝わり、自己の成長を望む人が自然と集まってくる場をつくりたいものです。
(学生さんへ) 最初に就職した企業が最後まで人生の面倒を見てくれる時代は終わった、と言われるようになりました。それならば、博士後期課程の3年で幅広い視野と数多くのスキルを獲得し、どこに行っても通用する人材となってから社会に出てみてはいかがでしょうか。世の中が不安定でも、自信に満ちた充実した人生が送れるように全力でサポートします。
蒼天航路
李學仁、王欣太(モーニングKC)
この話の主人公の名が世に知れ渡ったのは30歳のときです。30歳を迎えてそのことを知った時に、まだ一旗揚げるのには遅くない、そう思って頑張ることができました。いい大人になっても、大胆に行動する勇気を失わないでいたいものです。
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Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? 化学、四力(材料力学・機械力学・流体力学・熱力学)、シミュレーション、プログラミング |
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Q2.会ってみたい有名人は? 小室哲哉さん |



