羽ばたく分子をもとに、ユニークな材料を開発
分子を設計し、動きをつける
人が立ったり座ったりするのと同じように、目に見えないサイズの分子でも、うまく設計図を描けば面白い動きをするものが創れます。
例えば、らせん型やおわん型の分子が柔軟に反転を繰り返す例は、数多く知られています。しかし、そういったナノメートルの世界における柔軟な分子骨格の動きを、日常生活において役立てるには工夫が必要です。
光で剥がせる分子接着剤
私たちは、剛直な2つの翼を柔軟な関節でつなぎ合わせた「羽ばたく蛍光分子」を独自に創り、その羽ばたき運動を利用して「光で剥がせる接着剤」や「指で分子を引っ張れる蛍光フィルム」といった、人の感覚に訴える材料を研究しています。
粘度のわずかな違いも測定できる
またこの分子は、液体の「サラサラ度(粘度)」を感じ取ることができます。外から光が当たった際に分子構造をすばやく平面化させる性質を持つことから、サラサラな液体のわずかな粘度の違いを局所的に感じ取ることができるのです。
そうすると、通常の粘度測定装置では測ることが難しい、「不均一なものの粘度の分布」がわかります。従来はくるくると回転するモーター型分子が使われてきましたが、ぱたぱたと羽ばたく分子を創ることで、とても低い粘度範囲においても、蛍光で粘度の違いを判別できるようになりました。
血液粘度を測って病気診断に応用も
将来的には、接着剤やゼリーなどのゲル状物質のムラを蛍光で可視化したり、微量の血液の粘度を測定して診断に用いたりする手法の開発を夢見て、基礎と応用の両面から研究を進めていきます。
→先生のフィールド[光極限]ではこんな研究テーマも動いている!◆テーマとこう出会った
「π共役系を研究しています」と言っても、やりたいことを理解してくれる一般の人はいません。太陽電池・半導体・LEDと言えば少しは伝わりますが、すでに研究人口が多く企業も取り組んでいる研究に、後から参入する気は起こりませんでした。
ただ、どんな構造の分子を作ればどういう性質を示すのか、長く研究していると少しずつわかってきます。それであれば、分子研究の専門家だからこそ発想できる、誰も想像したことのない分子の使い方をして、人の心を動かし、社会を驚かせるような研究をしたい。そう思ったのが独自の研究を始めることになったきっかけです。
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「15.エレクトロニクス・ナノ」の「60.物性物理・量子物理、半導体、電子関連材料」および「61.ナノテクノロジー」
京都大学、特に理学研究科は、基礎科学が強いです。それをもって、社会から遠いとか、逆に喧騒から離れているから純粋で良いとか、人によって感じ方はあると思います。ただ、「基礎科学と応用技術のどちらが大事か」という議論は不毛であり、両方を理解した人材が一人でも増えるのが良いはずです。
もちろん、時間をかけて基礎を学ぶには、やはり大学教育が良いでしょう。しかし、基礎の崇拝、応用の強制、どちらに偏るのも私は好きではありません。科学にあそび、技術にはしゃぐ。そういった活気が周囲にも伝わり、自己の成長を望む人が自然と集まってくる場をつくりたいものです。
蒼天航路
李學仁、王欣太(モーニングKC)
この話の主人公の名が世に知れ渡ったのは30歳のときです。30歳を迎えてそのことを知った時に、まだ一旗揚げるのには遅くない、そう思って頑張ることができました。いい大人になっても、大胆に行動する勇気を失わないでいたいものです。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? 化学またはロボット工学 |
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Q2.会ってみたい有名人は? 河野太郎 大臣 |