タブーだった磁性体で、量子コンピュータを大規模化
世界が挑む、超伝導量子コンピュータ
私は現在、超伝導体と呼ばれる絶対零度(摂氏マイナス273度)近傍で電気抵抗がゼロになる物質を用いて「量子コンピュータ」を作ろうとしています。
量子コンピュータとは、現在のスーパーコンピュータでさえも解くことが難しい問題を解ける可能性を持つ未来のコンピュータです。超伝導量子コンピュータの研究開発は、国内外の名だたる大学や研究機関、民間企業が取り組んでいますが、現在ではこれをどうすれば大規模にして実用化できるかが世界の関心事です。
磁石を導入しても大丈夫と証明
そこで私は、磁性体(磁石)を量子コンピュータに取り入れることで、大規模化を実現しようと考えています。これまでの超伝導デバイスの常識では、磁性体は超伝導の性質を壊してしまうため御法度で、できる限り排除すべきものでした。
これに対し私は大学院時代に、磁性体をあえて導入することにより、超伝導量子コンピュータの大規模化が容易になることを理論的に実証・提案しました。
企業から再び研究へ。学生時代の理論を実証
大学院卒業後、3年間の民間企業在籍を経て、再び研究の世界へ戻ることを決めた際、以前からやってみたかった実験研究に取り組むべく、実験家へ転身しました。
数年間の実験経験を経て、新しい研究テーマを模索する中で、自分が大学院時代に提案した理論を自ら実証したいと考え、また量子コンピュータ開発が世界的に盛り上がってきた幸運もあり、この研究をスタートしました。現在では理論の原理実証まで成功し、大規模化を進めています。
→先生のフィールド[量子機能] 平成28年度採択課題ではこんな研究テーマも動いている!量子コンピュータは、従来のスパコンを凌駕する計算性能を有することが期待されており、これを実現することで、創薬や材料開発などの極めて大規模な数値計算・シミュレーションが有効な幅広い産業・技術分野へ貢献することが期待されます。
◆先生が心がけていることは?
エコバッグを持ち歩く。
◆テーマとこう出会った
博士号取得までの学生時代は理論研究に取り組んでおり、磁性体(磁石)と超伝導体が組み合わさることによって起こる新しい物理現象や、そのデバイス応用に関して理論提案を行っていました。
その後、自ら実験を行いたいと思い実験家へ転向し、新しい研究テーマを模索する中で、学生時代に自分で提案した理論を実験的に実証しようと考えたのが、本研究のきっかけです。
◆中学・高校時代は
音楽部(合唱部)に所属し、特にヨーロッパのルネサンス音楽にのめり込みました。今も古楽器(リュート、ヴィオラ・ダ・ガンバ等)演奏など音楽は続けており、研究生活の合間のよい清涼剤になっています。
◆出身高校は?
岩手県立盛岡第一高校
「電子デバイス・電子機器」が 学べる大学・研究者はこちら (※みらいぶっくへ)
「15.エレクトロニクス・ナノ」の「57.電子デバイス系(ネット家電、ディスプレイ等)」
中村泰信
東京大学
工学部 物理工学科/工学系研究科 物理工学専攻/先端科学技術センター
【量子コンピュータの研究開発】世界で初めて超伝導量子コンピュータの原理実証をした研究者です。
◆「磁性体を用いた大規模化可能な超伝導量子コンピュータ 【さきがけ】」(YouTube動画)
名古屋大学工学部・電気電子情報工学科には、ノーベル物理学賞受賞者である天野浩教授を筆頭として、半導体や光、磁性体(スピン)や超伝導体、プラズマといった幅広い分野の世界第一線の研究者が所属しています。私が取り組んでいる超伝導量子コンピュータだけでなく、多様な材料や物理系を用いた最先端のデバイス工学を学ぶことが可能です。
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? イギリス。これまで出会ったイギリス人研究者のほぼ全員がコミュニケーションしやすいため。 |
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Q2.一番聴いている音楽アーティストは? ザ・コレクターズ。特に、『Million Crossroads Rock』 |
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Q3.感動した映画は?印象に残っている映画は? 『ニュー・シネマ・パラダイス』 |
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Q4.大学時代の部活・サークルは? 混声合唱団 |
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Q5.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 仙台フィルハーモニー管弦楽団の裏方 |