注目されてこなかった触媒材料でのアンモニア合成に成功
暮らしを支えるアンモニア、課題は生産の省エネ
アンモニアは、人工肥料やナイロンなどの合成繊維の原料など様々な用途で用いられており、人類の生存や生活を支える重要な化学品です。
さらに、アンモニア分子は、窒素に水素が3つ結合しており、水素ガスよりも容易に液化できるため、水素貯蔵または輸送のための形態としても注目されています。
現在の工業的なアンモニア生産方法は、鉄系の触媒を用い高温高圧の条件下で行われており、エネルギーを多く消費するプロセスとなっています。持続可能な社会発展のためにも、より省エネルギーでアンモニアを合成する手法が求められています。
新触媒・ヒドリドイオンでの合成成功に感動
私は、これまで触媒材料としては注目されてこなかったヒドリドイオンを含む固体材料を用い、従来の触媒よりもはるかに温和な条件で作動する新触媒の開発を行っています。
ヒドリドイオンとは、負の電荷を持った水素イオンのことであり窒素分子を活性化しアンモニアを合成するのに優れた能力を有しています。
そもそもヒドリドイオンを持つ固体材料自体の報告例が少なく、学生達と様々な仮説を立てながら新材料の合成に取り組み、はじめて目的の材料が合成できた時は、身が震えるような感動を覚えました。
光を利用したアンモニア合成にも挑戦
また、新触媒材料の合成だけでなく光を利用してヒドリドイオンを活性化し、窒素からアンモニアを合成する新たな試みにも挑戦しています。これまでの常識にとらわれることなく、挑戦し続ける中で世の中を変えるような結果が生まれると確信しています。
→先生のフィールド[反応制御] 平成30年度採択課題ではこんな研究テーマも動いている!アンモニアは、次世代のクリーンなエネルギーである水素の貯蔵材料として注目されています。これを実現する場合、温和な条件(低温・低圧)で作動する触媒が必須になります。既存の触媒では、温和な条件ではうまく働かないため新触媒材料かつ貴金属フリーな触媒で実現できれば、安価かつ信頼できる持続可能なエネルギー技術に大きく貢献できると考えています。
◆テーマとこう出会った
研究員時代に教授の細野秀雄教授から与えられたテーマでアンモニア合成触媒の開発を始めました。次第に細野先生のように世の中に役立つ新材料を自分でも生み出したいと思ったことがきっかけです。
◆中高~大学時代
陸上部に所属しており、自分自身の体力の限界(自己記録の更新)に挑戦していました。現在は、自分の考えが科学の真理追究にどこまで通用するのか、その限界に挑戦しているところです。学生時代の限界に挑戦する試みが今も生きていると思います。
◆出身高校は?
大阪府立生野高校
「触媒・資源化学プロセス」が 学べる大学・研究者はこちら (※みらいぶっくへ)
「17.化学・化学工学」の「71.化学工学、プロセス工学」
細野秀雄
東京工業大学 フロンティア材料研究所/元素戦略研究センター
【鉄系超伝導、エレクトライド、IGZOなど新規機能性無機材料の開発】
すでに素晴らしい業績を数々出していますが、常に新しいことに挑戦しています。
私が所属している東工大材料系無機材料分野には、様々な新物質を生み出してる先生が数多く在籍されております。ただ新しい物質を作るのではなく環境・エネルギー・エレクトロニクス・バイオテクノロジーなど多岐にわたる分野で使える機能を付与することで初めて”材料”となります。世の中に役立ってこそ材料なので、そういった材料を生み出せる人材になりたい方にはお勧めの分野ですし、材料科学の基礎から応用まで学ぶことができます。
Q1.一番聴いている音楽アーティストは? ペンタトニックス |
|
Q2.感動した映画は?印象に残っている映画は? バックトゥザフューチャー |
|
Q3.大学時代の部活・サークルは? 陸上部 |
|
Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 病院の清掃 |
|
Q5.研究以外で楽しいことは? 子育て、昆虫採集 |