構造・機能材料

燃料電池材料

100年ぶり、新しい燃料電池材料を開発!CO2 発生量の大幅な削減に貢献


石原達己先生

九州大学 工学部 応用化学科(統合新領域学府 オートモーティブサイエンス専攻)

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研究しているLaGaO3を用いる 円筒型燃料電池セル


◆着想のきっかけは何ですか

酸素イオンという伝導体は、電荷を運び発電します。燃料電池などに古くから利用される材料です。100年以上前から、この伝導体の材料としてジルコニア系酸化物が使われていました。

私は、これと異なる結晶構造を持つ材料を使えば、新しい酸素イオン伝導体になるに違いないと考え、さらに優れた性能を示す材料を探索しました。その結果、従来検討されていなかった材料を見つけ出し、100年ぶりとなる新しい酸素イオン伝導体の開発に成功しました。

◆開発したイオン伝導体はどの点で優れていますか

現在の燃料電池は、発電効率が低いこと、高価な白金の触媒を必要とすることが、大きな課題です。その点、酸素イオン伝導体を電解質に用いた我々の燃料電池は、発電効率が高く、安価な無機の酸化物を触媒に用いることができます。

ただしこの燃料電池は、発電のために動作する温度が高いため、起動時間が長くかかり、電池の長期安定性に欠けるという課題があります。低温でも十分な活性のある酸化物触媒を開発し、動作する温度を低くすることができれば、起動時間も短縮でき、実用化に近づくと考えています。

◆その研究が進むと何が良いのでしょうか

燃料電池は、高効率な発電が期待される有望な電池です。新しい酸素イオン伝導体によって高性能化した燃料電池が普及すれば、電気の効率的な発生によるCO₂の発生量の大幅な削減に寄与し、エネルギー問題に寄与できます。さらに言えば、地球温暖化の抑制に寄与できることになります。

SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

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貴重な化石資源や低品位エネルギーを、クリーンで使いやすい電気エネルギーに効率よく変換できる「可逆動作型燃料電池」の実用化を促進し、全ての人がクリーンなエネルギーを利用できる社会の実現を目指します。

CO₂の排出量を最小にすることで、環境との共生と持続的な発展を通じ、エネルギー銀行のような新しい産業の育成やサービスが提供できます。エネルギーの取り合いをなくして、世界の人々が豊かに平和に暮らせる社会の創出に貢献したいと思います。

この道に進んだきっかけ

中学生の頃、石油危機というエネルギー危機があり、トイレットペーパーが無くなり、ガソリンなど多くの物価が上がりました。エネルギーが足りなくなると、こんなにみじめな感じがするのかと思いました。そこで、自分の力で豊富なエネルギーを提供できる技術が作れないかと思い、工学部に行くことにしました。

石油や天然ガスなどの資源も、限りがあります。「効率よく使えるエネルギーに変換することしか、今後の永続的な人類の発展はない。燃料電池やエネルギー関係の触媒化学の研究を行いたい」と考え、アカデミアの道を選びました。大学生の頃は友人とよく遊び、人とのつながり、出会いの大切を実感しました。

どこで学べる?
もっと先生の研究・研究室を見てみよう
学生はどんな研究を?

・無機酸化物における酸素イオン伝導体の開発と、その次世代型燃料電池への応用

・無機酸化物による新規な触媒材料の開発

・新規2次電池の開発と蓄電機構の解明

・無機―バイオ光触媒の開発

学生はどんなところに就職?

◆主な業種

・電気・ガス・石油関係などエネルギー関係企業

・総合化学企業、セラミック製造会社

◆主な職種

・基礎・応用研究・先行開発

・設計・開発

・大学等研究機関所属の教員・研究者

◆学んだことはどう活きる? 

研究開発に活かされています。

先生からひとこと

九州大学工学部では、実際に開発した材料や技術が社会に実装されることを目指して、研究を行っています。応用化学科(工学部第二群)は、広い範囲における材料の化学的な知識を利用し、種々の研究を行うことで、社会に役立つ材料の開発を目指しています。

先生の研究に挑戦しよう!

・硫酸塩を電解質とし、Pt/炭素を電極とした燃料電池を用いる水の電気分解と発生した水素/酸素を用いる発電実験を通して、電気と水素がお互いに変換できることを学びましょう。

・身の回りには、快適な生活空間や環境保全の観点で、多くの触媒技術が用いられています。例えば、台所のグリルの沿道にはPt触媒が取り付けられて煙が出ないようになっています。他にもどのようなところに使われているか調べてみましょう。

中高生におすすめ

トコトンやさしい燃料電池の本

森田敬愛(日刊工業新聞社)

燃料電池は、来たるべきカーボンニュートラルエネルギー社会の切り札として期待されている。本書は、燃料電池の基礎・歴史や仕組み、関連技術や材料、最新業界動向を手軽に知ることができる一冊であり、開発の歴史から原理までを勉強することができる。


生命とは何か

シュレーディンガー:著 岡小天、鎮目恭夫:訳(岩波文庫)

波動方程式を提案し、量子力学を切り開いたシュレーディンガーが、生命の本質を考えた書籍。ちょっと難しい内容を含んでいるが、生命は何か、生きていることの物理的な意味を考えさせる内容だ。異なった視点で、学問を捉えることの重要性を教えてくれる。


先生に一問一答
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?

やはり、人の役に立てる学問である工学を選びます。自分はいつも未知の探求より新規の創造を座右の銘としています。

Q2.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

農業大学での、センサー管理されたハウスの施工

Q3.研究以外で楽しいことは?

蘭の栽培、ソフトバンクホークスの観戦


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