素粒子・原子核・宇宙線・宇宙物理

ニュートリノ

宇宙の根源の謎を解明するニュートリノ現象を探求


関口哲郎先生

総合研究大学院大学 高エネルギー加速器科学研究科 素粒子原子核専攻/素粒子原子核研究所

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ニュートリノ実験で使う電磁ホーンという装置を、米国コロラド大学にて組み立てたとき


◆この研究の着想のきっかけはなんですか

ニュートリノという素粒子は、大変謎の多い物質です。宇宙に充満するはずなのに、検出することが非常に難しい粒子なのです。しかし、日本の誇るスーパーカミオカンデを用いた実験グループによって、ニュートリノが種類を変化させながら伝搬する現象が発見されました。

その発見によって、ニュートリノには重さがあることが世界で初めて分かりました。それ以降も、世界の様々な実験によって、ニュートリノ検出の研究が行われています。しかし検出精度をさらに上げれば、もっと新しい発見が期待できると思いました。そこで、世界各国から約500人の研究者が集まる国際共同実験に参加して、未知のニュートリノ現象の解明を目指しました。

◆どんな研究成果がありましたか

これまでの世界中の実験の結果、3種類あるニュートリノが別の種類に変化するのは3通りあります。これまでの世界中の実験の結果、3通りの変化のうち2通りは見つかっていましたが、1つだけが未発見でした。

そこで、これまでのニュートリノ生成装置の100倍近く多くのニュートリノを作り出す、大強度の実験施設を建設しました。この施設を使うことで、未発見のニュートリノが変化する現象の発見に成功しました。

◆その研究が進むと何が良いのでしょうか

この研究の成果として、非常に重要なことがあります。それは、この宇宙はなぜ物質だけでできているのかという問題です。この世のモノが物質でできている。そんなことは当たり前と思うでしょうが、実は宇宙物理の世界では重大な未解決問題なのです。

この宇宙はもともと、物質だけでなく「反物質」も同じ数だけ存在したと考えられています。反物質は、電荷のプラスマイナスが物質と逆向きなだけです。これまでの研究から、物質に比べ反物質の数が圧倒的に少ないことが分かっています。しかし、なぜそうなってしまったのかは長年の謎でした。

ニュートリノが変化する様子の発見で、なぜこの宇宙は物質だけでできあがっているのかという謎を解決する、大きな一歩を踏み出しました。

SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

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エネルギー供給の問題は、今後益々重要度が増していきます。電力を作り出す側は、再生可能エネルギーの方向に今後加速していくと思いますが、使う側の私たちも、電力使用の無駄を減らすだけでなく、減らす努力が必要になります。

私が研究している素粒子物理の実験分野では、大型加速器を始め大規模な実験装置を使用し、大量の電力が必要です。電源システムを改良して、エネルギー回生方式を導入することにより、電力使用を大幅に減らす努力を行っています。

この道に進んだきっかけ

中学、高校時代は、部活動に明け暮れていまして、そのため、浪人して予備校に通っていました。予備校帰りによく本屋に立ち寄って、理工学書を眺めていた折に、素粒子物理という学問に出会い、将来、研究者になりたいという夢が芽生えました。

大学でも体育会に所属して、どちらかというと運動の方に励んでいた学生時代でしたが、大学院に行きたいという希望は強く持っていたため、大学院入試の直前にあった部活の夏合宿に参考書を持ち込み、早朝にひとり早起きして、試験勉強に励んだ記憶が懐かしいです。その甲斐あって(?)、無事に大学院に合格できた時は、本当に嬉しかったです。

どこで学べる?
もっと先生の研究・研究室を見てみよう

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米国、カナダ、日本の研究者と、米国フェルミ国立加速器研究所にてテスト実験を行ったときの写真

学生はどんな研究を?

ニュートリノを作り出す実験装置や、検出する実験装置などの開発を行っています。それらを使って実験し、得られたデータを解析することで、未知のニュートリノの性質を調べています。

学生はどんなところに就職?

◆主な職種

・大学等研究機関所属の教員・研究者

◆学んだことはどう生きる? 

研究職に進む人が多いですが、装置開発などのハードウェア面や、プログラミングやシミュレーションなどのソフトウェア面など、自分の得意なことを活かして研究に関わっています。

先生からひとこと

宇宙に満ち溢れているのに、よく性質の分かっていないニュートリノ。その研究を行うためには、実験装置を作り、実験データを記録し、解析して、物理結果を導いていきます。1つの実験の中でも、たくさんの仕事があり、自分の得意なことを活かせるのが、素粒子実験分野の醍醐味です。海外の優秀な研究者とも協力して、世界最先端の研究を一緒に進めていきませんか?

中高生におすすめ

すごい実験 高校生にもわかる素粒子物理の最前線

多田将(イースト・プレス)

茨城県のJ-PARC実験施設を建設し、国家プロジェクトの実験を牽引してきた研究者が、ニュートリノ素粒子からT2K実験までを高校生にも分かりやすく解説する。都内の高校で実際に行った講義を下敷きにしており、研究の最前線で戦ってきた者だからこそ語ることのできる、ニュートリノ実験施設とT2K実験の魅力が満載である。また、ガンダムやエヴァンゲリオンの武器との比較などくだけた例え話が満載で、科学が苦手な人でも十分に理解しやすい内容となっている。本書で素粒子物理学の面白さに触れてみて欲しい。


東大教授の父が教えてくれた頭がよくなる勉強法

永野裕之(PHP研究所)

落ちこぼれだった著者は、高校2年生の冬に身につけた勉強法で東大受験に合格し、最終的にはJAXAに入る。勉強とは単に知識を覚えることではなく、自分の頭で考えてプロセスを理解することだと教えてくれる本。

学生時代とは違い、社会に出たら自分で考え、行動していかなくてはならない。どんなことでも自らの頭で考え、理解していく力が必要になる。それを身に付ける第一歩として読んで欲しい。また、高校生だけでなく、小中高生の子どもを持つ親にもお勧めしたい。


オイラーの贈物

吉田武(東海大学出版会)

ノーベル物理学賞受賞者のファインマン博士に「これは人類の至宝だ」「数学の中で最も優れた、驚異的なほどの数式」と言わしめた、オイラーの公式。本書ではこのオイラーの公式を単に暗記するのではなく、必要な数式を1つずつ導き出していくことで、証明の過程を学ぶことができる。その過程で、数学において非常に重要な数々のことを理解していくことができるため、高校生にお勧めしたい。


先生に一問一答
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

カナダで暮らしたいです。大学院時代に研究で2年ほど滞在しましたが、都会のすぐそばに豊かな自然がたくさんあり、過ごしやすいです。将来、オーロラを自分の目で見てみたいです。

Q2.大学時代の部活・サークルは?

体育会のアメリカンフットボール部に所属し、部活に明け暮れていました。

Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

大学卒業間近に、卒業旅行の資金稼ぎのため、短期バイトで冷凍倉庫の仕分けを行いました。マイナス30℃の中の作業は、滅多にできない経験でした。


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