◆着想のきっかけは何ですか
私は、スマホなどの無線電波がヒトの体に与える影響について研究をしています。全ての通信機器から発生する電波は、国際的な安全基準や我が国の規制を満たすように設計されていますが、技術の発展に合わせて、常に安全性を確認する必要があります。
また現状では、ヒトの周辺の電波の強さは測定できますが、ヒトの体内で生じる電波リスクは測定することができません。従って、シミュレーションによってヒトの体内を再現し、物理現象を評価することが重要となってきます。
私が着目したのは、ヒトの生体反応を計算シミュレーションで再現できないかです。例えば、ヒトは気温が上がると血管を拡張したり汗をかいたりなどの反応(生体反応)によって、体温を下げようとします。
ヒトが電波に当たると、体温が上がったり、神経が刺激されたりするので、この生体特有の反応を計算によって再現することで、電波の安全性をより高い精度で評価できるようになるのでは?この発想が出発点となりました。
◆どんな成果が上がりましたか
大きな成果の1つとして、新しい通信方式である5Gで使われる無線電波が、どれくらいの強さまでなら人体に安全なのかという国際的な安全基準の根拠として、私たちの研究成果が採用されました。また、この技術は電波の安全性だけでなく、ヒトはどのような環境で熱中症になるのか、年齢によって発汗の機能はどのくらい異なるのかなどを解明することにも貢献しました。
◆その研究が進むと何が良いのでしょう
必要なデータを、全て実験して測定するというのは不可能です。そこで、限られた実験データに基づき、ヒトの生体反応を計算シミュレーションによって再現できるようになると、シミュレーションによって多くのデータを得ることができます。
また、直接測定することのできない、ヒトの体内で起こっている現象についても、詳しく解明することができます。今は、体温上昇に伴う生体反応だけではなく、心臓や脳などの器官、さらには神経の反応などを推定できる計算モデルを構築しています。この研究が進むと、様々な病気の診断に役立てることができます。
電磁波と熱の複合的な物理現象に着目しています。電磁界の人体安全性に関わる基礎研究を実施し、その成果に得られた知見に基づき、ヒトにとって最適なデバイス・システムの設計を目指します。
さらにそれを産学連携して、基礎研究、国際標準化、ものづくりまで一気通貫した体制を形成し、研究開発に取り組みます。この技術は、熱中症など、高齢化社会独特のヘルスケア、さらにはメディカルに関する問題の解決にも利用可能です。
「ヒトに関する物理現象を再現する」
私の大学生時代は、携帯電話の利用が拡大し、電波のヒトへの影響に世間の関心が高まったときと重なります。通信工学を専攻していたこともあり、工学的な見地から何か貢献できないのか?と素朴に考え始めたのが、今の研究の出発点です。
例えば、体内で温度が上がると汗をかいたり、皮膚血管を拡張させたりして、その熱を効率的に外に逃がそうとする反応をします。このような生体特有の反応を計算によって再現、考慮できないか?と考えました。最初は安心・安全なものづくりでしたが、その後の関心は、人に関する物理現象を中心に、人の応答を予測することに移ってきました。
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◆平田晃正先生紹介ページ(名古屋工業大学)
当研究室では、大規模な電磁界解析技術と生体反応の計算モデルを軸に、ビッグデータや医用画像などと連携し、新規研究テーマを開拓しています。
現在の主なテーマは、電磁界による医療応用(イメージング、診断支援アプリの開発)、電波に対する人体安全性評価、ワイヤレスデバイスの最適設計、熱中症リスク評価、ウェアラブルセンサーによるヘルスケアなどです。
また、学生たちは、自身で得た研究成果を学術論文や国際学会、国内研究会などで広く情報発信しています。
◆主な業種
・自動車・機器
・航空機・航空機器
・重電系
・電気機械・機器
・コンピュータ・情報通信機器
・医療機器
・通信
・電気・ガス・水道・熱器供給業
◆主な職種
・基礎・応用研究・先行開発
・設計・開発
・生産技術
◆学んだことはどう生きる?
当研究室は、シミュレーションをメインとした研究活動を行っていますので、その知識を生かした職種についている卒業生が多いです。昨今では、ほとんどの製品に様々なシステムが組み込まれ、製品開発の場でもシミュレーションは必須となっていますので、活躍の場はとても多いです。
具体的には、自動車に組み込まれる回路システムの開発や、飛行機のエンジントラブルを検知するシステム開発、また、人体安全性だけではなく、周辺の電磁環境によって誤作動を起こさない電子機器の開発などに取り組んでいます。
これからの研究は、1つの専門を突き詰めた研究も重要ですが、たくさんの分野と密に連携した研究も大切になってきます。私が取り組んでいる「医工学連携による研究」も、その1つです。
医学と工学の専門家がチームを作って、課題に取り組む。その際に必要となってくるのは、専門知識はもちろんですが、分野の異なる先生方に「いかに分かりやすくかつ有益な技術であると伝えるか」というスキルが不可欠です。
一朝一夕で身に付けることは難しいですが、皆さんが、今日から日常生活で少しずつ意識を傾けるだけで5年後、10年後のコミュニケーション技術は、各段に違ってくると思います。まずは、勉強で身に付けた知識を分かりやすく他人に教えるなど、挑戦してみてください。
・熱中症搬送者数と気象条件の関係を調べてみよう
・携帯電話の普及率と脳腫瘍の発生率の関係を調べてみよう
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? もう1度、工学部に進学すると思います。 |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? カナダ。治安の良さと自然の豊かさに魅力を感じます。 |
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Q3.大学時代の部活・サークルは? サッカー |