◆研究のきっかけは何ですか
確率論が専門です。その中でも、統計力学に動機づけを持つ膨大な個数の粒子、数学としては無限個の粒子の挙動に興味があります。ランダム行列は、イギリス出身のとてもとてもハンサムな物理学者、Dysonさんが素晴らしい仕事をした分野です。それに関するSpohnさんの講演を、1987年3月にミネソタ大学で聞きました。それが不思議な話だったので、この分野を研究しています。
Dysonさんは、量子電磁気学という分野を60年ほど前に研究した人で、朝永振一郎、ジュリアン・シュウィンガー、リチャード・ファインマンと並び称されています。この3人は、ノーベル物理学賞を受賞。Dysonさんだけはノーベル賞の選に漏れたのですが、彼が最も数学に近かったかも知れません。
2014年、Spohnさんが開いたパーティに偶然参加した時、一度だけDysonさんと会い握手することができました。彼はもう、90歳を超えていました。背中が丸くなり、ファインマンの伝記にある写真のDysonさんとの風貌の違いに、不思議な気持ちになりました。
◆どんな研究法ですか
頭に浮かんだイメージを、取り出して数学の言葉で表します。
◆どんなことがわかりましたか
無限粒子系のスナップショットから、遠い未来の現象がわかるということを証明しました。
覚えることが苦手でした。数学は考えればよいので、こちらを選びました。好きでも、真面目な動機でもなかったのです。有名な数学者も、全く知りませんでした。知っていたのは、テレビのCMに出演していた廣中平祐先生と、なぜか有名だった森毅先生くらいです。伊藤清先生も小平先生も知りませんでした。
大学に入学してすぐに、クラスの学生と自主ゼミを始めました。トポロジーという言葉が恰好よかったので、理学部の助手の先生に本を紹介してもらい読んだのですが、何が何だかわからないのです。
ところがそのゼミの中で、その本をすらすらと読む者がいました。「そんなこともわからないの?」と彼に言われ、意地になって勉強しましたが、やっぱりわからず。それでも続けていき、気がつくと数学を専門にしていました。
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確率論は、幅の広い分野です。これは、偶然現象を論理的に解明する数学です。今後ますます発展していくと思います。私は学生諸君に、偶然現象を数学の言葉で解明するように促すつもりです。
また、粒子を情報と思えば、無限粒子系の研究は、深層学習の理論とつながります。実際、ボルツマンマシンという言葉が深層学習にあり、スピングラスという無限粒子系のモデルが使用されています。
世界は、膨大な数の粒子できています。私は、無限粒子系に大きな可能性を感じています。それを広げて、世の中の様々な現象/事象につなげて応用する研究を、学生諸君に提案したいと思います。
◆主な業種
修士課程、博士課程の学生の就職先は、研究者、高校教員、銀行、技術系企業などです。
◆学んだことはどう生きる?
数学自体が評価されていると思います。
確率論は、本当に面白いと思います。2000年以降、次々と確率論の世界が広がってきたと感じています。寿命という意味で、自分自身にもうあまり時間がないのが残念です。あと30年あれば、もっと様々な面白いことを考えていけるのにと思います。この確率論を、研究してみませんか。
単純ランダムウォークについて、「空間の次元」と「粒子の振る舞い」の関係について、考えてみてください。
ここで、単純ランダムウォークとは、1次元だと、左右に、one stepで、確率1/2で動くもの。2次元だと、平面の動きですから、東西南北に、1/4の確率で進みます。3次元空間だと、立体的な空間なので、東西南北上下に、1/6で進みます。何度も何度も、サイコロをなげて、粒子がどのように動いていくかを知りたいのです。
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 6月のフランス。気候が良く、料理がおいしいから。 |
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Q2.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 予備校でアルバイトをしました。通信添削に関する仕事で、問題の作成をしたり、会議で問題を検討したりして、楽しかった。「先生」と呼んでくれ、弁当もおやつに出るケーキもおいしかった。夢のようなバイトだったと思います。 |
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Q3.研究以外で楽しいことは? 大谷翔平君がホームランを打つことと、藤井蒼汰君が勝つこと。将棋はわからないけど、数学みたいで面白い。 |
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