◆この研究のきっかけは何ですか
私は、タンパク質の結晶の構造を、X線を使って細かく調べる研究をしています。米国の大学に留学していた頃、生理活性物質(体内の活動をコントロールする物質のことです)の合成に重要な働きをする「P450」という酵素をX線で分析していました。
このP450が、抗ガン活性を持つ「リベロマイシン」と呼ばれる物質の合成に関わることを、理化学研究所の高橋俊二研究員が発見していました。帰国した私は共同で、この酵素の構造を、X線や遺伝子操作などで詳しく調べることになりました。
◆どんなことがわかりましたか
研究の結果、抗がん活性を持ったリベロマイシンを形成する上で、P450が重要な役割を果たしていることが明らかになりました。P450とリベロマイシンの構造が明らかになったため、この成果は、より活性の高い抗がん剤の開発に繋がると期待されます。
もう1つの大きな成果は、リベロマイシンが、骨粗しょう症治療薬にもなり得ることがわかったことです。この成果は国内外で高い注目を集め、高く評価されています。
バイオジェット燃料として期待されているラダラン脂質とよばれる物質を多量に生産する微生物が知られています。この微生物が、ラダラン脂質をどうやって作り出しているのか、の仕組を解き明かす研究を進めています。この研究が、脱炭素社会の実現に貢献できたらとても嬉しいです。
薬を新たに作るためには、その薬が結合するタンパク質の形を精密に調べる必要があります。私の研究室では、このようなタンパク質の構造に基づいた創薬に結びつく技術開発と、タンパク質の構造解析を進めています。
大学院1年の頃、当時博士課程の先輩学生に同行し、共鳴ラマン分光と呼ばれる測定のため、愛知県にある分子科学研究所へ5日間ほど滞在しました。連日暗闇の中、装置の準備を行いました。試料をセットして測定することをひたすら繰り返し、気づいたら実験室の外も真っ暗になっていたことがしばしばでしたが、そこで得られたデータは非常に重要なものでした。
地道に実験を進めることで、良い成果を得ることの面白さ。研究者と議論を交わすことの重要性。数多くの実験をやり遂げた後に酌み交わす酒の旨さ。これらを感じることができた期間であり、研究者としての原点となった研究のように思います。
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「7.生物・バイオ」の「21.分子生物学・細胞生物学・発生生物学、生化学(生理・行動・構造等 基礎生物学も含む)」
ホルモンなど、体内の活動をコントロールする物質の生産に関わる酵素の構造解析。創薬に関わる、膜タンパク質の結晶構造解析。
◆主な業種
・食品・食料品・飲料品/タバコ・飼料・肥料
・薬剤・医薬品
・化学・化粧品・繊維/化学工業製品・衣料・石油製品(プラントは除く)
◆主な職種
・基礎・応用研究、先行開発
・製造・施工
・生産管理・施工管理
・品質管理・評価私が学生だった頃、タンパク質のX線結晶構造解析は、一部の研究者のみが行える特別な研究分野と言ってもよい状況でした。
しかし1990年代後半以降、この解析手法に用いられるハードウェア、ソフトウェア、この手法に必須の放射光施設を利用する仕組みが劇的に進歩しました。現在はこの解析技術が、分子レベルの研究を行う多くの研究者に必須のものとなっています。
さらに2017年ノーベル化学賞の受賞対象となった、低温電子顕微鏡による生体分子の詳細な構造解析が、ごく近年爆発的に進展しています。こうして、タンパク質を始めとする生体分子の構造解析を主軸とする構造生物学は、ますますその重要性を増しています。
タンパク質など、生き物が持つ分子の形を詳しく調べ、その形に基づいて生物が生きていく仕組み、いろいろな物質を作り出す仕組みなどを明らかにするのが構造生物学です。
最近、機械学習に基づいてタンパク質の構造をかなり正確に予測できるプログラムAlphaFold2が開発され、誰でも使えるように公開されています。このプログラムを使った構造予測をやってみましょう。(下記の「AlphaFold2の使い方」をダウンロードして、挑戦してみてください。)
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? 東京藝術大学建築学科。デザインや建築を勉強してみたいですね。 |
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Q2.感動した映画は?印象に残っている映画は? 『グリーンブック』。アメリカに現に存在する人種差別を背景に、人と人との心の交わりが味わい深い。 |
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Q3.研究以外で楽しいことは? 登山。雪が残る初冬の山の景色は、とても美しいです。 |