構造生物化学

タンパク質の立体構造

様々な病気の原因となる、重要タンパク質の立体構造がわかる!画期的手法を開発


村田武士先生

千葉大学 理学部 化学科(融合理工学府 先進理化学専攻)

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得られたタンパク質の立体構造情報から新しい薬をデザインしている様子


◆研究のきっかけは何ですか

様々な病気の原因になる重要なタンパク質に、膜タンパク質があります。膜タンパク質は、細胞膜の上にあります。なぜこれが重要なのかというと、多くが薬を創る時のターゲットになるからです。現在、市販の医薬品の50%以上が、膜タンパク質に作用することが知られています。創薬には、膜タンパク質の構造を知ることが不可欠です。

ただし構造を詳しく調べるためには、目的のタンパク質を綺麗に精製する必要があります。これまで人間の膜タンパク質は、精製が非常に難しいという困難がありました。私たちは理論計算を駆使して、膜タンパク質を精製し易くする技術を開発しました。また、膜タンパク質の構造解析を容易にする技術も開発しました。

◆何がわかりましたか

これらの技術を使って、創薬のターゲットになる10種類以上の重要な膜タンパク質の立体構造を、詳しく調べることに成功しています。立体構造が明らかになったメリットとして、この構造をコンピューターで分析することで、様々な治療薬を創ることが非常に簡単になりました。

◆その研究が進むと何が良いのでしょう

得られた立体構造の情報は、関連する生命機能や疾患原因の理解から、医薬品の開発にまで貢献できます。それだけでなく、細胞生物学や分子細胞生物学などの領域で、膜タンパク質を通した細胞の情報伝達や、物質輸送の研究をも大きく前進させるでしょう。

SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

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病気の原因となる重要タンパク質の立体構造を明らかにすることで、病気の原因が明らかになるばかりでなく、新しい薬を作り出すことが容易となるため、人類の健康と福祉に貢献できると考えています。

この道に進んだきっかけ

中高大と、ろくに勉強もせず、遊び呆けていたのですが、大学4年生で実際に研究を開始し、人生の目標を見つけました。

誰も答えを知らない研究を進め、熱中し、世界で初めてその答えを知ることができる研究の世界は、とても楽しいです!アイデアひとつで新しいイノベーションを作り出すこともできます!色々なことを不思議に思い、探求することが好きな方は「研究者の道」をお勧めします。

どこで学べる?
もっと先生の研究・研究室を見てみよう

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研究室の集合写真

学生はどんな研究を?

創薬を標的にした膜タンパク質の構造解析のための、基盤技術の開発と構造の解明。

研究室での実験風景:開発した抗菌剤が病原菌の生育を阻害するか調べている様子
研究室での実験風景:開発した抗菌剤が病原菌の生育を阻害するか調べている様子
学生はどんなところに就職?

◆主な業種

・薬剤・医薬品

・化学・化粧品・繊維/化学工業製品・衣料・石油製品(プラントは除く)

・官庁、自治体、公的法人、国際機関等

◆主な職種

・基礎・応用研究・先行開発

・中学校・高校教員など

・大学等研究機関所属の教員・研究者

◆学んだことはどう生きる? 

製薬企業や化学メーカーの研究者になる卒業生が多いです。


研究室での実験風景:標的タンパク質を精製している様子
研究室での実験風景:標的タンパク質を精製している様子
先生からひとこと

千葉大学理学部化学科では、物理化学、無機分析化学、有機化学、生命化学の幅広い化学を学ぶことができ、卒業研究ではそれらの分野の世界最先端の研究を行うことができます。ぜひ、紹介動画を見て下さい(https://youtu.be/BePOYhLuHfk)。

タンパク質の立体構造を得るための解析方法(クライオ電顕単粒子解析法) 2017年のノーベル化学賞はこの手法の開発者3名に与えられた。
タンパク質の立体構造を得るための解析方法(クライオ電顕単粒子解析法) 2017年のノーベル化学賞はこの手法の開発者3名に与えられた。
先生の研究に挑戦しよう!

グーグルがAI(人工知能)を駆使して開発したタンパク質立体構造予測プログラム(AlphaFold2)を用いてタンパク質の立体構造を予測してみよう!

以下のサイトにアクセス
https://colab.research.google.com/github/sokrypton/ColabFold/blob/main/AlphaFold2.ipynb

query_sequence のところに自分の興味のあるタンパク質のアミノ酸配列を入れて、予測してみよう。使い方は「AlphaFold2 使い方」で検索すれば色々見つかります。試してみてください。

標的タンパク質のアミノ酸配列を色々と置換し、その立体構造も予測してみてください。もしかしたら、全く新規の立体構造を持った世界で唯一のタンパク質を作り出すことができるかも! 

中高生におすすめ

ニュートン別冊 10万種類のタンパク質

(ニュートンプレス)

食べ物から得たタンパク質を材料に、人間の体の中で様々な機能を持ったタンパク質が作られる。体の代謝を行う酵素タンパクや、コラーゲンなど生体構造を作るタンパクの種類は、なんと10万種といわれる。この本は、タンパク質の入門書。タンパク質の重要性や多様性が丁寧に解説されている。


動的平衡 生命はなぜそこに宿るのか

福岡伸一(木楽舎)

「(創薬の)ベンチャー企業の初任給は大学の2倍以上なのです。今、米国の若い研究者たちはスローガン的に『ノーベル賞より億万長者』と言っています」。このような書き出しで、この本は始まる。

ベストセラー作家にして分子生物学者フクオカ博士が問う、生命の生命現象の核心を解くキーワードは「動的平衡」と言う。人はなぜ「錯誤」するか、分子生物学が示す「太らない食べ方」、生命は時計仕掛けか、ヒトと病原体の戦いなどなど、刺激的な文体で鮮やかに解説する。


面白くて眠れなくなる遺伝子

竹内薫、丸山篤史(PHP研究所)

面白い名前の遺伝子たち、ガンと遺伝子、遺伝子検査でわかること、遺伝子治療の現在、ウイルスの話、性の決定と遺伝子、遺伝学の祖メンデルから遺伝子と染色体、DNAの働きまで。人気のサイエンス作家の手によって、知りたい遺伝子の話をわかりやすく解説している。


先生に一問一答
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?

やっぱり今と同じ生物学・生化学です。これを学ぶと「人間とは何か?」が見えてくる感じがします。

Q2.大学時代の部活・サークルは?

フォーク同好会。弾き語りが好きです。

Q3.研究以外で楽しいことは?

プロバスケット(千葉ジェッツ)の応援


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