◆研究のきっかけは何ですか
近い将来確実に発生すると言われている南海トラフ地震は、極めて甚大な被害が予測されており、発生すれば我が国の存立にも関わります。中部日本は起こりうる被災の中心地にあり、名古屋大学はその基幹大学です。そこで大学が中心になって、あらゆる力を結集する仕組みを作る決意をしました。
◆どんな成果が上がりましたか
産官学民が力を合わせて地震に向き合うため、減災連携研究センターという研究機関を新たに設立しました。これは、東大地震研、京大防災研、東北大学の災害科学国際研究所に相当する、防災減災のための研究機関です。
私はセンターの設立や、減災館という人々が集い協働する場を開設しました。建物のものものを揺すり、巨大地震で問題となる超高層ビルの揺れを再現することのできる、世界に類をみない研究・展示施設です。
◆研究の特徴はどんなところでしょうか
名古屋は日本で随一の産業集積地で、多くの製造業とその担い手が集まっています。この地域の人たちは堅実、実直で地元愛があり、東京・大阪に比べ、自然とうまく折り合いをつけた、昔ながらの文化が残っています。
東日本大震災でも、子どもたちに過去の災害教訓を伝承していた地域では、子どもたちは良く避難しました。減災館は、様々な啓発・教育の場を通して、防災・減災を身近に感じ、地域を再発見し、人間の絆の大切さを再確認し、新しい日本を生み出す意欲を作り出す場だと思っています。
私の研究室では「都市-建築物-地盤の地震時挙動の解明」「地震防災・災害情報・防災教育」「産官学民の地域協働による防災力向上と産業防災の試み」を3つの柱に、研究を進めています。
人類の歴史と災禍の歴史を紐解くと、人類の歴史の転換の背景には、様々な災禍の重なりがあることに気づきます。特に日本は、アジアモンスーン地帯のプレート境界に位置し、地震、火山、台風、豪雨などの災害に見舞われる場所です。
持続可能な社会を作るには、孫子の格言「彼を知り己を知れば百戦殆(あや)うからず」が大切です。そのためには、文系、理系を超えて学際的な見方をすることが必要です。建築や土木は、まさにそういった学問です。
私は、日本の高度成長と共に学生時代を過ごしました。様々な電気製品の登場に加え、東京オリンピックの代々木競技場、霞が関ビルなどの高層ビル、大阪万博の新建築に触発され、新たな時代を象徴する建築に憧れ、建築の道を選択しました。
建築を学び始めると、建築の外見に加え、使用性や居住性、地震などの災害に対する安全性の大切さに気が付きました。そこで、建築構造を学ぶことにしました。建築物を襲う地震の揺れについて学ぶと共に、安全な建築物の在り方について探求し、地震災害から人命や生活を守るための研究を始めました。
今は、来たるべき南海トラフ地震を見事に乗り越え、さらに「災い転じて福と成す」ことを目指してあかるく、たのしく、まえむきに頭(あたま)を使うように心がけています。
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「1.環境・防災」の「1.気象・海洋、地震・津波、火山、防災・復興学」
地震時の地盤や建物の揺れの予測や観測、免震・制振技術の開発、災害情報システム開発、防災・減災戦略や防災教育などに関する研究。
◆主な業種
・建設全般(土木・建築・都市)
・電気・ガス・水道・熱供給業
・交通・運輸・輸送
・マスコミ(放送、新聞、出版、広告)
・コンサルタント・学術系研究所
・大学、短大・高専等(教育機関・研究機関)等
・官庁、自治体、公的法人、国際機関等
◆主な職種
・基礎・応用研究、先行開発
・設計・開発
・製造・施工
・技術系企画・調査、コンサルタント
・大学等研究機関所属の教員・研究者
◆学んだことはどう生きる?
建築物の設計・施行・監理・行政などに生かされている。
アジアモンスーン地帯のプレート境界に位置する日本では、様々な災禍を乗り越えることが社会維持の基本になります。そういった意味で、地震工学や建築耐震工学は、その基本となる学問です。
・自宅の周辺の地形の特徴、地名の由来、地誌に記された地域の災害を学び、わが身の災害危険度について考えてみる。
・周辺の建物の特徴を調べることで、「強・用・美」のバランスの大切さを考え、耐震性のない建物はどんな特徴があるかを考えてみる。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? 建築 |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? ニュージーランド。自然環境が日本に類似している。 |
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Q3.研究以外で楽しいことは? 地域での様々な活動 |