ノーベル賞研究者が提唱した「新国富論」でSDGs達成指標を創出
GDPではSDGsの達成度を測れない
SDGsは、持続可能な社会を作るために17のゴールを設定しています。そして、それを達成するには、具体的な目標を定めて施策を進めなくてはなりません。では、目標の達成度はどうやって測るのでしょうか。
実は、SDGsの達成度は、これまで国の豊かさを表すために使っていたGDP(国内総生産)では測れません。例えば、総生産が増えて経済が発展しても、それとともに自然資源が減ったら持続可能性は低下するからです。
国連持続可能な開発会議で、「新国富指標」公表
そこで、ノーベル賞受賞者ら22名の学者が研究して、新たな豊かさを表す考え方を作りました。それが「新国富論」です。
「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」では、それをもとにした「新国富指標」が公表されました。これは、SDGsの達成度を測る新しいものさし=指標です。私もその指標づくりに関わり、今はその国連報告書の代表を務めています。
インフラや教育の豊かさを数値化
「新国富指標」は、国や都市の豊かさを「人口資本(道路、建物、機械)」、「人的資源(教育、健康)」、「自然資本(土地、漁業、気候、鉱物資源)」の3つを数値化した合計で表します。環境問題の中でも気候変動は世界全体の問題です。しかも私が研究していた石油が要因です。そこで、CO2削減の状況などを調べてみると、産業界はそれなりに頑張っているのに市民側の評価は得られていませんでした。双方が納得できるやり方はないかと、気候変動の技術と経済の分析にも取り組みました。
CO2の排出量削減に関して、製造業の方々は「これ以上減らすのは無理だ」と言うのですが、調べてみると中小企業の工場などでは電気使用量がきちんと工程ごとに管理されておらず、その工程プロセスを改善すれば、さらに電力半減などの効率化を図ることができるとわかりました。また、CO2排出量は減らせなくても廃棄物なら減らせるし、廃棄コストも削減できるということも見えてきました。
経済成長を続けながら地域にも貢献できる方法は、まだまだ考える余地があったのです。
◆先生が心がけていることは?
持続可能性について話すこと
◆テーマとこう出会った
私は工学と経済学を専門にしています。最初に大学では、都市工学・環境工学・土木工学を学びました。現実問題に幅広く対応する分野です。当時、自分の進路を考えて「社会に役立つこと」を仕事にしようと思った時、社会でもっとも解決できていない問題は環境問題だと考えました。下水道と廃棄物を中心に研究をしました。
しかし、技術者が「これが最適な技術だ」と提示しても、実際には予算や政治など、様々な問題が絡みます。優れた技術だけでは、社会は動きません。そこで初めて、社会を動かすためには経済学的な視点が必要なのだと気がつき、留学して経済学に特化した大学院に進み、環境と石油ガス産業の研究を始めたのです。
◆中高生のみなさんへ(メッセージ)
中高はスポーツばかりでしたが、大学以降はずっと本を読んでいました。SDGsのゴールはたくさんあります。まずは、興味を持った分野の本をいろいろと読むことです。そして、同時にほかの分野の本もとりあえず1冊ずつ読んでみてください。自分の関心分野とほかの分野とのつながりを知り、ほかの分野の人と話せる力をつけて欲しいからです。
自分の分野の話を、違う分野の人にきちんと説明できるようにすることは非常に大事です。たとえば、医療をやりたい人が災害のことを少し知っていたら、災害分野の人と緊急医療の話ができるかもしれません。私も経済と工学がわかるおかげで、異分野の人と話をする機会が増えたと感じます。
◆出身高校は?
福岡県立修猷館高校
「土木計画学・交通工学」が 学べる大学・研究者はこちら(※みらいぶっくへ)
その領域カテゴリーはこちら↓
「4.土木・建設・交通」の「13.交通工学・土木環境・景観」
「経済政策」が 学べる大学・研究者はこちら(※みらいぶっくへ)
その領域カテゴリーはこちら↓
「18.社会・法・国際・経済」の「75.経済学、農業経済・開発経済」
◆新たな国連開発目標(SDGs)「新国富」指標で測る豊かさの評価(サイエンスポータル)
◆新国富指標の現実政策への応用可能性―社会・経済政策の指標としての活用の拡大(独立行政法人経済産業研究所)
◆新たな経済指標「新国富」 教育・健康・自然の価値重視(独立行政法人経済産業研究所)
◆自動運転の落とし穴 導入費がいくらなら普及?((独立行政法人経済産業研究所)
◆Twitter:https://twitter.com/shunsukemanagi
社会の問題を広い視点で見ながら、解決すべきシステムを学ぶ学科です。これからは1つの分野に太く特化した人より、薄くても広い知識を持ち、細くてもグッと特化した専門性を持つ人が求められるようになります。環境分野だけに太く特化するより、環境や技術や法律の知識を薄く広く持ちながら、排水処理だけは非常に詳しいといった具合です。広く興味のアンテナを張りつつ、自分のやりたいことを深めていって欲しいと思います。この学科ではこういったことが学べます。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? 今と同じ |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? アフリカ・ザンビア共和国のルサカ |
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Q3.大学時代の部活・サークルは? サッカー |
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Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 和洋食器販売 |