第4回:政治学の分野〜政治理論から、実際の政治の研究まで〜
これまでお話したような、政治にまつわることを学ぶのが政治学ですが、現代の政治学は、男女の間の政治や家庭の政治などプライベートな政治は含めず、公共の意思決定と諸課題の解決に関する分野に限って学び、研究する学問となっています。
政治学の中にもいろいろな分野があり、まず、「良い政治とは何か」という哲学的な問いについて研究する分野を「政治理論」といいます。「政治哲学」、「政治思想」ともいわれる分野です。アリストテレスの時代から、政治学の本流は「政治理論」です。
そして、人類はどんな政治を繰り広げてきたかについて研究するのが「政治史」です。この分野も、政治学の本流です。社会をうまく運営するにはどんな法律を作るべきか、あるいは、その法の背景にどんな考えがあるべきかという「法制度」の研究もあり、これも、政治学の本流です。
また、良い政治を行うためにほかの国の例を見て考えたり、自分の国とほかの国はどう関わるべきかを考えたりするのが、「比較政治」や「国際政治」です。
このほか、どんな政策を立てれば良いかや、どんな政治の仕組みを作ったらよいのかを研究する分野があります。そして、政治の実体はどうなっているのかを研究するのが、私の専門の「政治過程論」という分野です。
政治学は、歴史的に、今お話しした順番で発展してきました。現在の アメリカで「政治過程論」が盛んなのは、アメリカが、第二次世界大戦中、国の予算を戦争に役立つ科学や工学に費やしたことと関係しています。文系の学問としての政治学はあまり戦争の役に立たないため、国の予算をもらえなくなってしまったのです。そこでアメリカの政治学は、政治学が国の役に立つ科学的な学問であることを示すために、データ解析などを始めました。ですから政治学の英語訳はpoliticsではなく、political scienceと言います。
日本の政治学はどうでしょう。アメリカの大学には政治学部がありますが、日本の大学には、政治学部という名称の学部はありません。日本で政治学を勉強する場合、法学部の政治学科で学ぶことになります。早稲田大学であれば、政治と経済を一緒に勉強する政治経済学部で学びます。近年「公共○○学部」という学部が増えていますが、これは、公共の課題を解決しようという機運が高まっているためで、こうした名称の学部や学科でも、政治学を学ぶことができます。
最後に、政治学は何の役に立つ学問でしょう。政治学は、社会全体のルール作りや仕組み作り、デザインをする学問だと言うこともできます。
政治学を学んだことを生かせるキャリアとしては、まず、公務員試験には政治学分野が出題されますので、公務員を目指す人には必須です。また、ジャーナリストなどマスメディアで活躍したい人、政策立案のためのシンクタンクといわれるような企業で研究をする人、国際貢献など国際的な仕事をしたい人、あるいは、現在地域活性化など、地域や市民の諸課題を解決するような仕事で、政治学は生かされます。
皆さんが大学で学ぶ学部学科を選ぶ際、その分野が好きだとか、この科目が得意だといった理由で決めることもあると思いますが、大学卒業後にやりたいことや社会のニーズも考えて、選ぶと良いと思います。
ここまで、政治学全体についてお話してきましたが、次回からは、私の専門である「政治過程論」の研究を通して、日本人の政治意識を見ていきましょう。