植物はすごい 生き残りをかけたしくみと工夫
田中修(中公新書)
植物が生きていくしくみを様々な植物に焦点をあててわかりやすく書かれています。植物は動物と違い動き回らないことから、ただそこに居るだけと気にとめない人もいるかもしれませんが、ところがどっこい、植物の体の中は非常に動的で、生きていくための様々な活動が繰り広げられています。
動物のように食物を摂取するのではなく、自分自身で必要な栄養分を作り出している植物のすごさ、動物が嫌いな物質を作ることにより自分自身を守っている植物のすごさ、生きにくい場所で育つ植物の調節機能のすごさなど、たくさんの植物のすごさについて書かれています。植物の体のしくみを知ることのできる興味深い一冊です。
塩に強く、バイオ燃料にもなる植物・アッケシソウの研究
土壌に塩分が多い土地でも育つ「塩生植物」
降水量が非常に少なく、日差しの強い乾燥地には、塩が溶脱しないために土壌中に塩が多く存在している地域があります。また、地球上には海岸の砂漠化した地帯も存在します。
動物は塩を摂取しなければ生きていけませんが、多くの植物は塩がたくさんある環境では生きていけません。しかし、地球上には塩濃度の高い土壌でも生育できる植物も存在しており、そのような植物を塩生植物といいます。
塩水で栽培に成功した植物、アッケシソウ
塩生植物の一つとしてアッケシソウという植物があり、日本では北海道や瀬戸内沿岸に分布しています。
海外ではアッケシソウに海水を灌漑して大規模に栽培した例もあり、非常に塩に強く、真水で育てるよりも塩を含んだ水の方がよく育つことがわかっています。
油脂を含み新しいエネルギー作物にもなりうる
また、アッケシソウは、(1)植物体内に塩を蓄積する、(2)種子や植物体に油脂を多く含むという特徴を持っています。
塩を多く含む土地は、未開墾であったり、耕作放棄地となっていますが、アッケシソウはこのような土地でも栽培可能なエネルギー作物になり得ると考えられます。
また、塩濃度が高くなった土壌から塩を取り除き、塩濃度の少ない土地に戻すことができる植物としても期待できます。
現在、私は、アッケシソウが成長するために塩を必要とする不思議を明らかにするとともに、塩濃度の高い土地でも栽培可能なエネルギー作物としての利用に関する基礎的な研究を行っています。それは農地面積の拡大や新しいエネルギー作物の増加につながるものと考えています。
多くの作物が育たない塩濃度の高い環境で、バイオ燃料植物として利用できる作物が育てられれば、今まで利益を生み出すことができなかった地域においても、利益が生まれるようになると思われます。
油脂植物はバイオ燃料としての利用が可能であると考えられます。バイオ燃料は原料となる生物が成長過程で光合成により大気中の二酸化炭素を吸収していることから、その生物から作られる燃料を燃焼させても元来大気内に存在した以上の二酸化炭素を発生させることはないと考えられ、太陽光や風力などと同じく、再生可能エネルギーに位置づけられます。
また、トウモロコシなどのバイオ燃料が食糧と競合するのに対して、塩生植物は食糧と競合しないという利点があるのみならず、通常耕作地として用いられない地域でも生育できるため、耕作地も他の作物と競合しないという利点があります。
「塩生植物アッケシソウのバイオ燃料生産能の向上と塩類土壌修復能の評価」
◆研究室に配属された時に
「継続は力なり。根気強く、失敗しても諦めずによく考え、よく観察した者だけが、新しい発見をすることができる。」と話します。
◆先輩からのメッセージ(理工チャレンジ 内閣府男女共同参画局)
◆主な業種
(1) 食品・食料品・飲料品/タバコ・飼料・肥料
(2) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等
(3) 小・中学校、高等学校、専修学校・各種学校等
◆主な職種
(1) 商品企画、マーケティング(調査)
(2) 中学校・高校教員など
◆学んだことはどう生きる?
熱帯魚などを扱う輸入会社で、水草の取り扱いを行っている卒業生がいます。植物の機能を学んだことが生かされていると思います。また、中学校教諭として、理科を教えている卒業生がいますが、科学的論理思考や実験スキルが、中学生に理科の面白さを教える時に生かされていると思います。種苗会社で営業をしている卒業生もおり、植物を栽培した経験や知識が役に立っていると思います。
鳥取大学農学部では、農学の専門知識と技術を身につけ、地域および国際社会に貢献できる幅広い視野と創造性を持つ人材の育成を目指しています。地域産業における諸問題に着目した研究が行われており、なかでもナシ新品種の育成や、きのこ遺伝資源の医薬・食品分野への活用、砂丘地農学等に関する特徴ある研究を強みとしています。また、国際的な諸問題にも取り組んでおり、海外の乾燥地で実習を行うプログラムもあります。