がん細胞のゲノム中の放射線被ばくの痕跡を発掘
ゲノムには君の歴史が刻まれている
ポストゲノム時代に生きる君たちは、ゲノムのことはよく知っていますよね。でも、君たちのゲノムの中に、これまで歩んできた歴史が刻まれている事を知っていましたか。
私が興味を持って行っている研究は、そんな、自分史を振り返る、ゲノム川を上流めざして遡るような研究です。
染色体にも遺伝子進化の痕跡がある
ATGCという4塩基の並びであるDNAは、その中に生命の設計図を書き込んでいるわけですが、進化の過程で突然変異によって書き換えられ続けている遺伝子の塩基配列とは別に、ゲノム全体にも進化の痕跡(シグニチャー)がしっかりと残されています。
授業などで染色体を目にした事があると思いますが、いろいろな動物の染色体は、染色体の断片が、プロックのように異なるパターンで組み上がっており、この組合わせこそが進化の痕跡なのです。
原発事故被曝者の発がんメカニズムを探る
2011年3月11日に起きた東日本大震災にともなう福島第一原子力発電所での事故により、多くの住民が、自然の放射線に加えて事故により追加された放射線が存在する環境で日々の生活を送っています。
健康不安や懸念の軽減には、より正確な科学的知見の提供が大事ですが、長期的な健康影響として懸念される放射線被ばくによる発がんの分子メカニズムは明らかではありません。
もし被ばくによる影響でがんが起こるとすれば、がん細胞の塩基配列とゲノムの中に、放射線被ばくのシグニチャーが必ず残っているはずです。私が行っているのは、まさにその、放射線シグニチャーを掘り起こす研究です。
福島原発事故後の福島では、自然放射線に追加された放射線が存在する現存被ばくの環境で、日々の生活を送っています。健康への不安や懸念を軽減するためには、より正確な科学的知見を提供することが大事です。
この研究は、放射線のヒトの体への影響の理解を一新する可能性のある画期的な研究で、人類が自然放射線の存在下でいかに進化してきたかの、いわば自分史を遡る研究でもあります。
「放射線誘発発がん変異のゲノム・エピゲノムシグニチャーの解明」
丹羽太貫
京都大学 名誉教授
公益財団法人 放射線影響研究所 理事長
【放射線発がんの分子メカニズム】研究だけでなく、ICRP等の世界機関で要職につき、若手研究者の育成にも力を入れています。
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「9.基礎医学・先端医療バイオ」の「33.免疫、細菌等基礎医学(放射線等健康・生態系影響を含む)」
◆講義「基礎放射線医科学」の初回では
DNA二重鎖切断が、細胞核の中に存在するATM(銀行のキャッシュコーナーではない!)という名前の酵素によって見つけられ、そのATMの活性化によって起こるタンパク質のリン酸化が、他のタンパク質を呼び込む契機になり、砂糖にたかる蟻のように、無数のタンパク質が集積する現象があることを説明しています。◆主な業種
(1)病院・医療
(2)大学・短大・高専等、教育機関・研究機関
(3)官庁、自治体、公的法人、国際機関等
◆主な職種
(1)基礎・応用研究、先行開発
(2)大学等研究機関所属の教員・研究者
(3)その他教育機関教員、インストラクター
◆学んだことはどう生きる?
災害・被ばく医療科学共同専攻を修了した学生は、主に、医療施設での放射線関連部署において業務に就いています。その他、大学の関連分野の研究室に職を得た卒業生もいます。さらに、環境省の放射線健康管理関連部署に専門官として配属された卒業生もいます。いずれのケースも、在学時に得た知識や経験を最大限に生かせる進路に進んでいます。
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科の中に設置された災害・被ばく医療科学共同専攻は、長崎大学と福島県立医科大学との共同専攻として立ち上げられた修士課程の大学院です。
ここでは、放射線災害が複合災害として発災した際に必要な緊急被ばく医療や、リスクコミュニケーション、クライシスコミュニケーション、放射線看護や放射線医科学など多彩な領域を、基礎から臨床、あるいはフィールドワークを通じて学ぶことができます。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? 生物学 |
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Q2.一番聴いている音楽アーティストは? ショスタコーヴィチ。お気に入りは『交響曲第5番』です。 |
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Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 某県の酒販株式会社での、お酒の棚卸し作業。 |