アジア大陸から飛んでくる黒い粒子、茶色い粒子を調査
浮遊微粒子が地球を冷やしも温めもする
空気中にはたくさんの小さな液体や固体の粒子「エアロゾル粒子」が浮かんでいます。エアロゾル粒子が太陽光を散乱して、太陽光が地上に到達しにくくなれば地球の大気は冷やされますが、太陽の光を吸収すると大気が暖められることになります。
エアロゾル粒子には、様々な大きさや形、色を持つものがあり、これらの特性によって、地球を暖めたり、冷やしたりする能力が変化します。私の研究課題のタイトルにある「ブラックおよびブラウンカーボン粒子」は、文字どおり黒い粒子と茶色い粒子のことです。
黒いエアロゾル粒子は、人間の産業活動でできる
黒い粒子は目に見えるどの波長の光も吸収するので黒く、茶色い粒子は波長の短い青色の光を吸収し、赤や黄色が残ることで茶色や黄色に見えます。これらの色の付いた粒子は、化石燃料や木材、稲わらを燃やしたり、産業活動などから大気中に放出された気体の有機物が大気中で酸化され粒子化したりすることで生成すると考えられています。
また、これらの粒子は生成した後、その性質が輸送されながら時々刻々と変化していくと考えられます。黒い粒子が輸送途中で透明の成分で覆われると、透明な成分がレンズのように光を集めることで、より多くの光を吸収したり、輸送途中での化学反応により、黄色や茶色の粒子が濃くなったり、逆に薄くなったりする可能性もあります。
なぜ色が変化するのか研究
私は、どうして色が変化するのだろうと不思議で、粒子の色(光学的な特性)の研究を始めました。最近は、産業活動が盛んなアジア大陸から長崎に輸送されてくるエアロゾル粒子の光学特性や化学成分が、大気中での反応の活発度が異なる季節毎にどのように変化するか調べることで、人間活動が地球の気候や環境に及ぼす影響について理解を深めることを目指しています。
地球温暖化の科学的な理解を通じて、有効な対策の実現に寄与できればと考えています。また、小型のPM2.5計測器を用いた、途上国での屋内外の大気汚染の研究にも取り組んでいます。大気汚染による健康被害の実態を明らかにすることで、PM2.5が発生しにくいクリーンなエネルギー利用の促進に貢献することを目指しています。
「アジア大陸起源のブラックおよびブラウンカーボン粒子が下流域の放射収支に及ぼす影響」
茂木信宏
東京大学 理学部 地球惑星環境学科/理学系研究科 地球惑星科学専攻
【ブラックカーボンなどのエアロゾル粒子の研究】新しいエアロゾル計測装置の開発に勢力的に取り組んでいる研究者です。
◆授業では、新型コロナと大気汚染の話題も
授業で学ぶ知識と、報道で目にする事柄や、普段の生活が結びつく話題の提供を心がけています。最近では、新型コロナと大気汚染の関連について取り上げています。新型コロナ対策のための都市封鎖により、中国やインドで大気汚染が一時的に大きく改善されたことや、PM2.5濃度が高い環境下では、新型コロナなどの感染症による死亡率が増加する可能性があることなども取り上げています。◆高校生の関心も高い
長崎県内の高校でのPM2.5に関する実験を交えた出前授業も行っています。特に長崎県西部に位置する離島では、PM2.5の越境輸送に関する関心が高く、積極的に参加してくれます。長崎大学の環境科学部は、40数名と数多くの環境関連分野の研究者が所属する文理融合学部であり、地域や世界の様々な環境問題や、環境に関連する社会の問題について、自然科学・社会科学の両面から学ぶことができます。
長崎は、歴史文化都市であるとともに、国際交流都市でもあります。環境科学部では、海外の大学との交流事業も数多く行っており、地域に根差した活動をしながら、国際的な視野を身につけることができるのが特徴です。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? 1つを選ぶのは難しいです。物理学も化学も情報科学も植物学も学びたいです。 |
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Q2.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 神戸市ジュニアキャンプリーダーというボランティア組織で、キャンプ場の整備や子供向け自然体験活動の運営などをしていました。環境教育に興味を持つきっかけになり、中学・高校(理科)の教員免許も取得しました。この経験が、今の研究・教育につながっていると感じています。 |
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Q3.研究以外で楽しいことは? 長崎は、魚の種類日本一とのことなので、子どもと釣りに出かけています。 |