家族という絆が断たれるとき
芹沢俊介(批評社)
家族とは、本来子どもたちが安心して帰れる場所であり、家族があるからこそ、子どもたちは大人へと精神的にも身体的にも成長していけるのです。しかし今、時代の流れとともに、子どもたちを守り、包み込んでいた家族が、子どもたちを放り出し、無関心となり、傷つける家族すら出てきていることがわかる本です。
そもそも、子どもたちはどのような家庭環境であれば、幸せに成長していけるのでしょうか。そして、そのための家庭環境を作るために、社会はどのような法整備をすれば良いのでしょうか。「私はひとりぼっちだ」「誰も私を見てくれていない」と感じる子どもたちを一人でも減らすために―。それらを探っていくことが、私の研究テーマなのです。
「子どもの貧困」の実態は、どう調査すれば見えるか
飢え死にしている子どもはいない
「子どもの貧困」という言葉を聞いた事がありませんか。日本のみならずヨーロッパ等のかなり経済力のある国々でも今、問題になっています。しかし、日本で周りを見回してみても、路上で飢え死にしている子どもたちはいませんよね。
なぜなら、国ではこれまでに、きちんとした福祉制度を整えてきました。18歳までの子どもたちで、身寄りがない子どもたちは、施設で生活ができるようにしています。また、親自身のせいではなく、仕事がなくなり収入がない家庭には、生活保護といって、生活費を国が支給してあげています。
貧しくて進学できない
けれど最近、「夏休み後に学校に登校してきたら、家でご飯を満足に食べられずに痩せてしまった」「家が貧しいので、勉強ができるのに高校や大学に行かれない」子どもたちがいるというニュースもあり、これらが「子どもの貧困」として問題になっています。
子どもたちは一人で生活をしていません。通常は親とともに暮らしています。そして、国は困った人たちのために福祉制度も整えています。なのに、何故、「子どもの貧困」という事態が起こってしまうのでしょう。それが解明されなければ、子どもたちを救えません。
どのようなレベルが「貧困」なのか
そもそも、ご飯を3食食べられなければ「貧困」なのでしょうか。遊びに行きたいのに遊ぶお金がなければ「貧困」なのでしょうか。「貧困とはどのようなレベルの人を言うのか」と、「実際に何人くらい貧困で困った人がいるのかという調査の方法」を、私たちは研究しています。
人の成長過程では、家族の役割が非常に大きいのです。「子どもたちを立派な社会人へと育て上げるための家族を、社会や法がどのようにサポートできるのか」が私の専門です。そして、今の研究テーマ「子どもの貧困」で最も問題とされているのが、「貧困の世代間連鎖」です(貧しいがゆえに高等教育を受けられず、高等教育を受けられないので低い収入の職にしかつけず、貧困から抜け出せないという問題)。これを解決できれば、たとえ貧しい家庭の子どもたちでも高い教育を受け、子どもたち自身が希望する職業へと就けることになるはずです。
「「子どもの貧困」―その定義と実態調査方法を探る」
◆主な業職種
(1) 小・中学校、高等学校の教員
(2) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等
◆学んだことはどう生きる?
将来、高校教員になる卒業生ですが(執筆時点では大学院生)、私の下で(子どもに直接関係するもの以外にも様々な)法律をしっかりと勉強しました。その時、現在の高校教育においては、法律の内容についてあまり学習がなされていないことに気づきました。高校卒業で就職をする子も多いにも関わらず、日常生活に関わる法律を知らないままに社会人になることは、様々な不利益を被ることにもなります。そこで、高校における法教育のあり方を研究テーマとしました。
教育学部には、学校教員になる学生がたくさんいます。将来の教員として、「子どもたちに関係する法律にはどのようなものがあるのか」、「子どもたちにとっての健やかな成長と家庭との関係」、「昨今の家族の崩壊と家庭へのサポート」等を学び、子どもたちにとって家庭が重要なものと認識した上で、子どもたちにいかなる援助ができるか、家庭へもどのようなサポートができるかを自ら判断し、考えるようになることで、将来の職業に活かしています。