動作の不調を改善して心の不調を改善するユニークな心理療法
肩の力を抜けば、緊張がゆるむ
私は臨床心理学の領域で人のこころと動作との関係について研究をしています。心理学というと、人のこころを扱うイメージなので、なぜ動作?と思うかもしれませんが、人のこころと動作には深いつながりがあります。
例えば、人前で何か発表するとき、大多数の人は緊張しますよね。皆さん、そういった場面で、周りの人から「肩に力が入っているよ。肩の力を抜いて」と言われたことはありませんか。そして実際に肩の力(身体の緊張)をふっと抜いてみると、少しほっとしてこころの緊張もゆるんだという経験はないでしょうか。
緊張はこころの状態として捉えられがちですが、実は私たちの身体にも実際に緊張が入っているのです。こんなふうに私たちのこころと動作は密接につながっていて、私たちのこころのありようは、動作に実際に表現されているのです。
こころの不調は動作に現われる
この点に着目し、人のこころに動作からアプローチしようとする臨床動作法という心理療法があります。臨床動作法では、こころの不調は動作の不調にも現れる、動作の不調を改善することで心の不調も改善すると考える、他に類をみない非常にユニークな心理療法です。
その中で私は、心の状態や特性によって動作にどのような違いが出るかという、人のこころと動作の関連についての基礎研究を、バイオメカニクス(生体力学)を専門とする研究者の先生と一緒に行っています。こういった研究を通じて、心理的な問題を抱える多くの人たちへの支援方法として、動作の活用の可能性を追及していきたいと思っています。
「身体志向の心理療法における身体感覚への気づきと自己制御に関する異分野融合型検証」
大分大学福祉健康科学部には、理学療法コース、社会福祉実践コース、心理学コースの3つがあり、医療、福祉、心理が融合した国立大学には非常に珍しい学部です。まだ創設5年目の非常に新しい学部です。本学部では心理学だけでなく関連する諸領域の授業を受けることができ、また3コース合同でディスカッションするような授業も取り入れており、高い専門性と広い視野を持つ専門職を涵養することを目指しています。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? やはり心理学ですが、臨床心理学ではなく、社会心理学をじっくり学んでみたいです。社会心理学は社会の中での人の行動や心理を広く対象とする学問ですが、今回の新型コロナウイルスの問題を見ていると、危機の場面で人がどういった行動を取るか、デマの拡散など、人の気になる行動・研究テーマがたくさんあります。 |
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Q2.感動した映画は?印象に残っている映画は? 『陽のあたる教室』。作曲家を目指し、生活のために音楽教師になった主人公の教師としての半生をつづった映画です。夢を叶えるようなドラマチックな話ではないのですが、結末で感動して号泣しました。大好きな映画です。 |
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Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? ユニークというわけではありませんが、居酒屋でのアルバイトが印象に残っています。世の中の社会常識を教えてもらいましたし、バイト後にバイト先の先輩によく飲みに連れて行ってもらったのが楽しかったですね。 |
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Q4.会ってみたい有名人は? JAXAで「はやぶさ2」に関わる研究者の皆さんに会ってみたいです。「はやぶさ2」の様々な快挙を特集したテレビ番組で、研究者の皆さんが1つのことを徹底的に突き詰めていく姿を見て、純粋に「すごいな、かっこいいな」と思いました。分野はまったく違いますが、研究者として憧れますね。 |