学校(映画)
山田洋次(監督)
山田洋次監督作品の映画『学校』シリーズをお薦めします。2020年現在から20年以上(30年近い)前の作品なので、最新動向は感じられませんが。この映画シリーズはいずれも『学校』というタイトルでありながら、いわゆる「一般的な学校」が舞台ではありません。Ⅰは夜間中学校、Ⅱは養護学校(特別支援学校)、Ⅲは職業訓練校、Ⅳは不登校の中学生の一人旅が描かれています。
「学校」という言葉からイメージする風景や場面を揺さぶり、覆すような内容となっており、「学校とは」「教育とは」を考えるきっかけになると思います。また、それぞれの(マイノリティの)学校についてよく取材されており、エンターテインメント性もある作品です。
「できない人をできるようにする」が教育の目的なのか
「教育とは何か」が一番大きな問い
教育哲学、教育思想史という学問領域で研究をしています。この学問領域では「教育とは何か」というのが一番大きな問いなのですが、「教育とは○○である」と回答するのは、容易ではありません。
私がこだわっているのは、能力主義と優生思想についてです。教育の目的を仮に「できないことを、できるようにすること」だとすると、教育の場面においては「できる人」は存在価値が高く、「できない人」は存在価値が低くなります。特に受験などの場面では、能力主義が現れやすいかもしれません。
できるようならないと、教育する意味がないのか
けれど、どうしても「できるようにならない人」もいます。教育の価値と目的を「できるようにすること」とすると、こうした人たちは教育を受ける意味がなくなってしまいます。
また、「できるようにすること」だけが目的であれば、教育は、将来的には、技術的な人種改良や医学的処置によって代替される可能性があります。古くから、教育と遺伝については議論され続けていますし、現在でも、脳科学や生命科学の議論の延長で、教育が語られることがあります。
能力主義とは異なる教育の価値を考えたい
そこで、私は「できるようにならない人」との教育関係に着目して、能力主義とは異なる教育の価値について考えたいと思っています。
また、教育における「うまくいかなさ」こそが重要なのではないか、うまくいかないことを求める心性があるのではないか、という(原理的な)仮説を立てて、抽象的な哲学研究と、教育現場における実践研究をつなごうとしています。
SDGsの目標はすべて重要で、研究によっていくつもの項目に貢献できると考えていますが、特に人権や平等については、教育学(教育哲学)研究の知見を活かせると考えています。人間を格付けしない、誰も切り捨てない、効率性や経済合理性だけを追求しない、トップダウンで物事を決めない・・・などなど。
ともすると、競争による格付けと能力主義に同意してしまいそうになるのですが、その手前で立ち止まり、教育とは何のためにあるのか、人間が生きることの意味と価値は何かということを、時間をかけて考える視点が重要だと思います。
「「他者への欲望」という視座からみた特別支援教育実践の分析」
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「21.教育・心理」の「86.教育学、教育行政学、教育社会学」
◆「教育の思想と歴史」という講義の最初では
自分たちが持っている「教育」や「学校」についての「当たり前」は、決して「当たり前」ではないことを伝えます。また、教育哲学研究は「役に立つ」学問ではないが、「役に立つとは何か」について考えることのできる学問であるということも伝えています。◆新たな知の構築に取り組む研究者の挑戦(大阪府立大学大学院人間社会システム科学研究科ホームページ)
◆歴史や思想を学ぶ中にも自分の問いを解決するヒントがあるかもしれない(季刊もりのあと第11号)
◆主な業種
(1) 小・中学校、高等学校、専修学校・各種学校等
(2) 福祉・介護
(3) 金融・保険・証券・ファイナンシャル
◆主な職種
(1) 中学校・高校教員など
(2) 福祉・介護関連業務・関連専門職
(3) 総務
◆学んだことはどう生きる?
卒業生の進路は多岐にわたりますが、専門性を活かすという点では、やはり学校の教員でしょうか。視野を広く、柔らかく持ちながら、教員として活躍している人が多いです。福祉分野(保育士や公務員の福祉職、社会福祉協議会など)に就職する学生も多いです。また、一般企業(金融、人材、ゼネコン、コンサルタント会社など)に就職する学生も多く、それぞれが、大学時代に身につけた「人間を大切にする視点」をもって活躍しています。
いわゆる教員養成系の学部や学科と異なり、多様な興味や関心を持つ学生と教員が集まっています。その根底にあるのは「人間にとって幸せとは何か」という問いです。人間が幸せに生きるために、教育はどうあるべきか、社会福祉の制度はどうあるべきか、どのような支援が可能か、こうしたことをみんなで考えています。学問分野に細分化さていないことが、逆説的に、この学類で教育学研究を行うことの強みになっていると思います。
魂のアイデンティティ 心をめぐるある遍歴
西平直(金子書房)
自分という存在について、自分と社会とのつながりと断絶について、精神世界の魅力と危険性について、学生時代にこれらの(今思うと若者特有の)課題に直面していたときに、何度も読みました。同著者の、本書よりは学術的な内容である『魂のライフサイクル』もおすすめします。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? 大学に進学する、というのとは異なる人生を送ってみたいです。 |
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Q2.感動した映画は?印象に残っている映画は? 森達也監督の『A』と『A2』、原一男監督の『ゆきゆきて、神軍』、マイケル・ムーアの作品など。ドキュメンタリーが好きです。 |
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Q3.熱中したゲームは? 学生時代、デジタルなら、『実況パワフルプロ野球』や『ウイニングイレブン』などのスポーツ系と、『ドラゴンクエスト』、『ファイナルファンタジー』などのRPG。アナログなら、麻雀と将棋はよくやりました。最近はほとんどやっていませんが。 |
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Q4.研究以外で楽しいことは? 浦和レッズを応援すること。最近はスタジアムにはあまり行けませんが、埼玉県浦和市出身なので、地元にチームができた時から応援しています。 |