人々の意見・気持ちを推測するAIをつくる!
知的活動と脳の仕組みの関係は未解明
相手の話が「わかる」、相手に「伝える」って、どういうことでしょう。本当に伝わっているんでしょうか。今この文章を読んで、何を「考えて」いますか。そういった人間の高度な知的活動は言語抜きには困難ですが、その脳内での仕組みはよくわかっていません。自分がどうやって喋り、考えているかもよくわからないのです。仕組みを解明する方法の一つは、自分の考案したモデルをコンピュータで動かすことです。私は言葉を扱う際の人間の記憶の仕組みとその限界に着目して、新しいモデルを作りたいと考えています。
「人狼」の自動プレイ、自動診断支援
言語の仕組みの解明は「科学」(計算言語学)ですが、そこで作ったものは、役に立つ「工学」(自然言語処理)の側面もあります。私の推進する研究プロジェクトは、騙しあいを行う会話ゲーム「人狼」の対話システム(チャットボット)による自動プレイ、会話データによる精神疾患や発達障がいの自動診断、電子カルテの処理、司法試験自動解答と裁判自動化支援、キャッチコピーや特定の個人の振る舞いの再現、など様々なものがありますが、すべて言葉の処理という点でつながっていると考えています。
いずれも実用的であると同時に、以前の技術では困難な挑戦的なテーマでしたが、昨今の大規模言語モデル(生成AI)の急速な進化により実現可能性が見えてきました。こういった課題を知恵と工夫で実現するのは楽しいです。いつかは人間並みに言葉を操り、人間を超えるシステムを実現するのが目標です。
人々の意見・気持ちを推測するAI
SNSではだれのどの書き込みでも大規模な影響を持つ可能性があり、その伝搬過程も個人間のアクションに大きく依存するため、個別の精密な分析と推測の積み上げによってオンラインでの人々の意見や気持ちを推測できると考えています。ここまで紹介してきた様々な研究の成果を統合し、人物属性と精神状態の推測システム、個々人の情報拡散や意見・気持ちの変化を予測するシステムを構築し、政策決定の支援やフェイクニュースの伝搬防止に役立てることを目指しています。
辻井潤一
東京大学 名誉教授
自然言語処理、機械翻訳、構文解析、生医学論文のテキストマイニングなどの研究をされています。修士から博士研究員時代まで、東京大学で十年お世話になった恩師(指導教員)です。研究室というと自分にとってはその時の辻井研なので、研究者として、また研究室運営においても、常にお手本、目標です。研究指導は非常に寛容であると同時に、強力なビッグプロジェクトを複数推進し、半数ほどが海外からのメンバーであるなど、ヒトとモノの両面でとても恵まれた環境を整備されていました。自分の指導する学生たちにも少しでも近い環境を提供できればと努力しています。自分が海外とのコネクションを広げていけるようになったのも、このときの経験があったからこそです。
石田亨
京都大学 名誉教授
人工知能、マルチエージェント、異文化コラボレーション、フィールド情報学などの研究をされています。若手研究者の登竜門的な研究費である、JSTさきがけ研究者時代の領域研究の総括です。当時若手研究者として、研究の進め方についてたくさんのことを学びました。特に他の研究者との共同研究をどう進めるのか、そもそも研究には様々なスタイルがあって、自分がどういうスタイルで何の研究をしていきたいのかも見つめ続けていく必要があり、それを実践され続けているのを拝見して、自分も少しでも実行できればと思うようになりました。このことが、数多くの共同研究で様々な分野とのコラボレーションを推進している今につながっています。
酒井邦嘉
東京大学 教養学部 統合自然科学科/総合文化研究科 広域科学専攻
脳機能解析学・言語脳科学を研究しており、fMRI実験による言語脳機能の解明を目指しておられます。東大の学部時代、最も興味を持った講義の担当教員です。大学一年で講義を受けた時、お話が魅力的で興味深く、人間の知的機能はどのようなメカニズムなのか、こんな学問分野があるのかと衝撃を受け、その後の研究分野を決めていくきっかけになりました。大講義室がいつも満員で、席を確保するのに苦労した記憶があります。
◆学生と話すこと
自然言語を人間並みに操るコンピュータの実現が究極的な目標で、いつの日かそうなれば人間を超えるというある種の冗談として「人類を滅ぼそう」と言っています。人間の知的機能の理解、工学的応用の双方において挑戦的かつインパクトのあるテーマであること、その道のりには多様なステップがあり、きっと一人一人が興味ある研究課題を見つけられるだろうということを一言で伝えられればという気持ちからです。
◆「人工知能は「美魔女」という言葉を生み出せるか 雑誌編集者×AI研究者、異色対談」(ITMedia)
◆「AIコピーライターの衝撃 広告代理店は今後どうなる?」(ITmedia)
◆「自然言語処理による心の病の理解 未病で精神疾患を防ぐ(UNDERPIN)」(科学技術振興機構)
◆「【CEDEC 2017】AIは『人狼』をプレイきるのか!? カオスな人間vs AI戦も展開されたセッションレポ」(INSIDE)
◆「今の人工知能に解ける問題と解けない問題 AIによる東大合格を目指すプロジェクト成果発表会レポート」(PC Watch)

◆主な業種
(1) ソフトウエア、情報システム開発
(2) ネットサービス/アプリ・コンテンツ
(3) コンサルタント・学術系研究所
◆主な職種
(1) 設計・開発
(2) 基礎・応用研究、先行開発
(3) 技術系企画・調査、コンサルタント
◆学んだことはどう生きる?
AIエンジニアとして企業の研究開発部門で研究室の専門分野である自然言語処理を直接扱う業務、その基礎に使われる機械学習に関わる業務が多いと思います。これらの知識と経験がある人材はとても不足しており、研究開発以外にもAIの技術的理解を生かしたSE・企画・営業・コンサルタントといった業務を扱う卒業生も多いです。
静岡大学情報学部は国立大学初の情報学部で、設立当初より「文工融合」を掲げ、25年の歴史があります。情報学関連分野の広さを反映して幅広い分野の教員がおり、3学科あるうち私の所属する行動情報学科では、情報サービスの設計、データサイエンスの活用、経営戦略の策定などにかかわる多様な研究室があります。高校時代の印象は大学入学後の学びで多かれ少なかれ変わりますから、本学部のように入学後の選択肢が広いところはおすすめです。
◆先生からのメッセージ
情報過多の時代で、大学生でも「流れてくる情報を」「面白いネタとして」受動的に消費する一方なことが多いようです。日々のニュースを読んで、知らない言葉があったら自ら検索して調べてみて欲しいです。世界が広がり、自ずと必要な書籍、気になる書籍も出てくるでしょう。
私の研究分野は進歩が速く、時にその見方や評価も人により違います。せっかくウェブ上にいくらでも情報があるので、積極的に検索して読んでみることで「質の高い」「信頼性の高い」情報を見分ける能力を身につけて欲しいです。自分で根拠を持って真偽を判断できることが大事です。もしかしたらこの記事も自動生成された情報かもしれませんよ(ということがどの程度ありうるか、知識がないと根拠を持って判断できませんね)。
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Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? 以前と同じ、物理学。科学の基礎的な考え方、世界の捉え方を学ぶことができます。 |
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Q2.一番聴いている音楽アーティストは? いろいろ聞きますが、楽曲の自動生成をしてみたいですね。ある種の歌詞は案外簡単そうです。 |
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Q3.感動した映画は?印象に残っている映画は? 最近映画を見ないですね。それより映画を自動生成してみたいです。 |
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Q4.熱中したゲームは? 人狼…?ゲームも自動生成してみたいです。 |
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Q5.会ってみたい有名人は? アインシュタイン博士。バーチャルで復元するのは難しそうですね。 |






