船は急に止まれない!衝突回避判断の教育プログラムの開発
航海士から研究者へ
小学生の時に大阪で開催された帆船祭りで船のことが好きになり、当時の神戸商船大学に入学しました。卒業後は外国航路の海運会社に入社して航海士になりました。最初の航海はブラジルのアマゾン川でとてもワクワクしたことを覚えています。
仕事柄、国等が発表する船の衝突事故の報告書をいくつも読みました。そこには原因として、“気づかず”というような言葉が多くありました。原因はそんなこと?本当に?私は、大学で勉強し、新米の頃に船長から叱られながら上手くできるようになったのにと。こんな経験が研究の原点です。
将棋のように先を読む力が必要
実際のところ船の衝突回避というのは簡単ではありません。船は巨大です。全長が300mを超える船もあって、船は世界で最も大きい乗り物なのです。船には自動車のようなブレーキはなく、衝突の数十分前に危険を察知し、判断をした後に回避行動をとります。最悪の場合、船を止めようとすると数kmの距離が必要です。
このような長時間を必要とする行動の意思決定は、スポーツで求められる反射神経とは全く逆で、将棋のような先を読む力が必要になります。そこにはヒューマンファクタ―とよばれる人間の要素がとても複雑に絡みます。
このような背景から、人によって状況の認識がどのように異なるのか、そして衝突回避判断がどのように異なるのかを明らかにし、そこから船長や航海士の衝突回避判断を安全側にシフトさせるための教育プログラムを作ろうとしています。
「船舶衝突回避判断における操船者の状況認識と現場へのフィードバック」
◆「海事人的要因研究室」では
私が外国航路の船に航海士として乗船していた時の話が多いです。また学内にある練習船の船長や航海士も務めていますので、そこでの話が必然的に多くなります。
◆主な業種
(1) 外航海運
(2) 船舶管理
(3) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等
◆主な職種
(1) 航海士
(2) 管理
(3) その他教育機関職員、インストラクター
◆学んだことはどう生きる?
多くの学生が日本の外航海運会社に就職し、世界の海で船を操ることで世界物流の一翼を担っています。海上勤務においては大型船舶の安全運航を行っています。海運会社に入社後はずっと船上で働くわけではなく、陸上勤務というものもあります。最近では陸上勤務の割合の方が多くなっていますが、そこでは、マネージャーとして外国人船員の指導といった仕事もあります。また日本の練習船の教官として、学生を指導している人もいます。
海運は世界的に人類が生活するために、なくてはならないインフラです。その海運に関わる部分のうち、船舶の運航にかかわる工学的な最新技術に関する研究、社会科学的な管理技術に関する研究、それらを取り巻く法律に関する研究と、とても幅の広い研究が行われていることが特色です。学生は船長や航海士といった船舶職員になるための海技免許を取得することができ、卒業生はその知識技術をもとに、船の世界でグローバルに活躍しています。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? 商船学しかないですね。 |
|
Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? イギリス。海運といえばイギリスで、船長や航海士のステータスが高い国です。 |
|
Q3.大学時代の部活・サークルは? 大型のヨットのサークル。中国の上海から大阪までの国際ヨットレースにも出場しました。 |
|
Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 百貨店の配送所でのアルバイト。軽トラックで、朝から晩まで縦横無尽に地域を走っていました。 |
|
Q5.研究以外で楽しいことは? 家庭菜園とバイク。仕事場が海に隣接しているので、家は山の向こう側にあります。家に家庭菜園、移動にバイクという具合ですね。 |