芸術一般

文化財修復

コストをかけずに、過疎化する地域の文化財を救う


永吉秀司先生

新潟大学 教育学部 学校教員養成課程 教科教育コース(現代社会文化研究科 現代文化専攻 情報社会文化分野 メディア文化教育プログラム)

出会いの一冊

大人のなぞなぞ絵本 「日本名画」ミステリー310

榊原悟(講談社)

固定概念で見がちな日本の古典絵画をクイズ形式でユニークに表す構成になっており、日本の文化財の見方を柔らかくするきっかけとなる本だと思います。

こんな研究で世界を変えよう!

コストをかけずに、過疎化する地域の文化財を救う

地方の文化財は消滅の危機

近年、中央都市部では、国宝の展覧会に長蛇の列ができるなど、文化財を楽しむことが一つの教養として認知される機会が多くなりました。しかし、地方の文化財や地域芸術に対してはどうでしょう。

希少価値のある国宝には興味を持つものの、自身が居住する地域に存在している文化財に対する意識は薄く、盗難や倒壊など劣悪な環境にさらされている文化資産は数多く存在します。過疎化が進む地域なら尚更です。

国宝級と同じ保存・修復方法では高コスト

その中には、将来、文化財になる可能性があるものも存在するかもしれません。しかし、いざ保存活動をしようとすると、国宝級のものと同じ保存・修復方法をしようとしてもコストがかかりすぎ、「文化財になるかもしれない」物に支払う対価としては、充分な予算をかけられない現状があります。

そこでこの研究では、未来に文化財となりえる可能性があるものの応急措置として、安価で簡単に手に入る市販の建築建材などを活用し、今後過疎化する地域で失われてゆく文化財の保存・再現方法を開発するものです。

地域にも仕事ができ、人を呼ぶ文化財も生まれる

そうすることで、地域における文化財の暫定的な応急処置方法を可視化することができ、地域に在郷する画家や表具店、建具屋などが、参入しやすい環境が整えられます。

また、その保存方法を活かせば、壁画や建物に負担を軽減して作品を設置することが可能で、過疎化が進む地域において新たなる文化財の創出ができることも期待し、研究に努めています。

新潟にある「白山媛神社」という神社の天井画再現事業を学生と共働で取り組んだ時の制作風景です。
新潟にある「白山媛神社」という神社の天井画再現事業を学生と共働で取り組んだ時の制作風景です。
SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

すべての人々への包摂的かつ公正な質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進するということは、自身が暮らす環境に対しての付加価値を理解することから始まるものもあります。私の研究課題では地域社会における自国の古典文化の醸成を促すことを研究理念としているため、微力ながら貢献できると思います。

包摂的で安全かつ強靱(レジリエント)で持続可能な都市及び人間居住を実現するための手立てとして、廃神社仏閣などを再現して有効利用することは、地域の観光資産を生むことになり、人の動線を確保することが可能となります。そのため、地域活性化や犯罪抑制につながる手立てとして本研究は有効だと考えらます。

◆先生が心がけていることは?

区の自治協議会委員やPTA役員として参加し、包括的な住みよいまちづくりに貢献しています。

先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「ローコスト支持体を活用した弘長寺本殿壁画の再現」

詳しくはこちら

注目の研究者や研究の大学へ行こう!
どこで学べる?
先生の授業では

日本絵画と漫画やサブカルチャーの類似点を表現方法の導入として用い、日本の経済的背景などを加味しながら、日本の描画材料などの変遷について解説しています。

もっと先生の研究・研究室を見てみよう
先輩にはこんな人がいる ~就職

◆主な業種

(1) 小・中学校、高等学校、専修学校・各種学校等

(2) デザイン・著述、翻訳、芸術家等

(3) 金融・保険・証券・ファイナンシャル

◆主な職種

(1) 中学校・高校教員など

(2) 宣伝、広報、IR

(3) 経理・会計・財務、金融・ファイナンス、その他会計・税務・金融系専門職

◆学んだことはどう生きる?

日本画家兼中学校教員教師になった卒業生がいます。ひたむきな探求心で日本画の特性や表現方法をよく理解し、習得する努力を惜しまない学生でした。在学中は陸上部に所属していましたが、絵画研究にも積極的に取り組んでおり、公募展覧会などで複数の受賞を重ねていました。古典研究、教育方法についての研究も熱心に取り組んでいいたため、それらを生かす職業を模索した結果、教師の道を選択したと聞いています。

先生の学部・学科は?

新潟大学教育学部では、総合大学の特性を活かし、日本画表現について、実技、理論、教育などの様々な視点で考える機会があります。私の研究領域では、日本画表現の探求について考察する内容が多いですが、近年、伝統文化に対しての醸成が危ぶまれている状況があり、それぞれの研究機関で教育にかかる重要性が最近は注視される現状があります。

中高生におすすめ

路傍の雫

永吉秀司(幻冬舎)

作家自身により絵画作品の日本画を散文詩、解説文と合わせて綴った内容です。画家という職業の人々が何を思って作品を創造しているかを可視化した内容になっています。


うちのDEアート 15の軌跡 地域アートプロジェクトを通じて見えてきたもの

編:新潟大学教育学部芸術環境講座(新潟日報事業社)

最近、地域振興活動の一環として様々な形で展開しているアートプロジェクト。そんな中、新潟で大学生が中心となって実践したアートプロジェクトがあります。「うちのDEアート」はその15年の活動内容を綴った本です。


路傍の石

山本有三(新潮文庫)

私が学生時代に読み、感銘を受けた小説です。時代背景などややわかりにくい部分もありますが、主人公が様々な困難を克服していく姿が、過去の時代背景とは思えず、人の生き方の指針を示されたように感じました。悩み多き年頃には、一度読んで見ても良いかもしれません。


先生に一問一答
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?

今と同じ研究領域、「日本画」。

Q2.一番聴いている音楽アーティストは?

 Official髭男dism。特に、『ビンテージ』がお気に入りです。

Q3.感動した映画は?印象に残っている映画は?

『ビルマの竪琴』、『戦場のメリークリスマス』

Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは?

 佃煮屋・似顔絵描き

Q5.研究以外で楽しいことは?

郷土玩具・日本の昔話伝承・『鬼滅の刃』


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