空き家リノベーションで、寂れた街を再生しよう
なぜまちづくりはうまくいかないのか
いま、日本の多くの都市では街の真ん中が寂れています。駅を降りると、駅前の広場には看板だらけの似たような風景が広がり、広場から伸びる通りの商店街はシャッターが下りたままです。
きちんとした都市計画を立て、莫大な金額を投入して開発したにもかかわらず、このような街ができあがってしまったのです。なぜでしょうか。
工学的な考え方の限界
私はその原因のひとつに、都市計画にひそむ工学的な思考があると考えています。ここでいう工学的思考とは、「商業施設+広場=賑わいのある空間」のように、正しい機能やデザインを「入力」すれば、望ましい都市空間が「出力」されるという法則的な考え方です。
しかし、現実の都市はもっと複雑です。例えば、どこにいくつ公園を造れば最適な都市になるといった設計者や管理者の視点だけでなく、それぞれの公園を誰がどのように利用し、日々どんな関係が生まれるのかという、利用者や生活者の視点も必要です。
一人ひとりの行動から考える都市再生
そこで、人文科学的な思考の出番です。最近では、空き家のリノベーションが街のあちこちで生まれ、中心市街地の価値を高めている事例が増えてきました。このように小さな空間の使い方が周辺に連鎖していく動きに、私は日本の都市再生の可能性を感じています。
彼らが場所をどう使い、そこでどんな関係を築き、それが街全体にどう波及しているのか。そうしたメカニズムを人文科学の立場から考えるのが,私の研究テーマです。
中心市街地の再生は、短期的に見れば、都市の成長や都市住民の利便性に対してマイナスに作用する場合が多いものです。しかし、都市の持続可能性という評価軸で見れば、必要不可欠な取り組みであり、そのためにリノベーションを軸としたボトムアップ型の再生手法は有効なアプローチであると考えています。
◆先生が心がけていることは?
地方都市に住んでいるが、移動はできるだけ公共交通か自転車を使っている。
「リノベーションによる中心市街地再生プロセスの研究」
地域を理解するのが高校までの「地理」、地域を理解するための知識を生み出すのが大学の「地理学」です。信州大学経法学部武者ゼミでは「信州まちなみスタディーズ」と称して、生み出した知識を書籍やブックレットにまとめています。
◆主な業種
(1) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等
(2) 金融・保険・証券・ファイナンシャル
など
◆主な職種
(1) 事業推進・企画、経営企画
(2) 経理・会計・財務、金融・ファイナンス、その他会計・税務・金融系専門職
など
◆学んだことはどう生きる?
高齢化が進む中山間地域で、大工として活躍している卒業生がいます。人文地理学を学んでなぜ大工なのかと思うかもしれませんが、その地域の風土や生活に適した建築を作るためには、建築技術もさることながら、地理学的な知識やセンスを活かすことができます。さらに、働くだけでなく、地域で暮らしていくためには、フィールドワークで培った地域社会に対する洞察力が活かされています。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? 学部時代に挫折した数学にもう一度挑戦したい。 |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? イタリアやフランスの地方都市。歩いて暮らせる都市の規模と、景観の美しさ。 |
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Q3.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 不動産仲介の窓口業務。間取り図を眺めるのが好きでした。 |