「経世済民」の「済」って?中世日本語の漢字の研究
「済」は「すむ」「すます」だが
![](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/none/path/s76df89a20f09707f/image/i0339586d29b5d64e/version/1614763322/image.jpg)
皆さんは漢字「済」の意味を知っていますか。
「済」は「一般の社会生活において、現代の国語を書き表す場合の漢字使用の目安を示す」ための「改定常用漢字表」の「音訓表」では、「すむ」「すます」の和訓を持っているので、熟語「決済」「返済」の意味はよくわかります。
では、「経世済民(けいせいさいみん)」はどうでしょうか。「済む」の意味では理解できないですね。その意味は、「世を経(おさ)め、民を済(すく)う」で、「済」は「すくう」とも読め、もともとは「救」と一部で同じ意味を持っているのです。「救済」という熟語を思い出せば納得できるでしょう。
熟語として意味を固定
日本語は中国語から大量の漢語を取り入れました。そして次第に、個々の漢字に代表的な和訓が定着し、他は廃れてゆきますが、様々な熟語が多様な意味で使われてもいました。
「多士済々(たしせいせい)」といえば、「済」の意味はわからないけれど、熟語の意味として「優れた人材が多ということだろう」と理解できます。日本語は、個々の漢字の意味を和訓によって理解して、それを組み合わせて熟語の意味を理解するのではなく、熟語として直接、意味を理解するようになったのです。
イエズス会が出版した漢字辞書から
では、その漢字と和訓の対応とは、どのようなものだったのか。どのようにして現在に至るのか。私はそのことを、16世紀末から17世紀初頭の日本でキリスト教の宣教を行ったイエズス会が出版した漢字辞書『落葉集』から解明しようとしています。彼らは外国人として、日本語を学習して正しく使用するために強い向学心を持っていましたが、そこには、中世日本語の日本人の漢字使用の実態が浮かび上がってくるでしょう。
「山水之隣 風雨相済」
最近、私の勤める大学に、コロナウイルス対策でマスクが不足していることを知った中国の企業から、「山水之隣 風雨相済」という言葉とともにマスクが送られてきました。この言葉は私たちを励ますものですが、日本人には難しいかもしれません。
しかし、皆さんはここで一つ勉強をしましたから、もう理解できるでしょう。様々なことばを正しく理解することは、その人の知識と世界を広げてくれます。英語などの外国語の習得だけではなく、日本人がふだん使っている漢字の知識を深めることでもそれは可能だと、私は考えています。
![](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/none/path/s76df89a20f09707f/image/i9b4aa0827741cd21/version/1614536091/image.jpg)
「中世末期から近世初期の常用的漢字と常用的和訓についての横断的研究」
![](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/none/path/s76df89a20f09707f/image/i018241a264311299/version/1614535247/image.jpg)
![image](https://miraibook.jp/client/images/sekai/learn-icon.png)
![](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=570x10000:format=jpg/path/s76df89a20f09707f/image/id7cc1773f29f7363/version/1614535299/image.jpg)
![](https://image.jimcdn.com/app/cms/image/transf/dimension=570x10000:format=jpg/path/s76df89a20f09707f/image/i148d11afaae81247/version/1614755659/image.jpg)