明治維新を儒教思想で捉えなおしてみる
明治維新とともに大減税を断行した殿様
小学生の頃、漫画の『カムイ伝』を読んで、その世界観に魅了されました。白土三平が描く江戸時代には、たいてい重税に苦しむ農民たちと百姓一揆が登場するのですが、そんな江戸時代がどのようにして終わったのかという素朴な疑問が、子ども心に残っていたのでしょう。
大学で卒業論文を書く頃には、すでに白土が描いていたような、「武士たちの圧政」という江戸時代像からはサヨナラしていたのですけれど、明治維新に際して、熊本藩が大規模減税をした史料を読み、興味を惹かれました。
それが、殿様がこれまでの重税を農民に謝罪して、本税の3分の1にものぼる雑税を全廃してしまったという史料でしたから、驚きでした。いったい明治維新をやった人たちは何を考えていたのかということを知りたくなったわけです。
熊本藩の「王政復古」は儒教の理想政治の実現
調べていくと、明治維新には儒教を信奉して、その理想の政治を実現したいと考える人たちが少なからず関与していました。熊本藩で改革を進めた人たちは、「王政復古」とは古代の天皇と同様に(と彼らは信じていました)、儒教が理想とする政治を実現することだと考えていました。
他方で、彼らは率先して文明開化政策を進めていったのです。実は幕末維新の政治過程にも、社会の変革にも、儒教の影響が見られます。そればかりで説明することはもちろんできませんが、幕末維新の変革を儒教の理念や、それを担った人々の考え方をたどって明らかにしてみたい。そんな研究をやっています。
歴史の研究は、未来に向けて提言をするよりも、未来を考える前提となる経験値を現在および未来の人々に与えるものと言えます。例えば、持続可能な経済成長という点では、人口増加がほぼ横ばいとなっていた江戸時代後期の社会を参照することが有益でしょうし、急激な人口増加で大量の移民を送出せざるを得なかった近代日本社会の姿を知ることも必要でしょう。いずれも長所と弊害があり、それらに学ぶことが、今後の政策を考える上でも有益と思います。
「幕末維新政治史と儒教―熊本実学党の研究―」
◆理系向けの講義「歴史学」で伝えること
理系の学生にも講義をしています。ある農村の風景を見せ、この村は戦時中に中国東北部へ移民を送り出し、その人々は敗戦で集団自決したこと、しかし役場が公文書を捨ててしまったため、歴史を検証することはできないことを話すことで、文書の破棄が歴史の抹消につながることを伝えています。
◆主な業種
(1) 官庁、自治体、公的法人、国際機関等
(2) ホテル・宿泊・旅行・観光
(3) 学習支援(塾、フィットネスクラブ、各種教室、通信講座等)
◆主な職種
(1) 一般・営業事務
(2) 保安(警察・消防・警備等)等
(3) その他教育機関教員、インストラクター
◆学んだことはどう生きる?
卒業生には専門性を活かした研究者や教員、学芸員もいますが、多くは一般職として働いています。
人文学部は人文系の専門教育により、一つの専門を深く修めます。例えば教育学部や経済学部等でも歴史の先生はいますが、歴史学の研究室で複数の歴史の教員に学ぼうとするならば、人文学部が適しているでしょう。山口大学人文学部では歴史学コースに考古学・西洋史・東洋史・日本史があり、日本史は古代・中世・近世・近現代のそれぞれに教員がいますので、歴史学を学ぶには良い環境だと思います。