ヨーロッパ史・アメリカ史

東ドイツ

政治的弾圧の厳しかった東ドイツが、40年存続できた理由を探る


河合信晴先生

広島大学 総合科学部 総合科学科(人間社会科学研究科 人文社会科学専攻 人間総合科学プログラム)

出会いの一冊

グッバイ、レーニン!(映画)

ヴォルフガング・ベッカー(監督)

コメディーで東ドイツが崩壊していく様子を描いています。研究的にはいろいろと問題を指摘できますが、東ドイツ社会がどのようなものだったのか、そしてそれがつぶれるとはどういうことなのかが理解できるかと思います。特に当時の社会が一変する様子は、私たちが経験することが稀なので、それを知る上でも良い作品です。

こんな研究で世界を変えよう!

政治的弾圧の厳しかった東ドイツが、40年存続できた理由を探る

30年前になくなった国、東ドイツ

私が研究しているのは、30年前になくなった国での人びとの暮らしぶりについてです。その国は東ドイツといいます。高校生であれば「ベルリンの壁」が崩れて冷戦が終わったという話を、授業で聞いたことがあるかと思います。

なくなってしまった国は失敗した国で何もいいところがなかったので、研究する必要もないと考える人が多いことから、あまり皆さんは聞くことがないかとも思います。知っていても政治的に自由がなく、何か政府のやっていることに反対すると秘密警察がいて、逮捕されるというイメージがあるぐらいでしょうか。

「普通の人びと」の考えや行動に、解を求めて

果たして、そのなくなってしまった東ドイツはそんなひどいことをしてなんで、40年間も存続できたのでしょうか。また、ではなぜ1989年という時期に国が破綻したのでしょうか。

この答えを探るには、政治家やお役人、知識人や評論家、反体制運動の人たちのような意識が高い人たちのことを知るだけでは理解できないことが多いのです。「普通の人びと」が何を考え、どのように行動していたのか、自分たちと同じ立場の人びとがどうだったのか、それがわかると疑問に答えることに近づくと考えています。そのため、当時身近にあった社会問題を、歴史学的に調べています。

また、東ドイツを知ることは、私たち自身がどう社会や政治の現実に向き合っていくのか、そのヒントをくれることになると思っています。調べてみると案外、東ドイツと同じ、だめなものが見えてきます。

留学時代、毎日利用していたロストック大学歴史学研究所 付属の「東ドイツ研究図書室」の写真。 今は閉鎖して博物館にするために工事中ですが、昔は秘密警察「シュタージ」の牢獄だったところです。
留学時代、毎日利用していたロストック大学歴史学研究所 付属の「東ドイツ研究図書室」の写真。 今は閉鎖して博物館にするために工事中ですが、昔は秘密警察「シュタージ」の牢獄だったところです。
SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

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東ドイツを知ることは、国内の経済的な不平等や不公正をなくした社会がなぜ実現できなかったのかを知る手がかりを与えてくれます。東ドイツの失敗とは違うことをすれば良いのですが、それが何なのかを考えることも、研究によってできると思っています。

先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「東ドイツ・ロストック市の住宅事情から見る「公共空間」」

詳しくはこちら

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先生の学部・学科は?

本学部は総合科学という名にあるように、特定の学問分野について深く教授することよりも、むしろ学際的な研究と見方ができるようになる人間を育てることを目標にしています。私の研究がそうであるように、歴史学だけでなく、様々な人文社会科学さらには自然科学にまで目配りができることで、新しい見方を提示することで社会に貢献する人間を輩出していきたいと考えています。

中高生におすすめ

ファシズムの教室 なぜ集団は暴走するのか

田野大輔(大月書店)

どうして人間は集団になるとまずい行動を取るのか、それがよくわかります。


反貧困 「すべり台社会」からの脱出

湯浅誠(岩波新書)

貧困や社会的な公正、そして人間がどうやってつながるのかを考える、私の研究関心の出発点です。


MASTER KEATON

漫画:浦沢直樹、脚本:勝鹿北星(ビッグコミックススペシャル)

東ドイツもふくめ、1989年から約15年間の世界情勢についても触れられているので、現代史を知る上では役に立つと思います。


先生に一問一答
Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

ドイツの旧東側。長年暮らしましたが、暮らしの中から研究に役立つものもあるので。


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