遺伝情報と世帯調査から、過去数十万年の人口変動をAIで推定
「人とは何か」につながる学問
私たち人類はどこで生まれてどこに向かっているのでしょうか。そもそも人間というのはどのような存在なのでしょうか。このような「人とは何か」という大きなテーマについて、答えを求めようとする学問があります。
これまでの人間の足跡を辿ることは、「人とは何か」という問いを考える時に重要な方法論の一つになります。「人はどこで生まれたのか」「人はどのように世界の隅々まで移動したのか」などの問いに対して、文献や遺跡から推測してきました。
「人口」から人間の歴史を辿る
ただ、人類の歴史の中でそのような痕跡を残しているのは最近のごくわずかな期間しかありません。そこで、人の遺伝情報を分析することで、数十万年前からのことについて多くのことがわかってきました。
私の研究は「人口」という切り口でこの数十万年の人間の歴史を辿りたいと考えています。人の数はあらゆる社会活動において重要な要素ですし、生態学の分野では「環境に適応している」ことの指標として用いられます。これを遺伝情報と、海外のフィールド調査で調べた世帯調査データからAIの技術を用いて推定しようというのが、本研究の目的です。
「結婚制度」も組み込み精度をアップ
いくつかのバリエーションはありますが、世界中のほとんどで「結婚」を行うという社会的な取り決め(「文化」と言います)があります。結婚という制度の結果、本来人間が持っている子どもを産む能力が制限されています。そういった社会のルールなどを組み込むことで人口推定の精度を上げていこうと考えています。
これまでの人口の変遷や、人間社会の変遷を知ることで「人とは何か」を知る手がかりになります。現在の人類全体で問題となっている資源(富)の偏在や社会全体の不平等(ジェンダーなども含む)の多くは、「多くの人がそう考えている」ことに基づくものが多いです。したがって、それら課題の克服には教育が必要と思われ、本研究による成果は教育を与える教材として重要であると考えています。
「パプアニューギニア低地住民の遺伝人口データベース構築とAI技術活用による人口推定」
梅崎昌裕
東京大学 医学部 健康総合学科/医学系研究科 国際保健学専攻
様々な海外調査地で調査(フィールドワーク)を行い、それらから現地の人たちの生活様式や考え方を導き出しています。フィールドワークにより情報を得る手段が巧みで、得られたデータから新たな知見を見つける発想が鋭いです。
竹内昌平
長崎県立大学 看護栄養学部 栄養健康学科/人間健康科学研究科 栄養科学専攻
数理モデルを駆使し、感染症の伝播についてコンピュータシミュレーションを行っています。数理モデルの解釈とコンピュータへの実装が巧みで、独自の発想に基づく新たな要素の追加による影響の観察などを行っています。
◆公衆衛生学の講義「国際保健」では
「アメリカ合衆国におけるアフリカ系アメリカ人が全体に占める割合は」「サダム・フセインの苗字と名前はそれぞれどれか」などと問いかけ、世界には私たちの「常識」では測れないこと、先入観による思い込みが多いことを伝えています。
◆主な業種
(1)病院・医療
(2)福祉・介護
(3)小・中学校、高等学校、専修学校・各種学校等
◆主な職種
(1)看護・助産・保健等業務
(2)福祉・介護関連業務・関連専門職
(3)小学校教員
◆学んだことはどう生きる?
人口は、数やライフイベント(出生、死亡、結婚など)がはっきりしていることから、コンピュータ上で扱いやすい分野です。したがって、方法論としてコンピュータを用い、統計処理を行うため、就職後コンピュータスキルを生かした役割を与えられることが多いようです。
現在の主たる所属は看護学群であり、看護師・保健師あるいは養護教諭といった資格取得を目的としています。先に挙げた資格はすべて対人サービスを行うものであり、効果的なサービス提供にはこちらの考えを押し付けるだけでなく、相手を知り、自己を相対化することで効果的かつ満足度の高いサービスを提供できます。本研究の最終的な目標である「人とは何か」を知ることは、この自己を相対化する際に役に立つ考え方だと思います。
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ? コンピュータサイエンス |
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Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? どこででも暮らしてみたい。そこに住んでいる人たちの生活が見たいから。 |
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Q3.一番聴いている音楽アーティストは? Baby Metal。特に、『PAPAYA!』。 |
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Q4.熱中したゲームは? 『ドラゴンクエスト』シリーズ |