環境影響評価

野生動物汚染

野生動物に危機!化学物質による脳の異変を明らかにする


野見山桂先生

愛媛大学 理学部 理学科 化学コース(理工学研究科 環境機能科学専攻)

出会いの一冊

地球をめぐる不都合な物質 拡散する化学物質がもたらすもの

日本環境化学会(講談社ブルーバックス)

第一線の環境化学の専門家たちが、様々な視点から「地球規模の化学物質汚染」についての深刻な状況を報告しています。環境汚染の実態を知ることができます。若い人にも比較的読みやすいです。

こんな研究で世界を変えよう!

野生動物に危機!化学物質による脳の異変を明らかにする

化学物質が増加し、その実態把握は難しい

我々は日々の活動に伴い様々な化学物質で地球環境を汚染してきました。その影響を最も強く受けているのは野生の動物たちです。

近年では化学物質の使用数はさらに増加し、汚染の種類や影響も多岐に渡っています。したがって、化学物質による汚染の実態や影響を理解することは、どんどん難しくなっているとも言えるでしょう。

化学物質が下水から海や川へ流れ、水中に残留

さて、私がテーマに掲げる“イオン性環境汚染物質”とはそもそも何なのでしょうか。私の研究では、主に下水排水より水環境中に放出される人為的化学物質を指しています。

我々の生活を支える医薬品や農薬などの化学物質は、排水を介して、日々下水処理場より河川や海洋中へ放出されています。放出された化学物質の多くは水中でイオン化した状態で存在しています。

動物の繁殖行動にも影響

このようなイオン性の水環境汚染物質は、これまで野生生物への残留・蓄積性は低いと考えられてきました。しかしながら、一部の化学物質は生物の体内である種のタンパク質と結合し、選択的に残留することがわかってきました。

その中には脳へ移行して生物の繁殖行動や忌避行動等を変化させる化学物質も存在しています。しかしながら、これらがどのように脳へ移行しどのような悪影響を及ぼすかはほとんどわかっていません。

脳内分布の変化を画像化

この研究では、複数の分析化学の先端手法を組み合わせ、イオン性環境汚染物質の脳移行に伴う神経伝達物質への影響を解明する新たな手法の開発に挑戦しています。

特に、化学物質汚染に伴う脳内分布の変化をグラフィカルに描写する方法の開発に取り組んでいます。

“百聞は一見に如かず”とは言いますが、目で直接野生生物の異変を見ることができれば、その怖さを直感的に理解できると思います。この研究が実を結べば、環境汚染物質の脳移行性と影響を予測する技術にも応用できると考えており、斬新かつチャレンジ性のあるアイディアの創生も期待しています。

NASAとの共同研究によるアメリカアリゲーターのサンプリング風景
NASAとの共同研究によるアメリカアリゲーターのサンプリング風景
シンポジウム発表様子
シンポジウム発表様子
先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「イオン性環境汚染物質がもたらす神経伝達物質への影響の理解と評価法の開発」

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どこで学べる?
先生の研究室では
◆研究室に配属された時に
身の回りの環境問題に興味を持つこと。これまでに内分泌攪乱物質とも呼ばれる有害物質による汚染が地球規模で拡がり、イルカやクジラ、アホウドリ、イエネコ等の皆がよく知る動物の汚染レベルが異常に高いこと、またこの種の動物の解毒機能はきわめて弱いため化学物質のリスクが最も懸念されること等は、配属された学生に最初に学んでもらいます。

『Bioindicator of POPs』(京都大学学術出版会)という洋書を、学生には最初に読ませています。

もっと先生の研究・研究室を見てみよう
指導学生による分析処理風景
指導学生による分析処理風景
実験でつかう分析機器(LC-MS/MS)
実験でつかう分析機器(LC-MS/MS)
先輩にはこんな人がいる ~就職

◆主な業種

(1)薬剤・医薬品

(2)化学・化粧品・繊維/化学工業製品・衣料・石油製品(プラントは除く)

(3)大学・短大・高専等、教育機関・研究機関

◆主な職種

(1)基礎・応用研究、先行開発

(2)技術系企画・調査、コンサルタント

(3)大学等研究機関所属の教員・研究者

◆学んだことはどう生きる?

研究室で学んだ環境分析化学の知識を活かし、当研究室の卒業生の多くが研究者として活躍しています。特に大学の教員や研究者、各地域の環境や衛生関係の研究所、あるいは民間は環境のコンサルティングモニタリング、分析を請け負う会社、製薬関係等に就職する者が多いです。

先生の学部・学科は?

愛媛大学は、環境化学と呼ばれる学問の発祥の地とされています。その中で沿岸環境科学研究センターでは、人間活動によって環境中に放出された有害な化学物質について、野生生物・環境・生態系汚染の実態解明、広域分布の特徴と環境動態解析などの研究に取り組んでいます。

また、愛媛大学独自の研究施設として世界中から注目されている、生物環境試料バンク(es-BANK)に保存された冷凍保存試料を有効に活用し、環境汚染の過去復元と将来予測、生物濃縮機構と体内動態解析、リスク評価などの研究をグローバルな視点で展開しています。

先生に一問一答
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?

医学部

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

オーストラリア。自然写真撮影をライフワークとしているため大自然に近いところが良い。

Q3.一番聴いている音楽アーティストは?

ONE OK ROCK。特に『Stand Out Fit In』。

Q4.大学時代の部活・サークルは?

ダイビング部

Q5.研究以外で楽しいことは?

野生生物・自然環境写真撮影


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