子ども学(子ども環境学)

外国人労働者

移民政策なき日本で、外国人労働者の家族をどう支援するか


和田上貴昭先生

日本女子大学 家政学部 児童学科(家政学研究科 児童学専攻)

出会いの一冊

ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー

ブレイディみかこ(新潮社)

日本人の母を持つ子どものイギリスでの体験を通して、人種や宗教、考え方などの他者との違いについて、知り、考える機会になると思います。基本的に自分と人は異なります。それを尊重するためにはどうしたら良いか、何がそれを阻んでいるか考えてみましょう。

こんな研究で世界を変えよう!

移民政策なき日本で、外国人労働者の家族をどう支援するか

労働人口が減少、海外からの労働者受け入れ

海外から日本に来て働く方々が最近増えてきましたが、これまで日本では海外の人が日本で働くのを好ましいと考えていませんでした。治安面での心配や、日本の文化が守れなくなるのではないかという不安などにより、海外からの労働力に抵抗を感じる人が多かったからです。

しかし少子化により日本の労働人口が減り、人手不足が生じたことで、日本政府は海外からの労働者を受け入れざるを得なくなりました。

ただし先ほどの「抵抗感」から、彼らが日本に定住しないようにするための仕組みをとっています。「移民政策なき外国人労働者政策」と言う人もいますが、的確な表現だと思います。

ドイツのような移民支援プログラムが日本にはない

外国出身で、日本で生活している(外国にルーツのある)方々からは、言葉や文化・生活習慣等の違いから戸惑うことが多いが、支援が十分でないため身近な人とのつながりにおいて解決するしかないとのお話をよく聞きます。特に子育てをされている方たちは苦労しているようです。

ドイツ、スウェーデンなどにおいては、移民を対象に言葉と文化を教えるプログラムを提供し、生活の安定を図っていますが、日本において公的な支援は限られています。

生活環境を整えるサポートは国の責任だ

皆さんは彼らに対して支援が必要だと考えますか。それとも自己責任だと考えますか。

私は、日本で働く以上、生活環境を整えることは国の責任だと考えます。そのため、私は彼らや支援する側の人に話を聞いて、その方策について考えています。

ゼミ生を数人連れてカンボジアのシェムリアップにある児童養護施設と小学校を訪問。子ども達と施設での集合写真。
ゼミ生を数人連れてカンボジアのシェムリアップにある児童養護施設と小学校を訪問。子ども達と施設での集合写真。
SDGsに貢献! 〜2030年の地球のために

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その人のルーツや信条などによって不遇な思いをしている人がいるとしたら、それは社会にとって不幸なことです。社会サービスにおいて皆に同じものを提供するのは平等でしょうか。

私は必要なものを必要としている人に提供して、皆と同じ生活を送れる状況にすることが平等にすることだと考えます。それを当たり前と感じられる社会はきっと強く、持続性の高い社会だと思います。そうしたことのきっかけになればと考えています。

先生の専門テーマ<科研費のテーマ>を覗いてみると

「保育所を利用する外国にルーツをもつ親への支援プログラムの開発」

詳しくはこちら

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どこで学べる?
先生の授業では
◆ゼミや講義「社会的養護」で話すこと

若い頃、児童養護施設で働いていました。その時の子どもたちや保護者との出会いで感じ、考えたことを話題にすることがあります。共に生きることの大切さを伝えたいと考えています。

もっと先生の研究・研究室を見てみよう
「社会的養護2」(保育士必修、演習科目)での授業風景。
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先輩にはこんな人がいる ~就職

◆主な職種

(1) 幼稚園教員、保育士等

(2) 福祉・介護関連業務・関連専門職

◆学んだことはどう生きる?

児童養護施設や障害児の施設、保育所、幼稚園などで働いている卒業生が特徴的でしょうか。様々な境遇にある子どもたちに日々寄り添う仕事です。保育士、幼稚園教諭の養成をしていますので、子どもたちの発達や家庭環境、養育の方法、支援のスキルなど、大学で学んだ内容がフルに発揮できる職場だと考えています。ただ、大学で教えられる内容は限られます。現場で子どもや保護者と向き合うことによって専門性を高めていきます。

先生の学部・学科は?

児童学科は、子どもや子どもを取り巻く状況を対象にした研究領域の先生たちが集まっている学科です。私は社会福祉学が専門なので、困難を抱える子育て家庭への支援について研究しています。他にも心理学、医学、保育学、教育学、文学など様々な学問領域の先生がおり、それぞれの視点から子どもや子どもを取り巻く環境を捉え、研究を行っています。学生たちは幅広い見地に立って「子ども」を捉えるための学びに取り組みます。

中高生におすすめ

自閉症の僕が跳びはねる理由 会話のできない中学生がつづる内なる心

東田直樹(エスコアール)

自閉症の著者が自身の認識や行動、周りの人たちの反応などについて書いたエッセイ。自閉症ではない人たちからは奇異に感じられる自閉症特有の言動には、すべて意味があることがわかります。自閉症の人たちが体験している世界について触れることを通して、自分自身の世界観について見つめ直す機会になると思います。


モモ

ミヒャエル・エンデ、訳:大島かおり(岩波少年文庫)

「時間どろぼう」が奪った時間を取り戻す女の子の物語。小学校高学年対象なので読んだことがある人もいるかもしれませんが、主人公のモモの人の話を聞く場面(相談に行った人は自ら答えを出すことができます)や時間のとらえ方(何が無駄なのか)など、高校生になってから読むと小学生の時とは異なる発見ができると思います。


先生に一問一答
Q1.18歳に戻って大学に入るなら何を学ぶ?

心理学。改めて基礎から学び直したいです。

Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? 

ドイツです。日がな一日、いろいろな種類のビールを飲んで過ごしていたい。

Q3.感動した映画は?印象に残っている映画は?

『2001年宇宙の旅』

Q4.研究以外で楽しいことは?

子育て。子どもの発達や言動にはいつもわくわくします。


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