サステナビリティ基準がわかる
阪智香、水口剛(日経文庫)
2025年3月に初めてのサステナビリティ開示基準が発表されました。これは、気候変動問題などが深刻になる中で、企業に新しい行動を求めるものです。たとえば温暖化が進むと災害やコスト増といったリスクが生まれますが、一方で再生可能エネルギーや省エネの分野には新しいビジネスのチャンスも広がります。
サステナビリティ開示基準は、このようなコストや機会を把握し、企業戦略に取り込み、企業に持続可能なビジネスモデルへの変革を求めるものです。この基準は一部の大企業だけでなく、バリューチェーン全体に関わるため、幅広い企業に影響します。
企業にとって大切なのは、単なる基準対応ではなく、「自分たちは社会にどんな価値を提供し、どのように持続可能な経済社会の構築に貢献できるか」という問いに向き合うことです。この本では、サステナビリティ基準の背景や意味をわかりやすく説明し、未来の社会をより良くするためにどのように活かせるかを考えるのに役立ちます。
世界の企業活動を会計ビッグデータで解析・可視化する
企業活動の実態を明らかにしたい
私がこの研究を始めたきっかけは、「世界中の企業の会計データを集め、偏りのない解析をして、企業活動の実態を明らかにしたい」と思ったことでした。従来の会計学の研究では、PCで扱える範囲の限られた企業データしか用いられず、その結果にバイアス(偏り)が生じる可能性がありました。例えば「日本企業はアメリカ企業より利益率が低い」といっても、それが一部の企業を比較した結果なら正しいとは限りません。
だからこそ私は「全体を見たい」と考え、大規模な解析に挑戦することにしました。しかし、そのためにはPCでは不可能なほどの膨大なデータを処理する力が必要でした。そこで共同研究者と、2017年からスーパーコンピュータを使った研究を開始しました。
約10万社のデータを分析 日本企業の利益率は高水準
世界150か国・約10万社・過去30年間の全上場企業のデータを分析した結果、日本企業の利益率は、従来「低い」と見なされがちでしたが、決して低くはなく、実際には(中央値で)アメリカ企業を上回っており、他の主要国と比べても、日本企業の利益率は高水準にあることが明らかになりました。さらに、日本企業の株主への配当は主要国の中でも高く、株主還元の面で優等生といえることがわかりました。
また、国ごとの付加価値(企業が生み出した富)の分配状況を見てみると、ドイツやフランスでは従業員への分配が高い水準を維持していましたが、アメリカでは2010年頃から従業員への分配が大きく減少しました。新興国では、そもそも従業員への分配が少なく、中東の企業はさらに低いことも見えてきました。これでは、経済成長をしても中間層が育ちません。
環境問題に取り組む企業は株価が高い
さらに、企業の「環境・社会・ガバナンス(ESG)」活動と株価との関係を可視化しました。その結果、ESGに熱心な企業は株価が高いことが確認できました。この結果は、企業のサステナブルな行動を後押しできると思います。また、私たちが消費者や就活生という立場で企業を選ぶときにも、環境問題に取り組む企業を応援することで、経済社会をサステナブルな方向に向けていく手助けができると思います。
会計ビッグデータを可視化することは、専門家だけでなく一般の人々にもわかりやすい形で企業の実態を明らかにする力があります。私は、この研究がビジネスや社会を持続可能な方向に導く一助になればと願っています。
私が大学1年生のときに受けた、平松一夫先生の簿記の授業はとてもおもしろく、それがきっかけで会計の道に進みました。平松先生は「会計ビッグバン」と呼ばれる大きな変革の時代に、世界や日本の会計のルールづくりにかかわり、会計の発展や人材育成に力を注がれました。世界中を飛び回り、時代を見通す先見の明や柔軟な発想、人を引きつける力を持って、研究や教育、制度づくりをリードされたのです。どんなに難しい状況でも前向きに楽しんで取り組む、おおらかで開放的な先生でした。
最初は研究者になるつもりはありませんでしたが、先生との出会いで人生が大きく変わりました。高校生のみなさんにも、大学で心を動かす出会いがあることを願っています。
「企業価値報告とサステナビリティ報告の統合的フレームワークの構築」
◆主な業種
(1) 金融・保険・証券・ファイナンシャル
(2) 商社・卸・輸入
(3) 法律・会計・司法書士・特許等事務所等
◆主な職種
(1) 経理・会計・財務、金融・ファイナンス、その他会計・税務・金融系専門職
(2) 一般・営業事務
(3) 営業、営業企画、事業統括
◆学んだことはどう生きる?
・製造業での財務など
・金融業での総合職
・公認会計士や税理士などのプロフェッショナル
企業にとってお金の流れは、人間にとっての血液と同じです。止まってしまえば企業は動けなくなります。お金の流れを理解できると、どうすれば利益や企業の価値を高められるかを意思決定できるようになります。会計の知識やスキルは、どんな業界や仕事でも必要とされる力です。商学部のゼミでは、会計を学んだうえで実際に企業とコラボしながら実践する機会があります。そこで身につけた力は、特定の職業に限らず、社会に出ていくすべての学生に役立ちます。
関西学院大学商学部では、経営・会計・マーケティング・ファイナンス・ビジネス情報・国際ビジネスの幅広い分野を学ぶことができ、専門力と総合力の両方が身につきます。ゼミナールでの少人数教育に力を入れており、また、公認会計士や税理士などのプロフェッショナルから実務の最先端をPBL形式で学ぶ授業も豊富です。これらから、社会で役立つ知識と自分で考え行動する力を身につけることができます。
海外研修プログラムも充実しており、海外の大学生と一緒にビジネスを学び、海外で企業の課題解決に貢献することを通して、多様な価値観とリーダーシップを育むことができるのも大きな魅力です。
関西学院大学商学部で、みなさんをお待ちしています!
1. 身近なお金の流れを会計的に見てみよう
・部活動や文化祭模擬店の収入と支出を簡単な損益計算書にまとめてみて、「どこにお金を使っているか」「収支を改善するにはどうしたらよいか」を分析して考えてみよう。
2. 企業の会計情報を読み解いてみよう
好きな企業(例:ユニクロのファーストリテイリング、任天堂)の決算資料を見て、「売上と利益の関係」を簡単に調べてみよう。海外企業(例:アップル)と日本企業とを比較するのもおもしろいよ。
3. 自分ごとで考えてみよう
・アルバイト収入と支出を記録し、「自分のミニ損益計算書」をつくってみよう。
・将来の夢の仕事について「その業界の会社はどんな収益構造か」「どんな財産を保有しているか」を損益計算書や貸借対照表から調べてみよう。
高校生の段階では正確な会計を理解することよりも、数字から何が読み取れるかを意識するのが大切です。
| Q1.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? オーストラリア。以前、首都キャンベラとメルボルンで過ごしたことがあります。家族を大切にする文化や多様性、そして雄大な自然のスケールに魅力を感じました。 |
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| Q2.感動した/印象に残っている映画は? ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ(Once Upon a Time in America):壮大な人間ドラマに引き込まれました。 |
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| Q3.大学時代の部活・サークルは? 会計研究会:大所帯の組織の中で、多彩で魅力あふれる先輩・同輩・後輩に恵まれました。 |
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| Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 塾講師:教えることの楽しさと、その奥深さを知りました。 |
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| Q5.好きな言葉は? 尊敬する人がいる場所が楽園 |

