会計学

ESG評価

企業が環境・社会課題にきちんと取り組んでいるかを評価する


中尾悠利子先生

関西大学 総合情報学部(総合情報学研究科)

出会いの一冊

サステナビリティ基準がわかる

阪智香、水口剛(日経文庫)

サステナブルファイナンスという言葉が示すように、お金の流れ自体が環境や社会への配慮を基準に動き始めています。企業の価値は、単に利益を上げることだけでなく、どれだけ持続可能な社会に貢献しているかで判断される時代になりました。この評価の基準となるのがサステナビリティ開示です。

サステナビリティ開示基準は、単なる企業の報告ルールではありません。これは皆さんの世代が直面する気候変動や社会課題を解決するための重要な仕組みであり、同時に新たなビジネスチャンスを生み出す源泉でもあります。この知識を今から身につけることで、社会の観点から企業を評価する学びにつながります。

こんな研究で世界を変えよう!

企業が環境・社会課題にきちんと取り組んでいるかを評価する

ESG投資とは

みなさんは「ESG投資」という言葉を聞いたことがありますか。

これは、気候変動対策などの環境問題(Environment)、人権問題などの社会課題(Social)、そして会社の仕組みを整えること(Governance)に積極的に取り組む企業を、投資を通じて応援する仕組みです。一見、とても素晴らしいことのように思えますよね。

投資家はESG評価を判断材料に

では、投資家はどのようにして「どの企業がESGに熱心か」を知るのでしょうか。そこで登場するのがESG評価です。これは、専門の評価機関が企業の取り組みを分析し、「Aランク」や「80点」のようにスコア付けした、いわば企業のESGに関する「成績表」のようなものです。多くの投資家は、この評価を重要な判断材料として投資先を選んでいます。

しかし、私たちはこの成績表に素朴な疑問を持ちました。現在のESG評価は、企業が「気候変動対策の方針を作りました」と『宣言』することばかりを評価していて、「実際にCO2をどれだけ削減できたか」という『結果』をあまり重視していないのではないか、と。

実際に活動したか測る「ものさし」

そこで私たちは、共同研究者の須貝フィリップ教授(同志社大学)が開発したバリューモデルという、企業の環境・社会課題の活動を実質的な価値で測る「ものさし」を使い、既存のESG評価の手法を分析しました。

その結果、社会的に重要な環境・社会課題のうち、既存の評価がカバーできていたのは約半分。しかも、その多くが「方針があるか」を問うだけで、肝心な『結果』を測るものではなかったのです。

この研究は、良いフリを見抜き、環境・社会課題に対し実質的な価値を提供している企業が評価される未来を創るための第一歩です。

執筆した書籍『AIによるESG評価 ―モデル構築と情報開示分析―』。膨大なESG情報をAIで収集するだけでなく、その特徴を分析して理解を深め、多様な投資家ニーズを反映したESG評価モデルの推定など、様々な場面での革新的な展開を検討しています。
執筆した書籍『AIによるESG評価 ―モデル構築と情報開示分析―』。膨大なESG情報をAIで収集するだけでなく、その特徴を分析して理解を深め、多様な投資家ニーズを反映したESG評価モデルの推定など、様々な場面での革新的な展開を検討しています。
テーマや研究分野に出会ったきっかけ

大学では会計学のゼミに所属していました。環境問題や社会問題を会計学の視点から解決できるのではないかという問題意識から、卒業論文で「持続可能な社会のための環境会計」をテーマに選びました。

研究を進める中で、企業が環境保全や社会貢献のために投じるコストと、それを適切に評価する市場メカニズムの重要性を実感しました。卒業論文で環境会計に取り組んだことがこの分野での研究を志すきっかけとなりました。

先生の研究報告(論文など)を見てみよう

「バリューモデルに基づく目標志向型サステナビリティ情報開示と評価に関する総合的研究」

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先生の学部・学科は?

総合情報学部は「情報」と「社会課題解決」を架橋する教育・研究を重視しています。他大学の情報系学部が主にプログラミングやシステム開発に重点を置くのに対し、本学部では情報技術を実社会の課題解決に結びつける力を養うことを目的としています。そのため、AIやデータサイエンスの技術を私の専門分野であるサステナビリティの分野に応用できます。

先生の研究に挑戦しよう!

中高生におすすめ

PURPOSE+PROFIT パーパス+利益のマネジメント

ジョージ・セラフェイム(ダイヤモンド社)

社会課題の解決とビジネスの成功は、決して別々の道ではありません。むしろ、両者を統合することで、持続可能な価値創造が可能になります。私がこの書籍を推薦する理由は、社会課題への関心を実践的なビジネスアプローチに変換する具体的な方法論を提示しているからです。

従来、「ビジネスは世界を良くしているか」や「パーパスと利益は両立するか」といった問いは、理想論や企業の社会的責任という文脈で語られることが多く、個人のキャリアや日常の意思決定とは切り離されて考えられがちでした。しかし本書は、これらの問いを実務に応用可能な戦略へと転換させています。個人的な社会課題への関心を、ビジネスを通して解決したいと考えている方にお薦めの書籍です。


9割の社会問題はビジネスで解決できる

田口一成(PHP研究所)

貧困、環境問題、差別など、さまざまな社会課題が存在しています。この本で紹介されるボーダレスグループは、これらの問題を「ビジネス」という手法で解決することに特化したユニークな企業です。

創業者である田口一成社長(著者)が2007年に立ち上げたこの会社は、世界15カ国で40もの事業を展開し、約1500名の従業員を抱える規模にまで成長しています。ビジネスの力で社会課題を解決できることを著者自身の体験から教えてくれるお薦めの書籍です。

一問一答

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