細菌が海洋の物質循環を担う! 海を支える細菌群の真の姿に迫る
小さいがゆえに無視されがちな「細菌」
海洋における物質循環の理解は、人類の持続的かつ豊かな生活基盤を支えるうえで不可欠です。もし過剰な富栄養化によってこの循環が乱れてしまうと、かつて高度経済成長期に顕在化した「死の海」と同様の深刻な生態系崩壊を招きかねません。
そのため、海洋の物質循環に関する研究が進められてきましたが、目に見えない生物「細菌」は、その研究において当初無視されてきました。あまりにも小さかったこともあり、せいぜいただの限定的な「分解者」として捉えられてきたのです。理科教育においても、その役割は依然として簡略化されて描かれている場合が多いでしょう。
細菌が地球の気候変動を左右する?
ところが、分子生物学的解析技術の進展により、膨大な数で存在することが明らかとなり、細菌は単なる分解者にとどまらず、地球の気候変動をも左右する海洋の物質循環を決定づける中核的存在であると認識されるようになりました。
私は、この「見えない存在」が担う役割に関心を寄せ、とくに海洋環境中で高い活性を示す細菌群の多様性と機能に焦点を当てた研究を展開しています。これらの細菌群は、物質循環を駆動し、そのダイナミズムを維持する中心的な担い手であると捉えられるからです。
近畿大学では、魚類養殖をしています。奄美大島のクロマグロ養殖場では、きれいな海を象徴するサンゴ群集と共存する景観が広がっています。この共存を支える微生物を介した物質の流れを解明し、これからも海の豊かさを守りつつ、豊かな安心・安全な魚を食卓に届けるべく、研究を日々進めています。
大学4年の研究室配属まで、細菌には一切興味がありませんでした。紆余曲折を経て、運命的に恩師に巡り合いました。海洋細菌を初めて顕微鏡でのぞかせてもらった時、ミクロの宇宙ともいえる美しい世界に強い衝撃を受け、ハマってしまいました。実は志望した大学にも進学できていなかったのですが、今ではそれがとても幸運でした。自分が知らないだけでとても面白い世界があって、一所懸命、目の前のことを全力で楽しむと「なるようになる」ものだと思いました。
「養殖環境の有機物分解を支配する細菌群の真の動態:マイクロスケールアプローチ」
◆主な業種
(1) 食品・食料品・飲料品
(2) コンサルタント・学術系研究所
(3) 商社・卸・輸入
◆主な職種
(1) 製造・施工
(2) 技術系企画・調査、コンサルタント
(3) 営業、営業企画、事業統括
何と言っても、最先端の商業規模の魚類養殖施設を有していることがユニークであり、かつ他大学にない強みと言えます。和歌山県を中心に、富山から鹿児島・奄美大島に実験場があり、幅広い魚種・海水環境をいつでも研究フィールドにできます。卵から出荷サイズまでの魚類で、関連する微生物(例えば、腸内細菌など)を経時的に追跡することもできます。海上調査はもちろんのこと、充実した設備も活用して多角的に実践的に研究できるこの環境は、本学特有のものといえます。
スプーン一杯の海水(約1 mL)には細菌が約100万細胞います。これを海洋全体で考えたらどれくらいの数になるでしょうか。以下の条件で計算して、数珠上につなげて長さに換算してみてください。その数値を人間の場合(例えば、かなり過大評価した身長2 m!?、人口82億で計算)と比較すると、無視してはいけない存在ということがよくわかると思います。
1. 細菌数:10万細胞/mL(桁を一つ落としました)
2. 細菌細胞サイズ:1 µm
3. 地球1周:40,000 km(きれいな球体とする)
4. 海の表面積:地球表面積の70%
5. 海の平均水深:3,800 m
世界をやりなおしても生命は生まれるか?
長沼 毅(朝日出版社)
「生命とは何か?」この根源的な問いに、長沼毅先生が多角的な視点から迫る一冊です。本書は、高校生との対話をもとに書かれており、宇宙・地球・微生物・進化といった多様なテーマを、ユーモアを交えながら掘り下げています。長沼先生の幅広い知識と、どんな話題も「生命」という軸でつなげる語り口に、思わず引き込まれます。
この本は「自分のものの見方」を広げてくれる一冊になると思います。一つのテーマに対して、こんなにも多様な考え方があるのか、と驚くことと思います。自分とは違う視点に出会うことで、世界の見え方が少し変わるはずです。長沼毅先生には他にも多くの著書があるので、そちらもぜひ読んでください。
異戦国志シリーズ
仲路さとる(学研プラス)
このシリーズは、そんな“ありえたかもしれない歴史”を多角的に描いた作品です。登場する武将たちの視点が並行して進み、それぞれの思惑が交錯していく展開は、歴史を“想像する”楽しさに満ちています。実際に起きたことは一つでも、歴史の背景には無数の可能性があり、そこに想像を働かせることは一種の思考実験です。限られた事実から全体像を推測する。この姿勢は、科学の探究と驚くほど似ていると個人的に思っています。科学は想像力や発想力が欠かせませんが、それは歴史を考えることにも通じているのではと個人的には考えています。このシリーズは、歴史の面白さを味わいながら「考える力」を育てる読書としてもおすすめです。
このリーズに限らず、多くの歴史書に触れることで、自分なりの視点を広げてみてください。(ちなみに高校生当時の私は、読み始めたら勉強が手につかなくなってしまいました。読むときは計画的に!)

