へんなものみっけ!
早良朋(ビッグコミックス)
博物館を舞台にした漫画『へんなものみっけ!』は、身近な自然やモノの中にある魅力を発見していく物語です。私の研究分野である「分子系統地理学」も、まさに見慣れた生きものの中から、隠れた多様性や歴史を見つけ出す学問です。たとえば、日本列島の広域に分布するゲンジボタルやタガメでも、DNAを調べると地域ごとに異なる特徴があり、絶滅の危機にある貴重な集団が見つかることもあります。
『へんなものみっけ!』に登場する標本や昆虫、化石たちは、私たちが見落としがちな「自然のものがたり」を教えてくれます。この作品を通して、研究の面白さや奥深さを、ぜひ感じていただけたらと思います。
水生昆虫から大型動物まで、DNAを読み解き進化や生態を探る
DNAから生物の歴史を紐解く
私は主に、分子系統地理という分野に関わる研究を行っています。これは、生きもののDNAを調べることで、ある種や種内の地域集団が「いつ、どこで、どのように分かれてきたのか」といった進化の歴史や、地理的な広がりを明らかにする学問です。
研究対象は、コオイムシ、タガメ、ゲンゴロウ類、ゲンジボタルなどの水生昆虫が中心ですが、近年はオオサンショウウオやニホンジカといった大型の動物にも対象を広げています。具体的には、たとえば五島列島に生息するゲンジボタルについて、発光パターンが他地域と異なり、遺伝的にも独自性が高いことを明らかにしました。また、タガメでは九州で新たな自然集団を発見し、この集団も高い遺伝的独自性を持つことがわかってきています。
さらに私は、進化生態学的な視点からの研究にも取り組んでおり、オスが卵を背負って育てるコオイムシにおいて、背負っている卵の約35%が他のオスの仔であることを、DNAによる親子判定で明らかにしました。現在は、同様にオスが卵を守るタガメやオオサンショウウオにおいても、親子判定の研究を進めているところです。
絶滅危惧種の保全にも重要な研究
これらの研究は、自然のしくみを理解するだけでなく、絶滅の危機にある生物を保全するうえでも重要です。遺伝子の情報から、地域ごとの系統や生態の違い・重要性を見極めることで、より効果的な保全方針を立てることができます。
小さな昆虫から大きな動物まで、それぞれがたどってきた “ものがたり” をDNAから読み解き、自然の過去と未来をつなぐこと。それが、私の研究のテーマです。
私は、幼い頃から昆虫に親しんできました。なぜかというと、私の父が昆虫の研究者だったからです。そんな環境で育っていた影響もあって、小学校6年生のときにはニシキイシノミという珍しい昆虫をテーマに自由研究を行いました。実はこのニシキイシノミという種は、最初に発見されてから私が再発見するまで、72年間も見つかっていない種でした。さらに再発見された集団が単為生殖をしている可能性も小学生のときに明らかにしました。
その後、中高生の頃はサッカーに熱中しましたが、幼い頃に博物館で見たかっこいいタガメの生体展示がきっかけで、大学の卒業研究ではタガメの仲間であるコオイムシを対象に本格的な昆虫研究を始めました。ちなみに、小学生のときに取り組んだニシキイシノミの研究は大学教員になった現在でも継続中です。
「父親が単独で仔育てを行う特殊な亜社会性システムの進化・維持機構の解明」
◆ 鈴木智也先生HP
◆学んだことはどう生きる?
私の研究室では、「自分で考え、課題を見つけ、解決する力」を育てることを大切にしています。研究は一筋縄ではいかず、失敗や困難に直面することも少なくありませんが、そこであきらめずに粘り強く取り組む姿勢が重要です。フィールド調査や研究室での実験を通して得られるのは、専門知識だけではなく、自ら問いを立て、試行錯誤しながら答えを導く力です。
こうした力は、研究の場にとどまらず、社会のさまざまな分野でも役立ちます。データを根拠に考え、他者と協力して課題に向き合う経験は、どの仕事にも通じる大切な土台となるでしょう。自然や生きものへのまなざしを通して、「考える力」と「伝える力」を養うことができます。
| Q1.18才に戻ってもう一度大学に入るならば、学ぶ学問は? やはり生物学分野を選ぶと思います。いまの研究がとても面白いので。 |
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| Q2.日本以外の国で暮らすとしたらどこ? イギリスですね。プレミアリーグを観戦したいです。 |
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| Q3.大学時代の部活・サークルは? 地元の社会人サッカーチームに所属していました。 |
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| Q4.大学時代のアルバイトでユニークだったものは? 小学生サッカーチームのコーチをしていました。 |
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| Q5.研究以外で、今一番楽しいこと、興味を持ってしていることは? 写真撮影は昔から好きで、登山などもしています。家族で出かけたり、家でゆっくり過ごすのも楽しいです。 |

